カワサキよ、お前もか。バイクの電動化に時代の流れ【岩貞るみこの人道車医】

カワサキのEVバイク(試作)
カワサキのEVバイク(試作)全 6 枚

バイクの電動化が加速する

カワサキよ、お前もか。飛び込んできたニュースを見て、私はそうつぶやいた。川崎重工業株式会社。いや、二輪車乗りには、やっぱりカタカナでカワサキだ。そのカワサキが、2035年までに、先進国向けの主要機種を電動化すると発表したのである。

ヤマハも今年の夏に、現在1%である電動割合を、2035年までに20%に引き上げると発表している。ホンダも、現在、商用向けの電動化に加えて2024年からは個人向けも電動化にすると言っている。

水素エンジンについて説明するカワサキモータースの伊藤社長水素エンジンについて説明するカワサキモータースの伊藤社長
冷静に考えれば電動化のメリットは大きい。一番は、燃費がよくなることで伸びる航続距離である。このところガソリンスタンドが軒並み閉鎖され、地方にいくといくら走ってもスタンドが見つからずにドキドキすることがある。しかも、交通量の少ない高速道路のSAもガソリンスタンドが撤退していて、給油のために高速道路を降りなければいけない事態になりつつある。タンクが小さいぶん、燃費が上がるのはありがたい話である。

さらに静かさ。カワサキによるとエンジンのみ、モーターのみ、両方という3つの走行パターンが可能なHV(ハイブリッド)を開発ということだが、早朝や深夜に住宅街を走るときにEVモードが使えるのは便利だと思う。私が通勤に使っていたころは、近所迷惑を考慮して大通りまで『CB750F』を押していき、そこからエンジンをかけたものだ。

電動化のメリットは大きいが

電動化のメリットは大きい。ありがたい部分もある。あるよ、そう、あるのだが、やはり気になるのは音である。二輪車の魅力。そのひとつは音なのだ。

単発の、ぽんぽんぽんっ!という音。
2サイクルの、甲高い音(すっかり姿を消したけれど涙)。
V型エンジンの、どろどろした音。
そして、4気筒エンジンの、厚みがあり清々しく美しい音!(だけど、ヤマハのぴろぴろぴーな音はあまり好きじゃなかった@80年代)

スタータスイッチにしろ、キックスタートにしろ、エンジンがかかった瞬間の、一気に命を吹き込まれるあの音がたまらなく好きだ。まさに咆哮である。

だけど、電動化……。

カワサキ ヴェルシス1000 SEのエンジンカワサキ ヴェルシス1000 SEのエンジン
いつも思うのだが、二酸化炭素排出量削減では“エンジン”がやり玉にあげられすぎだ。自動車メーカーもがんばっちゃうので、それもある意味、悪循環だと思う。

ただ、欧州などでは街を規制することで強制的に排気ガスを排除にかかっている。今回のカワサキの記者会見でも、都市名こそは表示されなかったが、デジタル地図のように加工されたパリの地図が映し出されていた。

カワサキが本気でHVに着手する理由

パリは、街中の大気汚染の半分近くが車両によるものだとして、これまでナンバープレートを偶数奇数で分けて通行させるなどの対策をしてきた。現在はエンジンの種類、登録年、排気ガス量などを考慮して、クリテール(Crit’Air=Certificat Qualite’ de l’air)という制度を作り、6区分に分けている。乗用車だけでなく、バス、トラック、そして二輪車にも適用され、色違いのステッカーですぐに見分けられるようになっているのだ。

0=電気自動車、水素燃料電池
1=ハイブリッド、天然ガス、2011.1以降のガソリン車
2=2006.1.1~010.12.31のガソリン車、2011.1~のディーゼル車
……というように分けられ、この6段階に入らない1996年以前に登録されたクルマはステッカーも与えられない。そして、5や、ステッカーなしは、平日の8~20時のあいだは指定エリアは通行禁止になるほか、その日の大気汚染の状況によっては、4や3にも制限がかけられるという。きっと、今後はもっと厳しくなっていくことだろう。

私がイタリアに住んでいたのは、もう25年以上前だが、そのときすでにボローニャでも、大気汚染のひどい日は新聞に「今日は、〇〇なクルマ(古く排ガス対策がされていないクルマだったと記憶)は中心部進入禁止」と出ていたっけ。

ストラスブール市街(資料画像)ストラスブール市街(資料画像)
このクリテール、フランスではパリのほか、リヨン、グルノーブルでも行われていて、2021年に入ってからは、新たにランス、ストラスブール、ボルドーといった都市にも適用されたという。フランスは、古いシトロエンなどを愛してやまない人もいるというのに、なんという仕打ち。カワサキの『Z2』はもちろん、『GPZ900Rニンジャ』なども、市内に入れないではないか。

二輪車のよさは、街中でもすいすい走れる手軽さにもある。そりゃ、カワサキが本気でハイブリッドに着手するはずだ。これが時代の流れというものか……。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。最新刊は「世界でいちばん優しいロボット」(講談社)。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

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