[カーオーディオユニットの選び方]パワーアンプ…クラス

AB級パワーアンプの一例(シンフォニ/クワトロリゴ・デシデリオ)。
AB級パワーアンプの一例(シンフォニ/クワトロリゴ・デシデリオ)。全 3 枚

製品選びも、カーオーディオという趣味においての楽しみどころの1つだ。当連載では、そこのところを一層楽しんでいただくための情報を多角的に発進している。現在は「外部パワーアンプ」をテーマにお届けしている。今回は、「クラス」について説明していく。

「外部パワーアンプ」は、「駆動方式」がそれぞれ異なる!?

「外部パワーアンプ」選びをする際にはまず、「ch数違い」に着目すべきだと前回の記事の中で説明した。さて、その次にはどこに着目すると良いのだろうか。

いろいろな着眼点があるが、今回は「クラス」について考えてみる。ところで「クラス」と聞くと、優劣を表す「等級」のことかと思うかもしれないが、「外部パワーアンプ」においての「クラス」とは、グレードを表すものではなく、「動作方式」の違いを表すものである。

「外部パワーアンプ」は、音楽信号をスピーカーを駆動できるレベルにまで増幅するためのユニットだが、その増幅のさせ方にタイプ違いが存在しているのだ。で、カーオーディオにて使われる「外部パワーアンプ」では、以下の3タイプがある。「A級」、「AB級」、「D級」、この3つだ。

それぞれがどのようなものなのかを順に説明していこう。まずは「A級」と「AB級」について。ところで実をいうと、「外部パワーアンプ」の動作方式にはもう1つ「B級」もある。そして「A級」と「B級」は対極的な関係にあり、「AB級」はその中間的な存在だとイメージしてほしい。

仕組みについて詳しく説明すると話が複雑になるので、特徴の違いのみを説明していく。まず「A級」は、音質的には有利だ。ノイズが発生しにくくクリアな音を出しやすい。しかし、効率は良くない。「外部パワーアンプ」は電気を使って信号を増幅するのだが、「A級」のモデルでは電気の消費量が多くしかも熱に変わってしまう比率も高い。なので、筐体が熱を持ちやすい。そして大出力も出しにくい。

D級パワーアンプの一例(プラグアンドプレイ・PLUG&PLAY POWER)。

もっともスタンダードなのは「AB級」。性能バランスが至って良好!

それに対して「B級」は、効率が良いので大出力を出しやすく、消費電力も比較的に少ない。そして熱も持ちにくい。ただし、音質性能的には不利だ。ゆえに、カーオーディオでは「B級」の動作方式が採用されたモデルはほぼ見ない。世界中をくまなく探せばあるかもしれないが、日本市場にある製品の中から「B級」モデルを見つけることは困難だ。

対して「AB級」は、「A級」と「B級」の良いとこ取りが成されているので、性能バランスが至って良好だ。音質性能も良く、そして消費電力量もそれほど多くなく、ある程度の大出力も出せる。結果、現代カーオーディオでの主流はズバリ、この「AB級」だ。最近は「D級」モデルの数が相当に増えてはきたが、定番はどれかと聞かれたら、やはり今でも「AB級」だ。

しかしながら、「A級」のモデルも一定数存在している。もともと多くはないが、すたれることはなく今でもコンスタントにニューモデルが登場し続けている。

さらにいうと完全な「A級」ではないものの、「A級」の動作方式に近づけた設計が成されたモデルも存在している。そのようなモデルでは純「A級」のネガティブな部分はある程度抑えられ、そして高音質なモデルとして仕上げられている。

なお「A級」モデルは、ミドルグレード以上である場合がほとんどだ。音質性能に重きを置くからこそ「A級」が採用されるケースが多く、結果、こだわりが詰まったモデルとなることが多いのだ。

とはいえ、「AB級」の超高級品も多々ある。廉価な「A級」モデルは少ないということは言えるが、超高級品=「A級」というわけではないので、そこのところは誤解のなきように。

D級パワーアンプの一例(カロッツェリア・GM-D8400)。

「外部パワーアンプ」は、パーツに贅を尽くすとどこまでも高性能化する!?

ところで「A級」も「AB級」も、性能と価格がある程度比例する。個性はそれぞれで異なるものの、グレード間での差は明らかにある。というのも「A級」も「AB級」も基本的な仕組みはシンプルで、そしてシンプルだからこそ高性能を得ようとすると“物量”がモノを言う。使用パーツの品質がダイレクトに音に効いてくるのだ。なので、廉価なモデルから超高級品までの価格差が、とてつもなく開く。というわけなので、より良いモデルを手にしたいと考えた場合には、ある程度予算を必要とすることは覚悟すべきだ。

続いては、「D級」について説明していこう。「D級」のみ、基本的な仕組みが少々異なる。「D級」の「外部パワーアンプ」では信号を増幅する際にそれを一旦、パルス信号に置き換える。そして増幅が終わったあとにもう一度普通のアナログ信号に戻される。

で、この仕組みによって以下のような特徴が得られることとなる。まず効率が良い。ゆえに消費電力が少なく、その割に高出力が得られやすい。しかも熱も発生しにくい。そして小型化も図りやすい。

なお、かつては「D級」モデルは音質性能的には不利だと言われていたが、それはもはや過去の話だ。最近は音質性能に優れた「D級」モデルも多々出ている。

ちなみに高出力化が図りやすいので、サブウーファー専用モデルの多くが「D級」の動作方式を採用している。ただし、そのようなモデルでは低音再生に特化した設計となっている場合がほとんどなので、フルレンジの再生は行えないのでご注意を。

また「D級」モデルには、超ハイエンドなモデルは少なく、逆に廉価ながらも高性能なモデルが多々ある。「D級」モデルはコスパが高い傾向が強くなっている。

今回は以上だ。次回も「外部パワーアンプ」選びに役立つ情報を発信予定だ。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

パワーアンプの“クラス”って何? 連載「カーオーディオユニットの選び方」詳細解説! Part4「パワーアンプ編」 その2

《太田祥三》

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