【トヨタ ランドクルーザー 新型試乗】サバイバルツール的な魅力がある…中村孝仁

トヨタ ランドクルーザー ZX
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トヨタのウェブサイトの『ランドクルーザー』のページに「納期目途に関するご案内」というタイトルで始まる一文が掲載されている。曰く、今注文するとその納期は2年以上先だという。あくまで9月18日時点での話だ。

かつて、モーガンの納期がおおよそ1年と聞いてあり得ないと思ったものだが、2年は想像の域を超えていた。何故それほどまでに人気なのだろうと思った。それとどこで売れているのかという疑問も。というのも、2021年からランドクルーザーは北米市場では売らない。ヨーロッパの大半の国も販売しない。主要マーケットは中東、オーストラリア、ロシアなどだという。それを聞いて何となく合点がいった。

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30年前、ランドローバーの聖地で思ったのは

今から30年ほど前、イギリスのソリハルというところで当時はまだSUVという言葉が一般的ではなく、どちらかというと日本ならクロカン四駆と呼ばれるような車の試乗をしたことがある。ソリハルと聞いてピンとくる人は多いだろう。そう、ランドローバーの聖地である。

ここには巨大な池のような試乗コースがあって、メーカーのスタッフがおもむろにそこへ入って車を走らせた。私はパッセンジャーシートである。どうやら水の下はぬかるみのようだ。無事にそこから這い出して、「ほかにここを通過できるクルマはあるの?」と質問してみると「全部中央付近でスタックする」と答えてくれた。つまり抜群の走破性を謳い文句にしていたわけだ。その車とは、初代『レンジローバー』である。

その後、ランドローバー社が『ディスカバリー』というモデルを発表し、その試乗でオーストラリアを訪れ、途方もないコースを走らされた時、「これはクルマではなくサバイバルツールだ!」と思ったものである。「兎に角こいつに乗っていれば、とりあえず生きて帰れる。」そんな印象を受けた。日本に帰ってすぐに注文してしまった。見事に虜になったわけだ。

「とりあえず生きて帰れる」サバイバルツール的な信頼度

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中東にしてもオーストラリアにしても、あるいはロシアにしても場所によってはクルマが止まってしまうと生死にかかわる場所がたくさんある。つまり、ランドクルーザーはその「とりあえず生きて帰れる」というサバイバルツール的な信頼度が人気の秘密なのだと思う。レンジローバーもイイ。でもレンジローバーは今や高価すぎて手の届く範囲にない。そこへ行くとランドクルーザーはレンジローバーの半値で買える。そもそも今やレンジローバーとランドクルーザーは狙っている顧客層がまるで違うということだろう。

新しいランドクルーザー300も随分と豪華になった気がするが、その部分にはそれほど力を入れてクルマ作りをしていない感じがする。とことん耐久性と信頼性、それに走破性(主として悪路)を向上させることに心血を注いだクルマである。

昔、ジープの悪路走破性能に関して、「そこまで必要?」という問いに対し、「保険です」と答えたことがある。それはフェラーリを前に「300km/h出せる必要ある?」と聞くのと一緒だ。その良さを理解するから絶大な信頼を寄せるわけである。

問題は「2年待てるか?」

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そんなわけだからランドクルーザーにとって、アーバンジャングルはその実力の半分程度しか発揮できない気がした。無類に静かだし、快適な室内空間を持っている。新しい3.5リットルV6ツインターボエンジンは右足の踏力に極めて忠実で、2.5トン(これでも先代より100kg以上軽くなっている)を超える重量にも俊敏に反応してくれる。

さすがにオフロードを縦横無尽に走ることを第一義的に開発された印象が強い。だからオンロードの走りは、アーバンジャングルの凹凸を一発でピシャリと止める技は持ち合わせておらず、波を超えて走るクルーザーのような動きに終始する。

全長はともかく、全幅が1980mmもあるとさすがにデカいと感じる。ショッピングモールの駐車場だと、左右のタイヤが白線に乗るようなサイズだ。それでも、このクルマにはサバイバルツール的な魅力を感じる。かつて私がディスカバリーを即注文したように、兎に角欲しいという人はたくさんいるのだと思う。問題は「2年待てるか?」だ。

試乗の終わりの方で、信号に止まったら、警察官がこちらに向かって手を振っている。特に思い当たる違反もなかったので、素直に窓を開けると「もう納車されたんですか?」の問い。「いえ、これはメディア向けの試乗車で今試乗中です。」と答えると「そうですよね、ずいぶん早いなぁと思いました」…なんと、警察官にも人気の的であった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

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