【ボルボ XC90 T8リチャージ 新型試乗】電動化でもブレないクルマ作りのコンセプト…中村孝仁

理に適った電動化のアプローチ

4気筒、2トン超でも性能的に不満なし

まさにボルボ流の味付けといって良い

ボルボ XC90 T8リチャージ
ボルボ XC90 T8リチャージ全 33 枚

理に適った電動化のアプローチ

まあ、頑なといえば頑なである。こと、安全性と対環境性に関して、自慢じゃないだろうがボルボは世界一だと自負しているに違いない。

とにかくまだボルボが世界的にもハイエンドのクルマと認知される前から、彼らはこの二つの性能をクルマ作りの中心に据えてきたと言って過言ではない。古くは世界で初めての3点式シートベルトの装備に始まり、1976年に採用した世界初のキャタリティックコンバーター、ラムダゾンドなど、安全と環境に対するアプローチは常に世界最先端を行っていた。

じゃあ性能はどうなのよ?と思わず突っ込みたくなるのも当然で、その当時ボルボは退屈なクルマというレッテルを貼られていたのだが、そんなクルマがレースに登場するや退屈な4気筒エンジンは並居るV12やV8あるいは直列6気筒の高性能車をなぎ倒してツーリングカーレースで優勝する実力を見せつけたのだから、誰も文句を言わなくなった。

そして今はついに「2025年までにボルボの新車に使用される素材の25%をリサイクルおよびバイオベースの材料で構成することを目標としています」として、新たな電気自動車に本革シートを採用しないことを決めたようだ。何か一つの決めごとをすると、それに向かって突き進む傾向がこのメーカーは強いのである。そして今、日本で販売されるボルボ車のすべては電動化されている。ボルボの電動化はしかしながらこれまでの安全や環境に対するアプローチとは違って性急ではない。個人的には理に適ったアプローチのように思える。

4気筒、2トン超でも性能的に不満なし

ボルボ XC90 T8リチャージボルボ XC90 T8リチャージ
今回試乗した『XC90 T8リチャージ』は、PHEVのモデル。リチャージはボルボ流のPHEVの呼び名である。4気筒のガソリンエンジンをターボで過給し、ご丁寧にもさらに機械式のスーパーチャージャーを追加して低速域も過給してくれる。これに前後のモーターが加勢するのだが、リアモーターはいわゆる電動四駆としての働きを持っている。というわけでここまで書けば、性能的にそれが4気筒でたとえ車重が軽々と2トンを超える重さでも性能的に不満があるはずもないだろう。

センターコンソールに付くドライブモードにはピュア、ハイブリッド、インディビデュアル、パワー、それにオフロードという5つのモードが設定され、日常的にはハイブリッドがチョイスされるのだが、エコ運転と表示されるピュアが実はEVモード。これをチョイスするとまずはバッテリーに蓄えられている電気を使って走行する。

また、例えばスポーツをチョイスすると単にステアリングが重くなったり、あるいはエンジンのレスポンスが変わったりといったことだけでなく、試乗車に装備されていたエアサスペンションが、その車高も変えスポーツモードにするとかなり低くなる。逆にオフロードモードでは車高が高くなるのだが、走行モードを変更すると走行中にこれが起こり、顕著に車高が変わるし、乗り心地も明確に変化するのがわかる。

ボルボ XC90 T8リチャージボルボ XC90 T8リチャージ

まさにボルボ流の味付けといって良い

それはさておき、最近のクルマは個人的にはどれに乗っても薄味で、極端な個性の発出はないと感じる。ボルボもその例に漏れないわけだが、これは昔から同じで個人的にボルボを4台も乗り継いだ経験で言わせていただければ、まさにボルボ流の味付けといって良い。

とにかく出しゃばらず、邪魔をせず、ドライバーが赴くままにドライバーが意図するままに走る。その動きも振る舞いも至って上質。そしてインテリアの質感がとても上質だ。ここは個人的に乗っていたボルボとは大いに異なる点で、今やボルボが完全にプレミアムセグメントのクルマに格上げされたことを感じずにはいられない。

それにしても短距離の移動が多い場合(こんな巨体を短距離走らせるのはもったいないという感じもあるが)、家に帰って充電設備があれば化石燃料の補充はほとんどいらない。結果として1週間試乗してもガソリンの燃費は12.3km/リットルと、このサイズと重さを考えたら本当に立派な数値を残した。流石にバッテリーだけでは30kmほどしか走らないので、それを超えた移動の場合はガソリンが多用されることになるが、それでも電気の恩恵は大きい。

これが電気だけとなるとチャージの時間だったり航続距離だったりを心配しないといけないから、個人的にはまだ積極的に使用したいとは思わないが、PHEVはとても好ましいと思える。

ボルボ XC90 T8リチャージボルボ XC90 T8リチャージ

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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