世界初の工法を編み出したエンジニアの挑戦、レクサス板金技術者が語る『R3』への道…名古屋オートモーティブワールド2021

レクサス IS のリヤビュー。シャープな外観デザインを実現するために「R3」を成形できるプレス工法を開発した。
レクサス IS のリヤビュー。シャープな外観デザインを実現するために「R3」を成形できるプレス工法を開発した。全 12 枚

トヨタ自動車は2020年に実施した高級車ブランド・レクサスのコンパクトスポーツセダン『IS』の大幅刷新でシャープな外観デザインを実現するために、世界最小の曲率半径となる3mm=R3を成形できるプレス工法を開発した。

そのR3の鋭いラインはISの全てのキャラクターラインに引かれている。このうちトランクリッドには1回のプレスで『寄せて』、『絞る』の2段階の加工を行う世界初の「寄絞り工法」が、一方のリアフェンダーには絞り成形した後にさらに内側から突き上げる2次加工でシャープなラインを実現する「突き上げ工法」が、それぞれ採用されている。

レクサス ISレクサス IS
この2つの新たなプレス工法の開発に携わったトヨタ自動車レクサス統括部生産技術室の小松徹グループ長は「最初にシャープなラインのISのクレイモデルを見た時は本当に格好良いなというのが第一印象で、何としてもこのまま世に出したいという思いが強かった」と当時を振り返る。

その一方で「まだ技術が確立していなかったこともあり、本当にやれるのかという不安もかなりあったというのも事実」と、小松氏は明かす。

「レクサスのクルマとして世に出す」ということ

開発チーム一体となって成形を模索。開発チーム一体となって成形を模索。
従来の工法で造った金型では、トランクリッドの最初の絞り工程で、鉄板がキャラクターの稜線に沿ってぱかんと口を開いて割れてしまう。鉄板の成形の限界を超えてしまうため、従来の工法では割れを防ぐことができない。

そこで、本来なら生産技術が本格的に検討に入り込む通常のタイミングから2ステップ、3ステップも前の段階からデザイナーと会話をし、パッケージがデザインに織り込まれる前に特徴的な意匠をつくるための技術開発の方向性を決めていった。

デザイナーだけでなく、「開発が本格的に始まって作図のタイミングでは設計の開発拠点にチーフエンジニアの小林直樹さんを始め、デザイン、設計、生産技術も、また必要に応じては製造の部署からも設計の拠点に集まって同席設計を週に2回はやっていた」とも。

小松氏は、特に今回は製造とのつながりも大きかったと話す。「通常では金型に着手するくらいのタイミングから製造の部隊に入ってもらうが、量産での課題を一緒に消し込んでいかなければならないという思いがあったので、最初からモデルを見に来てもらってデザイナーの思いを製造の現場の匠にも伝えてもらう機会をつくった」と明かす。

そこには高級車である「レクサスのクルマとして世に出す」というプライド、信念があった。

デザインの自由度を上げていくのも生産技術の役目

世界初の「寄絞り工法」。プレス一打の中で「寄せて」「絞る」の2段階の加工をすることで、従来の限界を超えたプレス成形を実現。世界初の「寄絞り工法」。プレス一打の中で「寄せて」「絞る」の2段階の加工をすることで、従来の限界を超えたプレス成形を実現。
一方で、造形として優れていても製品としてユーザーに届けるものである以上、品質を保ちながら生産を続ける必要がある。

「当然、形状が尖れば尖るほど、接触面積が小さくなればなるほど、金型にかかる圧力が大きくなるので、金型の摩耗もその分、早くなってしまう。成形のめどは意匠確定の段階にはたてられたが、品質をしっかりと出し切れるか、しかもモデルライフで形状を崩さずに生産し続けられるのかといったところに、かなり課題はあった」

それでも「ワンチーム」で取り組むという体制のもと、「工法としては本当にたくさんのアイディア・パターンを、シミュレーションの中でかなり検証を重ねていくことで、以前ではたどり着けなかったような技術にもたどり着けるようになった」という。

レクサス初の「突き上げ工法」。絞り成形したプレス品のキャラクター部を、後工程でシャープな形状に突き上げ成形(二次成形)することで、平らな面にシャープなキャラクターを成形することを可能にした。レクサス初の「突き上げ工法」。絞り成形したプレス品のキャラクター部を、後工程でシャープな形状に突き上げ成形(二次成形)することで、平らな面にシャープなキャラクターを成形することを可能にした。
こうしてたどり着いた世界初の寄絞り工法は「金型だけでの工夫」で、プレス機そのものは従来の設備をそのまま使っているという。

「プレスの動力としては、プレス機としては上下の動きだけで金型が降りてきて、途中で上下の動きは成形し切ったタイミングで横からの動きが始まるというような形で、プレス機自体は上下の動きだけだが、金型の中で上下の力を横方向の力に変換するような機構になっている。これを今回仕込んだことでサイドからの成形を可能にしている」と小松氏は解説する。

「デザインの自由度を上げていくというのも生産技術の役目だと思っているので、そこも含めて今回、取り組んだ。デザインの自由度を上げられるように複雑な条件の中でもR3を採用できるところまで技術を磨いてきた。今後のデザインの中で表現したいところにR3が入ってくれば、どんどん採用はしていきたいと思っている」

第4回[名古屋]オートモーティブワールドで講演

そう語る小松氏は10月27日からポートメッセなごやで開催される第4回[名古屋]オートモーティブワールドの初日のセミナー「世界初の工法を編み出したエンジニアの挑戦」で、「レクサス板金技術者が語る『R3』への道」をテーマに登壇する。

「もともとの発端は豊田社長から『もっといいクルマをつくろうよ』という発信があって、生産技術としては格好の良い意匠、シャープなラインを実現するプレス技術の開発を進めていて、初めてR3に挑んだのがIS。今回のセミナーではその金型の仕組みや仕様などについて話をさせてもらおうと思っている」と小松氏は語った。

本講演の詳細・お申込みはこちら

■第4回[名古屋]オートモーティブワールド
自動運転、EV/HEV、カーエレクトロニクス、コネクティッド・カー、軽量化など、自動車業界における先端テーマの最新技術が一堂に出展する。「展示会はいかなる場合でも予定通り開催することが大原則である」という主催社の考えのもと、徹底したコロナウイルス対策をおこない出展社、来場者の安全を確保し予定通り開催される。

会期:2021年10月27日(水)~29日(金)10:00~18:00 (最終日のみ17:00まで)
会場:ポートメッセなごや
主催:RX Japan株式会社(旧社名:リード エグジビジョン ジャパン)

《小松哲也》

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