物流業界で進む電動化…三菱ふそうがEVトラック向けエキスパート研修施設を公開

三菱ふそう:eキャンタースペシャリスト養成施設 eLab公開
三菱ふそう:eキャンタースペシャリスト養成施設 eLab公開全 18 枚
電動化対応のためのエコシステムを説明するアレキサンダー・ルーシング氏(チーフ・トランスフォーメーション・オフィサー)電動化対応のためのエコシステムを説明するアレキサンダー・ルーシング氏(チーフ・トランスフォーメーション・オフィサー)

世界的に車両の電動化が進んでいる。多くのオーナードライバーにとってEVはまだ自分に関係ないと思っているかもしれないが、EVはむしろ軽を含む商用車から進む可能性がある。

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なぜなら、流通業界は、一般的なコスト削減や経営課題に加え、未曾有の需要増に対し、ドライバー不足、生産性向上、カーボンニュートラル・環境負荷低減といった問題にも取り組まなければならないからだ。この問題には、車両の燃費や運動性能だけでは対処できず、統合的なソリューション、つまり新しいビジネスエコシステムが必要だ。

●商用車こそ求められるCASEエコシステム

乗用車市場だけを見ていると、オーナーの脱炭素やEVへの関心は薄いが、旅客輸送・物流業界からすると、グローバル展開においてカーボンニュートラルに対する取り組みは無視できない。車両のランニングコスト削減、ドライバー不足解消、稼働率の向上、遅配やミスの削減といった経営課題に、CASE車両の活用は必須項目ともいえる。

とくに事業車両の場合、単にクルマに通信モジュールを乗せてEVにすればいいというものではない。車両単体ごとの情報をリアルタイムで収集・蓄積し、最適な配車・集配、メンテナンスを含む運行管制を行うデータプラットフォームまたはビジネスプラットフォームが欠かせない。

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また、CASE車両はランニングコスト(メンテナンス、燃料・電気代)は下がるが、初期投資は既存車両より割高になる。車両販売や所有のスキームも単なる資産購入からリースやサブスクリプションへとシフトしている。サービス網もディーラーや代理店だけでなく、オンライン販売、移動メンテナンス、オンラインサポートといったニーズに応えていく必要がある。

●コネクテッド:トラックコネクトとwise systems

ダイムラーグループである三菱ふそうトラック・バスは、国内商用車市場の中でDXやCASE車両への取り組みに積極的だ。(バッテリー)EVの中型トラック『eキャンター』は2017年から市販を開始しており、すでに世界中で300台以上が(実験ではなく)実務で稼働している。世界中のeキャンターは三菱ふそうの「トラックコネクト」でつながっており、車両ごとの走行履歴が集められ、予防メンテナンス、フィールドメンテナンス、ルート選定のアルゴリズム、安全運転や電費の改善、車両そのものの性能改善などに役立てられている。

wise systems:オペレーターダッシュボードwise systems:オペレーターダッシュボード

ラストマイルのフリート管制には「wise systems」を7月にリリースしている。wise systemsは、三菱ふそうの内製ではなくパートナー企業のソリューションを三菱ふそうがシステム構築を含めたリセールを行う。ERPや既存業務システムとも連携できるので、注文に応じた当日各車の配送最適ルートの設定、画面操作によるスケジュールの組み替えとそのシミュレーションも可能だ。

導入効果として、走行距離の15%短縮や配送遅延の80%削減というデータが公開されている。燃料の節約や年間のCO2削減量といったデータも可視化される。このようなデータは、しばらくの間、公募や入札の加点になる場合がある。

●ファイナンス:マイレージリース

内燃機関車両に比べて価格が高くなるEVでは、補助金や融資だけでなく、リースやサブスクリプションのような購入形態が有効とされる。事業用車両については、ローンやリースが一般的である。加えて、定期的なリプレース、設備刷新などを考えるとサブスクリプションも一般乗用車より移行しやすい。

「マイレージリース」は、月額固定の基本料金に、その都度の走行距離に応じた従量課金でeキャンター(他トラック)を使用できるサービス。料金には車両のリース代金、メンテナンス費用、保険費用がすべて含まれる。通常は、平均的な走行距離を考慮してリース料が決まるが、マイレージリースでは、リース料を月額固定部分と走行距離に応じた課金部分に分けて考える。繁忙期の売上の差が大きい場合、コストメリットは大きくなる。

このサービスはまだパイロットサービスの段階なので、最終的な料金体系は発表されていないが、仮に基本料金が6万円、走行課金が7円/km、走行距離が5000kmだとした場合、その月のリース料は9万5000円(6万+7×5000)という例が示された。

●EVスペシャリスト育成:eLab

カーボンニュートラルやCASE車両に対して、物流業界からニーズがあるとして、メーカーやディーラーがそれに対応できなければ意味はない。メーカーやディーラーもEVやサブスク販売、さらには高度化する物流業界課題へのトータルな提案を行う必要がある。

eLabeLabeキャンターの構造と高圧配線作業シミュレータeキャンターの構造と高圧配線作業シミュレータ

この部分への三菱ふそうの答えは、国内5か所のカスタマーエクスペリエンスセンターのうち川崎に新たに開設した「eLab」だ。カスタマーエクスペリエンスセンターでは、「FUSOアカデミー」が、すでにエンジニア、整備士、営業マン向けに各種セールス研修や技術講習を行っている。eLabでは。EVの動作原理から特性、高圧ラインの扱い、AC/DC・DC/AC変換、DC-DCコンバーターの知識などコンポーネントごとのカリキュラムとトレーニング機材(シミュレーターやパッチボード)が整備され、EVに関する講習を行う。2022年には喜連川研究所にもeLabが設置される予定だ。

講習は、三菱ふそうの従業員、直営ディーラーの営業マンや整備士が主な対象となる。eLabでeキャンターの構造やメンテナンスを学んだ受講生は「eMobilityエキスパート」として各拠点でEVスペシャリストとして活動する。他の従業員にEVの知見を広めたり、顧客や市場へのEVアンバサダーとしての役割を担う。

すでに国内65拠点に対して講習を実施済みで、2022年Q3までに70か所の販売拠点の営業職にも実施する予定だという。

●充電網の整備支援

eキャンターはCHAdeMoに対応するので、国内の主要急速充電器を利用することが可能だ。しかし、ルート配送やラストマイルでは経路のでの急速充電は非常用であり、基本は拠点で待機中に普通充電(AC)または急速充電(DC)を行う。

そのため、三菱ふそうでは、250の販売拠点のうち190の直営ディーラーについては配備計画をたてており、鋭意設置中だという。物流事業者は、トラックターミナルや自社ステーションに充電器が必要となる。普通充電器は簡単な工事でAC200V 3~9kWのものが設置できる。

急速充電器は、必要に応じて20~90kW出力のものを自社で設置することになるが、三菱ふそうでは、事業規模、利用形態、EVの保有台数などによって設置台数や出力の相談・アドバイスを行っている。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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