電動航空機の市場規模は、2021年の79億米ドルから平均年成長率14.8%で成長し、2030年には277億米ドルに達すると予測されている。市場の成長は、都市型エアモビリティの展開と、貨物用途はじめさまざまな用途での電動航空機の採用が増加していることに起因する---。
グローバルインフォメーションは、市場調査レポート「電動航空機の世界市場(~2030年):プラットフォーム(地域輸送機・ビジネスジェット・軽飛行機&超軽量動力機)・タイプ・システム(電池・電気モーター・航空構造・アビオニクス・ソフトウェア)・技術・用途・地域別」(発行:MarketsandMarkets)の販売を10月26日より開始した。
近年、新型コロナウィルス感染症の発生は多くの産業分野に影響を及ぼした。レポートによると、中でも航空分野では大きな影響があったいっぽう、電動航空機市場は、航空機市場全体と比較して、それほど影響を受けていないようだという。
電動ドローン(ドローン=無人航空機)は、軍が国境警備などの任務に使用するほか、政府や法執行機関も実験的に使用している。電動航空機の民間・商業用途としては、ジップラインのような企業による医療用品の輸送や、空撮があげられる。アメリカでは、アマゾンなどの配送業が、電動ドローンの利用を拡大している。ジップラインがアフリカのルワンダで展開する医療品空輸サービス(2018年)
小売業など物流業は、新型コロナウィルス感染症の流行以後、対人・対面による業務を避ける必要があることから、商品を配送するために電動ドローンの使用を考慮するようになった。また、アフリカでは、医薬品やアメニティを供給したり、臓器や血液を都市間で輸送したりするEMS(国際スピード郵便)の一環として、電動ドローンの利用が拡大している。こういった状況により、電動航空機市場はパンデミックによる影響が小さくてすんだという。
レポートは、電動航空機市場の牽引要因として、クリーンで静かな航空機へのニーズがあるという。航空輸送行動グループ(ATAG)によると、2019年の世界のフライトで、約9億1500万トンの二酸化炭素(CO2)が発生した。人間が誘発するCO2全排出量の約2%が航空業界からだ。航空機と航空旅行の増加に伴いこの数値はさらに上昇する。国際民間航空機関(ICAO)、米連邦航空局(FAA)、欧州航空安全機関(EASA)などの組織は、航空機からの排出ガスが2050年までに3倍に増加すると予測している。ズーナムエアロ
そのため航空業界ではCO2削減に貢献する電気航空機の普及が急務となっている。航空機燃料の持続可能な代替手段を求めている。さらに電気モーターは、ジェットエンジンや内燃機関のような音がしないため、航空機の騒音レベルも大幅に下がる。
エアバス、イーヴィエイション、ズーナムエアロ社、ピピストレルなどの電動航空機メーカーは、クリーンな航空機へのニーズを近い将来のチャンスと捉えている。持続可能な空の旅へのニーズは、電動航空機市場を牽引する大きな要因だ。