前回まで5回にわたり、自動車開発プロセスの変化や国内メーカーの課題と解決策、またビジネスプラットフォームとしてのクルマの潜在能力や社会にもたらす価値について解説してきた。最終回となる今回は「自動車セキュリティ」の領域について紹介したい。
セキュリティ専門家が指摘する、「CASE」の課題と懸念点
現在、多様なセンサーとネットワーク機能を備え、収集したデータによる監視・制御・最適化・自律性の機能をもつデバイス「スマートプロダクト」の数は、市場規模ともに大きな成長を続けている。高度にネットワーク化された自動車もそのひとつ。プラットフォームを介して多様なスマートプロダクトと連携し、生活のあらゆる場面で価値を生み出すことが求められている。その代表例として挙げられるのが、国内でも取り組みが加速している「スマートシティ」だ。
先進技術の活用で都市機能の高度化や効率化を目指すスマートシティにおいて、利用者の「移動したい」という欲求に対して配車指示はスマートシティのプラットフォーム経由で行い、実際のサービスはスマートシティと連携する移動サービス事業者が提供するという時代はもうすぐそこまで来ている。
この世界観へ自動車が対応するための要素技術として求められているのが、自動車業界で取り組みが進んでいる「CASE(コネクティッド化、自動運転化、シェアリング/サービス化、電動化)」だ。
2020年代に入り、多くの自動車完成車メーカー、サプライヤは自動車のアーキテクチャーやビジネスモデル自体といったパラダイムが大きく変革する時代になると考え、各社ともに新たなチャレンジへの取り組みを加速させている。CASEはいまだ歴史の浅い取り組みだ。それ故に、これまで十分に検討を行なってこなかった新規のビジネスリスクも生み出している可能性を認識する必要がある。

CASEが今後10年間の自動車業界全体の未来を示す、重要なトレンドとなることは疑う余地がない。だがサイバーセキュリティの観点から見るとどのようなことがいえるだろうか。C、A、S、Eのいずれにも、新たな課題が提起されている。CASEにおけるサイバーセキュリティ上の課題を具体的に見ていきたい。