【オピニオン】『COP26』のゼロエミッション宣言にあった欠陥とは?

COP26の会場に展示されたジャガーI-PACE Getty Images News/ゲッティイメージズ
COP26の会場に展示されたジャガーI-PACE Getty Images News/ゲッティイメージズ全 2 枚

英国グラスゴーで開催されている『COP26』(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)で11月10日、議長国の英国は2040年までにすべての乗用車とバンをゼロエミッションにすることを宣言した。これに国家として同意したのは24の先進国と9つの途上国。国連加盟国は193か国だから2割にも満たない。日本は同意しなかった。

【画像全2枚】

自動車メーカーは11社が同意したが、新興のスタートアップを除くとGM、フォード、メルセデス、ボルボ、ジャガー・ランドローバー、そして中国のBYDの6社だけ。ここにも日本メーカーの名はなかった。なおGM/フォードの母国であるアメリカ、メルセデスのドイツ、BYDの中国は国家として同意していない。

2015年の『パリ協定』により、多くの国が「2050年までのカーボンニュートラル」を目指すことになった。クルマの耐用年数を考えれば、2050年のタイムリミットの10~15年前から、新たに販売するクルマをカーボンニュートラルにしなくては間に合わない。当然のことだ。

しかし、今回の『COP26』で英国政府が提案した宣言には重大な欠陥があったと言わざるをえない。その宣言には、こう書かれている。

*政府として私たちは、先進国市場では2035年までに、グローバルには2040年までに乗用車とバンの新車をゼロエミッションにする。

*自動車メーカーとして私たちは、先進国市場で2035年までに乗用車とバンの新車を100%ゼロエミッションにするよう努力する。

問題は「ゼロエミッション」という文言だ。とうもろこしや砂糖きびから作るバイオエタノールはカーボンニュートラルな燃料だが、それを内燃機関で燃やせばCO2が発生するのでクルマ単体で見ればゼロエミッションではない。カーボンニュートラルな製法で合成される「e-フューエル」も同様だ。水素を燃料とする内燃機関も、エンジンオイルが燃えてわずかながらCO2を出す。

「ゼロエミッション」という文言は、それらの可能性を閉ざしてしまう。ゴールはクルマを動かすエネルギーをカーボンニュートラルにすることのはずなのに、英国政府の宣言はクルマ単体でのゼロエミッションを求めた。バッテリーEVや燃料電池車だけがゼロエミッションビークルだという、LCA(ライフサイクル・アセスメント)を無視した古い価値観だと言わざるを得ない。多くの国家と多くの自動車メーカーが宣言に同意しなかったのは、これもまた当然ことだろう。

バイオエタノールもe-フューエルも水素エンジンも、グローバルにクルマをカーボンニュートラルにする決め手にはなるかどうかは、まだわからない。しかしクルマの燃料としてバイオエタノールが普及しているブラジルは、カーボンニュートラルのフロントランナーだ。そのブラジルは、もちろん今回の宣言に同意しなかった。今回の宣言がe-フューエルの実用化に向けた研究開発を減速させてしまう懸念もある。

「ゼロエミッション」という文言の中身を、カーボンニュートラル燃料も含めて再定義しなくてはいけない。そうすれば、次回の『COP27』ではもっと多くの国やメーカーが賛同するだろう。CO2削減という大きな方向性は、誰もが共有しているのだから。

千葉匠|デザインジャーナリスト
デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは審査委員長を務めた。

+ 続きを読む

ピックアップ

レスポンス公式TikTok

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 【スズキ Vストローム250 試乗】速さもアドレナリンも要らない!“旅バイク”の真価を教えてくれる…青木タカオ
  2. ピアノブラック内装の拭き傷・指紋付着を抑制、コメリが専用コーティング剤を発売
  3. ポルシェ『ミッションS』世界初公開、911を超える新型スーパースポーツに
  4. 日産『セレナ』次期型はどう変わる?…土曜ニュースランキング
  5. 英トヨタ、『Top Gear』伝説の耐久試験を再現…新型『ハイラックス』に760kgのトレーラーハウス落下
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. EU「欧州製EV」優遇へ、産業加速法を審議---売れるEVと売れないEV
  2. ボッシュ、大型商用車事業の売上倍増へ…IAA TRANSPORTATION 2026
  3. 横浜ゴム、ディスクロージャー優良企業に初選定…自動車・タイヤ部門で第1位
  4. NITTANのエンジンバルブ技術、インドで実証へ…経産省グローバルサウス事業に採択
  5. CASE革命と電動化、次世代の自動車部品
ランキングをもっと見る