【スバル ソルテラ】航続より走りではないのか?…トヨタと仲良くケンカした

スバル・ソルテラ発表
スバル・ソルテラ発表全 20 枚

スバルが初めてグローバル展開するBEVの『ソルテラ』が発表された。中村社長以下開発陣が強調するのは、いかに「スバルらしい」つくるか。この想いはBEVになっても変わることはない。だが、電動化やコネクテッドといった自動車産業の変革は理想論だけでは通用しない。グローバルカーとなればなおさらだ。

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現時点で発表されている内容は限られているが、ソルテラの「スバルらしさ」はどんなところなのか、もっと端的にいえばトヨタbZ4Xと違う点はどこか、といった点を考えてみたい。その上で浮かび上がるグローバル戦略での課題にも言及する。

対等な関係の共同開発体制

まずエクステリアの特徴はスバルのヘキサゴングリルをEVを意識した精悍かつ先進感のあるデザインとし、ヘッドライトまわりもスバル車の意匠であるコの字型だ。ロービームには複数プロジェクターを配置した独特なもの。スバルの意匠をしっかり残したデザインとなっている。外装色や内装についても、トヨタにはない色をトヨタのラインに持ち込んでいる(ソルテラはトヨタの工場で作られる)。

開発は、トヨタの拠点にスバルエンジニアや担当者が出向する形で行われたが、お互い対等な立場で設計仕様を煮詰めていったという。合言葉は「なかよくケンカしよう」だそうで、設計や仕様でお互いぶつかることがあっても、設計思想の根幹は「いっしょにいいクルマを作る」とし、決定はこの基準で行ったという。たとえば、お互い車両の設計基準やポリシーは異なる。片方からみれば、この位置にメーターを配置するなどありえない、多少燃費が落ちても走りを優先したい、といった点だ。

今回、ソルテラとトヨタ『bZ4X』のほとんどのコンポーネントは共同開発。両者の意見や設計は同じ条件で採用されて作られている。たとえば車両プラットフォームはソルテラは「e-SGP」という名称がつけられている。bZ4Xは「e-TNGA」だ。同じものに違う名前がつけられている状態だが、2019年以降、両者によるEV共同開発プロジェクトの中で、双方の理念と知見が盛り込まれたものだからだ。

足回りやXMODEなどの電子制御で差別化

トヨタ『86』とスバル『BRZ』でそうだったように、ソルテラも足回りのチューニングがトヨタ車とは異なっている。発表動画では、独自の悪路テスト、オフロードテストも行っているようで、ダンパーの減衰率などを調整した。モーターおよびバッテリーの制御ECUは共用で、基本的な走行性能の制御は同じだが、ソルテラは2モーターAWDの細かい制御を活かすため、XMODEを実装している。この制御はベースとなるエコ、ノーマル、パワーという3段階のモードとは別の機構となり、独自のグリップコントロールを行っているという。

詳細の製品仕様は実際の発売までにまだチューニングしながら決めていく段階なので、具体的な制御内容や数値的なスペックは公開されていない。だが、EVおよび電子制御のメリットとして、応答性の高さ、制御の解像度(ECUのクロック周波数)は、内燃機関より格段にあがっているので、スバルのAWDのノウハウが理想的な形で投入できたという。ソルテラの開発責任者である商品企画本部プロジェクトジェネラルマネージャー小野大輔氏は「燃料に点火して爆発させるまではこんなに時間がかかっていたんだ、と再認識した」と語る。

他にも回生制御にもスバルらしさを投入した。ペダルオフで完全停止までは行わなかった(クルマを止めるものはブレーキであるという考え方)が、パドルシフト式の回生調整レバーを搭載した。このため、アクセルオフの回生はあえて効きを押さえてパドル操作で積極的な減速を行う。ワンペダルコントロールは慣れると楽だが、加減速の積極的な制御、ダイレクト感という点ではパドルによる減速+ブレーキングのほうが愉しいと思うユーザーは、スバルファンには多いのではないだろうか。

また、bZ4Xではオプション設定されたステアバイワイヤ制御は、ソルテラでは採用が見送られている。スバルとしては、まずはBEVのAWDの性能を極めてからという想いがある。ステアリングが丸ではない、ヨークハンドルは、車庫入れなどでハンドルの持ち替えをしないようにギア比を高くする必要がある。車速感応で可変ギア比やレーンキープ支援などで対応できるが、スバルはいまのところ必要ないという判断だ。

アイサイトが実装できないソルテラ

細部でスバルらしさを追求したソルテラだが、死角もある。今後の社会状況・環境規制にも依存するが、長期的な視点に立つと、共同開発の限界、壁にぶつかる可能性だ。

ソルテラとbZ4Xは、車両プラットフォームの他、ECUプラットフォームも共通だ。細部の仕様は両者のいいとこどりで作られているが、ECUプラットフォームはトヨタのシステムがベースとなっている。ADAS系の制御は「トヨタセーフティセンス」そのものといってよい。そのため、ソルテラにはアイサイトが実装できない。原理的にできないことはないが、工場が同じなのでディーラーオプション的な対応でしか後付ができないだろう。

アイサイトの性能と進化は定評がある。技術的完成度の高く、モデル設計とコンポーネントの内製化を取り入れ、これからのコネクテッドカーや安全運転支援、有人自動運転を考えたとき、アイサイトの系譜がBEVで終わってしまうのはもったいない。というより、技術資産の損失でもある。

市場が立ち上がろうとしている現段階では、経営スピードやコンプライアンスの視点から、共同開発により協業領域を広げる戦略は合理的だ。北米でもBEV市場は不確定要素があるなか、OEM供給でBEVを市場投入するという考え方だ。

だが、長期的に考えたとき、プラットフォームの提供は受けても、その価値を引き出すソフトウェア、制御技術に独自性が出せないと、そもそもOEM供給元(トヨタ)との差別化もままならなくなる。ステランティスはEVプラットフォームは共通化しているが、駆動方式やコネクテッド機能、ECUプラットフォームなどはグループ各社がぞれぞれの工場でうまく差別化を行っている。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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