【アウディ A3スポーツバック 新型試乗】アウディA3はVWゴルフの高級版なのか?…中村孝仁

アウディ A3スポーツバック 1stエディション
アウディ A3スポーツバック 1stエディション全 24 枚

アウディ『A3』はVW『ゴルフ』の高級版でしょ?という質問に対する答えは「まあそうだ」となるのだが、それほど単純で簡単ではない。

プレミアムを名乗るだけの資格はある

今回のA3とゴルフはベーシックなグレードには1リットル3気筒ターボと48Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたエンジンが搭載され、トランスミッションも呼び名こそ異なるが、ともにツインクラッチのDCTを装備する。アウディの場合、ゴルフと違ってクワトロに搭載されるエンジンはいきなり2リットルになる。ゴルフの方は上級モデルが1.5リットルで、このあたりの差別化はあるのだが、ではその1リットル搭載車が内容的に同じかというと、実はそうでもない。

まず違うのはタイヤ。アウディの場合1リットル車でも225/45R17サイズが装着される。(試乗車はさらにワンサイズ大きな225/40R18のブリジストン・トゥランザ、それもポーランド製を履いていた)一方のゴルフは205/55R16だ。サスペンションはどちらもマクファーソンストラット/トレーリングアームとされている。まあ、トレーリングアームといっても実際はトーションビームと呼ぶ方がわかり易い。

アウディ A3スポーツバック 1stエディションアウディ A3スポーツバック 1stエディション
しかし、フロントサスペンションを見ると実は両車には違いがあって、ゴルフの場合鉄製ナックルアームが使われているのに対し、アウディはアルミ製が奢られている。当然ながらバネ下に対する負荷は異なってくる。まあ、細かいところといえばそうかもしれないが、こうした作り分けはやはり高級なモデルらしい仕上げである。それにゴルフではボンネットを開いた時の支持棒が手動であったのに対し、アウディはちゃんとダンパー付としているし、ボンネット裏の塗装も抜かりはない。

インテリアの仕上げ具合も随所でゴルフは無塗装のハードプラスチックが顔を出しているのにアウディの方はきっちりとそのあたりは覆い隠している…といった具合でやはりアウディにはプレミアムを名乗るだけの資格はありそうだ。

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3気筒恐るべし

気が付いた仕様の違いはこんなところだが、実際に走ってみてその違いが鮮明であるかと言われたら、それは横並びで比べたわけではないので甚だ難しいのであるが、タイヤの違いは相当に大きかったと感じ、細く小さかったゴルフの乗り心地の方が快適だったように思う。ただそうは言っても特にクルマに鞭打った走りをしなくても、アウディの重厚感は伝わってくるし、ライントレース性ではアウディに分があったように思えた。

48Vのマイルドハイブリッドを採用した最大の利点は、DCTのけり出しの雑なところがすっかり消えていることだろう。ISGのおかげで発進は至ってスマートで、そこからのギアの繋がりも文句なし。これでDCTの欠点はほぼ無くなったといって良いと思う。

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それにしてもたかが1リットル3気筒といって、これまでだったら死語になっている大衆車レベルのエンジンが、最近では妙に活躍している気がするし、この3気筒、実に出来が良い。とにかく全域で安っぽさを感じさせない回転フィールだったり、音だったりを持ちあわせている。普通にドライブしていると、果たしてそれが3気筒なのかあるいは4気筒なのかという判別はできないし、そもそもそんなことはどうでもよくなるほどの出来の良さ。

やはりこのあたりは軽自動車に使われている660ccの3気筒エンジンとは雲泥の差だし、日本メーカーが小型モデルに使っている3気筒エンジンと比較しても、そのスムーズさや音質の良さは際立っている。これに乗ると「3気筒恐るべし…」と思う。

合点の行く差別化だ

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正直言って、室内の調度はゴルフと比較して格段にアウディが上。ドライブトレーンに差が無いとはいえ、細かい作り込みでアルミ素材を使うなどした細やかな差別化はプレミアムブランドのアウディとしてはまあ当たり前なのだろうが、合点の行く差別化だと感じた。とりわけ今回試乗した「1stエディション」の場合、ほぼフル装備状態なので価格的には納得できる。ゴルフにあれこれオプションを載せていくとその価格差は意外と小さく、なおのこと合点がいくのである。

アウディ A3スポーツバック 1stエディションアウディ A3スポーツバック 1stエディション

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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