東ヨーロッパ、チェコの自動車メーカー、シュコダ(Skoda)。
ドイツのオペルと同様、およそ120年にわたる自動車製造の歴史を持つが、第二次大戦後にチェコ(当時のチェコスロヴァキア)が旧ソヴィエト連邦の支配下に置かれた関係でシュコダの技術開発も西側諸国のメーカーに比べて後進的となり、1989年に共産主義体制が崩壊した時にはその差は決定的なものとなっていた。
自由経済の波を渡る力のなかったシュコダを傘下に収めて再生させたのはフォルクスワーゲン。当時、再生にはルノー、ゼネラルモーターズ、ダイムラーベンツ(現・ダイムラー)なども名乗りを上げていたが、シュコダを企業としてだけでなく独立したブランドとしても存続させると明言したフォルクスワーゲンが選ばれたという経緯がある。
そのシュコダを大いに躍進させたのは、シュコダ買収後にフォルクスワーゲンの実権を握ったフェルディナンド・ピエヒ氏。ポルシェ一族として知られるピエヒ氏は1997年にフォルクスワーゲン『ジェッタ』とエンジニアリングを完全共有し、デザイン、チューニング、コストコントロールだけが違う4ドアセダン『オクタヴィア』を送り出した。
オクタヴィアはフロントマスクにイタリアのランチア『デドラ』に似た控えめで品の良い、それでいて面積はそこそこ大きいグリルが与えられた。全体のフォルムも古典的なものだった。サスペンションはやや柔らかめにセッティングされた。この“非ドイツ車”的なデザインとテイストはヨーロッパ市場のユーザーから好感を持って迎えられ、実勢価格はジェッタより低かったにもかかわらず、あえてシュコダを選ぶという顧客が続出。フォルクスワーゲングループのシェア拡大に大いに貢献した。
このオクタヴィアの成功は今日に至るまでのシュコダのブランドアイデンティティを決定づけるもので、サブコンパクトの『ファビア』、ミニSUV『カロック』、3列シートSUV『コディアック』など他のモデルも今日に至るまで同じようなコンセプトで作られている。フォルクスワーゲンの新鋭バッテリーEV『ID.4』とプラットフォームを共有する『エニャック』もすでにヨーロッパ市場に投入されるなど、新技術の投入で本家フォルクスワーゲンとのタイムラグがほとんどない点もグループの中国市場や新興国市場向けモデルと異なるところだ。シュコダ・エニャック iV