【池原照雄の単眼複眼】トヨタ、バッテリー技術の奥深さ…ニッケル水素にバイポーラ型を新開発、アクア新型に搭載

トヨタ、バイポーラ型ニッケル水素電池
トヨタ、バイポーラ型ニッケル水素電池全 4 枚

出力2倍に高め新型アクアに世界初搭載

トヨタ自動車は7月19日に全面改良して発売したハイブリッド(HEV)専用車の『アクア』に、高出力化が可能な「バイポーラ型ニッケル水素電池」を駆動用車載バッテリーとして世界で初めて実用化した。

【画像全4枚】

豊田自動織機と共同開発したもので、今後の強固な電動化戦略の展開にもつながる技術蓄積を示す格好となっている。バイポーラは「双極」という意味で、今回の場合は、バッテリー内の電気の通り道である「集電体」という部材の片面に正極、もう一方の面に負極を塗り付けている。一枚の集電体が双極状態になっているわけだ。従来型は正極と負極をそれぞれの集電体に塗り付け、両極の間をセパレーターで仕切っている。

セパレーターはバイポーラ型にも必要だが、集電体などの使用量を削減できるので、セルと呼ぶバッテリー単体の容積はコンパクトになる。バッテリー全体の容積はほぼ同じながら、旧型アクアで120枚だったセルは、バイポーラ型となった新型では1.4倍の168枚を搭載することができた。

さらにバッテリー内の抵抗の低減などにより、1セル当たりの出力は約1.5倍に高めている。この結果、全体の出力は従来バッテリーより約2.1倍(1.4×1.5=2.1)に増強できたという。実際の出力値は公表していないが、パワーアップをアクセル操作への応答性の向上や、モーターのみによる走行範囲の拡大(最高速40km/hまで)につなげている。

豊田自動織機と計540件の特許

この結果、燃費性能も旧型より2割程度向上し、バイポーラ型ニッル水素電池を搭載した最もいいグレードで34.6km/リットル(WLTCモード)と、世界の市販HEVでも最高レベルとなっている。

トヨタのバッテリーは1997年発売の初代『プリウス』から採用されてきたニッケル水素電池が主流だったが、近年ではHEVの多くのモデルでもリチウムイオン電池への置き換えや併用が進んでいる。ただ、今回のバイポーラ型の開発により、トヨタの電動車全体でニッケル水素電池の用途が増大する可能性が広がった。

バイポーラ型は、電動フォークリフト用の電池開発などで素材や解析などのノウハウを蓄積している豊田自動織機と共同で開発し、豊田織機の共和工場(愛知県大府市)で生産を始めている。トヨタによると、このバイポーラ型の特許は6月末現在で、出願中も含めて約540件に及び、うち豊田織機単独が約340件、トヨタ単独が約70件などとなっている。

バイポーラはリチウムイオン電池にも応用できる

バイポーラ型の展開についてトヨタ広報部は、「具体化したものではなく、一般的なアイデア」と断ったうえで、バイポーラ技術を電気自動車(EV)の主力バッテリーであるリチウムイオン電池に応用することや、バイポーラ型ニッケル水素電池をEVにも採用するといった可能性を指摘する。

リチウムイオン電池もニッケル水素電池も基本構造は同じなので、「バイポーラ型リチウムイオン電池」の可能性もあるというわけだ。実現すれば、今回のニッケル水素電池同様、コンパクトで車両の設計自由度も高まるリチウムイオン電池ができるのだろう。

また、バイポーラ型ニッケル水素電池をEVに展開できれば、将来のリチウム資源の枯渇対策など、持続性あるバッテリー戦略にもつながっていく。今回の新型電池は、HEV技術を中核にいち早く電動化に取り組んできたトヨタの引き出しの多彩さを示しており、自由度の高い電動化をサポートするテクノロジーのひとつとなる。

《池原照雄》

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