【ホンダ PCX 試乗】見た目のチャラさとは裏腹な「縁の下の力持ち」…伊丹孝裕

見た目のチャラさとは裏腹に

機能優先でスキのない作り込み

淡々と仕事をこなすタイプのエンジン

バイクのような安定感でコーナリングを楽しめる

ホンダ PCX
ホンダ PCX全 32 枚

見た目のチャラさとは裏腹に

ホンダの125ccスクーター『PCX』は、見た目のチャラさとは裏腹に中身はいたって真面目である。

【画像全32枚】

どのあたりがチャラいのかと言えば、まずハンドルまわりだ。一般的にはカバーで覆われているバーハンドルとライザーは、もろ肌を脱ぐように剥き出しでマウントされ、ピカピカのクロームメッキでドレスアップ。グリップ部分の絞り角と垂れ角が強く、シートのバックレストが大きいこともあって、ついふんぞりかえった姿勢を取りたくなるのだ。

ホンダ PCXホンダ PCX
そういうオラオラ感を助長する要素は他にもある。きらびやかなウインカーインジケーターや妖しく光るイグニッションのイルミネーションがそれだ。夜になればなるほど存在感を主張し、けっこうゴツめのバーエンドやエッジの効いたタンデムステップも、どこか光り物を思わせる。

ホンダが思い描いたイメージは「水上を悠々と疾走するパワークルーザー」だそうだが、この華やかさを優雅と捉えるか、気恥ずかしさを覚えるかは、世代によって分かれるはずだ。

機能優先でスキのない作り込み

ホンダ PCXホンダ PCX
その一方、エンジンや車体は機能優先で作り込まれていてスキがない。セルボタンを押した瞬間にアイドリングが始まる直結感はスクーター界随一のもので、頻繁に操作する部分のスピーディな反応が心地いい。逆に、ほとんどのユーザーが一度たりとも使わず、取り出すこともなさそうな車載工具の充実も図るなど、もしもの時の備えにも気が配られている。

もしもの時の備えはセーフティ面でも同様で、2021年1月に発売された現行モデルは、フロントブレーキにABSを備える他、トラクションコントロールを新たに採用。リヤタイヤのスリップを検知すると、燃料の噴射量を制御してグリップを回復してくれるのだ。

ホンダ PCXホンダ PCX
今回の試乗はたまたま雨にたたられたものの、結果的にこの電子デバイスは機能しなかった。というのも、純正採用されているミシュランのタイヤ「シティグリップ」のウェット性能が勝ったらしく、充分なグリップ力を発揮。

また、大型化されたフットボードや、その上部が張り出したカウル形状のおかげで雨天走行中も足元が濡れづらいなど、さりげないおもてなし機能が光った。若々しいショートスクリーンではなく、アクセサリーとして用意されているロングスクリーンに交換すれば、快適性はさらに向上するに違いない。

淡々と仕事をこなすタイプのエンジン

ホンダ PCXホンダ PCX
124ccの水冷4ストローク単気筒エンジンは、淡々と仕事をこなすタイプだ。ヤマハ『NMAX』よりパンチは劣るものの、中回転域のトルク特性に優れ、スロットル開度に対してリニアに車速が増していく。特に主張はしてこない代わりに、どんな場面でもコントロールしやすく、スロットルの操作力が軽いおかげで、長距離を走っても疲労が少なそうだ。

加えて、収納力の高さも長距離性能を後押ししてくれる。シート下のスペースには30リットルの容量が確保されているだけでなく、大きな開口部によって荷物の出し入れにわずらわしさがない。

これ以外にも500mlサイズのペットボトルが入るフロントインナーボックスが備えられ、内部にはUSBタイプCのソケットが標準装備されるなど、なにかと利便性が高い。荷物をあれこれ積み込んでのツーリングにも余裕で応えてくれるはずだ。

バイクのような安定感でコーナリングを楽しめる

ホンダ PCXホンダ PCX
足まわりは、どちらかと言えばやや硬い。とはいえ、身体が突き上げられたり、車体が振られたりわけではなく、ダンピングがしっかり効いているタイプだ。ギャップを拾ってもその後の収束が早いヨーロッパ車的なセッティングが施され、ポワンポワンといつまでも揺すられないスポーティさが好ましい。

実際、ハンドリングもそれに見合ったもので、軽快なスクーターというよりはバイクのような安定感でコーナリングを楽しむことができる。燃料タンク容量も8.1リットルとたっぷりとあるため、ワインディングをまたぎながらのツーリングでも不安は少ないはずだ。

PCXはユーザーの走りをさりげなくサポートしてくれる「縁の下の力持ち」的な存在だ。そこには操作や入力に対して実直に反応する誠実な乗り味があり、過度な演出はない。そういう意味では印象に残りづらいキャラでもあるが、機能で失敗したくないユーザーはPCXを選んで後悔することはないはずだ。

ホンダ PCXと伊丹孝裕氏ホンダ PCXと伊丹孝裕氏

■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★
オススメ度:★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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