損害保険ジャパンが自動運転に取り組む理由…『安心・安全なレベル4の世界』

SOMPOが目指す安心・安全な自動運転レベル4の世界
SOMPOが目指す安心・安全な自動運転レベル4の世界全 10 枚

損害保険ジャパンは12月14日、第6回『SOMPOが目指す安心・安全な自動運転レベル4の世界』と題し、自動車の自動運転についてのオンライン説明会を行った。

説明会では、損害保険ジャパン、リテール商品業務部自動運転タスクフォースリーダーの新海正史氏が解説を担当。新海氏は、損害保険ジャパンに属しながら、ティアフォーという自動運転OS開発ソフトウェア開発会社にも兼務出向しており、一般社団法人新宿副都心エリア環境改善委員会西新宿スマートシティTFにも所属している。

◆自動運転が増えると保険会社はなくなってしまう?

新海氏は最初に、よく質問で、自動運転技術が進化していき、世の中に自動運転車が増えた場合、自動車保険と自賠責保険の収入が6割を超える損保ジャパンは収入が減ってしまうのではないかと言われるが、その部分についてはネガティブに捉えていないと回答した。

自動運転は交通事故が削減されるだけではなく、さまざまな社会課題解決につながり社会価値を提供するものであり、損保業界としてこれを否定するものではないと考えている。むしろもっと関与していき、新しい価値提供というものに関わっていきたい。さらに新しい保険商品を作り上げていきたいと考えているとのこと。実際に自動車保険の役割というのは、被害者が迅速に救済される事を第一に考えられていたが、事故に遭われる方が10人のひとりであるとすると、9人にとってはお守りになってしまっている。しかもそもそも誰も起こしたくない事故後に、ようやく損害保険会社は姿を現すといったことが特徴だった。

そういった現状をふまえ、「これからのテクノロジーの進化や、社会変化期を見据え、走る前、乗る前の安全や安心に関わるといった自動車保険というものを作り上げたいと思っている。これまでの自動車保険で蓄えてきた事故データなどは、開発メーカーや社会に還元するような形で我々ならではの安全・安心を提供するポジションをつかんでいきたいと考えている。今回はその取り組みについても紹介していきたい」と語った。

自動運転が社会に浸透するには3つの条件があるとのこと。自動運転が社会に浸透するには3つの条件があるとのこと。

◆自動運転には事故データも役に立つ

新海氏は、自動運転が社会に実装するための条件は大きく3つだと考えていると語った。

「ひとつ目は技術が進歩すること。ふたつ目が、法制度がしっかり整うこと。そして何よりも大事なのが、これは使えるよねという形で、皆さんから安心して使えると思っていただけるようになり、社会受容性が高まることだ」

「その中で、保険会社単独で役に立てるところは社会受容性になる。保険制度があるから万が一の時は大丈夫ですよというところにとどまっている。しかし実証実験などに参加したりするうちに、こうあるべきだということを、もう少し声を大きく法制度にも提言したい、そしてまだまだこれじゃ足りないという技術部分についても、提案など様々な形で関わっていきたいという思いがあり、ティアフォーという会社と業務提携した」

「そして現在は、さらに踏み込んで資本提携まで進めている。資本提携によって関連会社化という形になれば、より深い関係になり、一体となってプラットホームを作ろうと日々取り組んでいる。自動運転車両の開発に我々のノウハウや事故データを活用し、安全性、信頼性の高い自動運転車が世に出るサポートをしたいと思っている。また安全に運行していくことにも、我々のデータをいかしていきたい」

損害保険ジャパン、ティアフォー、アイサンテクノロジーは、業務提携を行ない自動運転のソリューション開発を行っている。損害保険ジャパン、ティアフォー、アイサンテクノロジーは、業務提携を行ない自動運転のソリューション開発を行っている。

現在、損保ジャパンは、ティアフォーとアイサンテクノロジーの2社と業務提携している。ティアフォーは、自動運転車を動かすソフトウェアを開発している会社だが、世界で類のない、完全オープンソースの自動運転OS『Autoware』を開発している。20カ国以上、500社以上の導入実績がある。「The Autoware Foundation」という開発を推進する国際団体も立ち上げている。台湾の鴻海精密工業が開発するEVプラットホーム上の自動運転機能についてはティアフォーが担当することに決定した。

アイサンテクノロジーは、もともとは測量会社で最近では立体地図を作っている企業。この技術を使って自動運転車の地図を提供しており、この地図情報は損保ジャパンにとっても非常に活用範囲が広い技術とのこと。

この3社は、それぞれの強みを生かした業務提携により、『Level IV Discovery』というソリューションを共同開発するということで、行政や自治体も巻き込んでの開発を進めている。

具体的なソリューションについて新海氏は、3つのサービスをパッケージ提供したいと述べた。「ひとつ目がリスクアセスメントで、事故を防ぐということ。ふたつ目がコネクテッドサポートセンターによる不安を除くということ。最後に、事故に備える自動運転専用の保険という3つのソリューションを考えている」。

事故を防ぐ技術として、自動車保険契約、事故データなどを開発会社に提供する。事故を防ぐ技術として、自動車保険契約、事故データなどを開発会社に提供する。

◆事故情報を次の事故防止に役立てる

「リスクアセスメントについては、自動運転技術というのは一定の場所だったり、決められたルートを自動で走っていく技術になるので、我々が持っている事故データが活用できるのではないかと考えている。自動運転車を走らせようとしているルート上に、過去どのような事故があったのかというものを提供できるので、テクノロジーを開発する企業は、その事故情報をもとに、その事故を回避できるのかという検証を繰り返して安全性を高めることができる」

「またリスクアセスメントの高度化も進めている。例えば3次元地図を使えば、PC上で道路の幅を測量でき、実際の道路で測る必要はない。勾配についても、緩やかな上り坂と下り坂といった曖昧な表現ではなく、正確に何度の傾斜だといった情報が得られる。そのほかにも、自動運転車は衛星情報を使って走ることが多く、衛星情報との誤差がどれくらいあるかといった情報もテクノロジー会社と組むことによってリスクアセスメントとしてリスクの提示ができるようになっている

「AIを活用するといった取り組みもすでに始めている。走行時の映像データからAIで危険箇所を抽出し、最終的には言語化するといったことを行っている」

無人の自動運転車なので、事故を起こした際に、もし乗客がいた場合にどうするのかなど、安心感を与えるサポートサービスを展開する。無人の自動運転車なので、事故を起こした際に、もし乗客がいた場合にどうするのかなど、安心感を与えるサポートサービスを展開する。

◆遠隔操作する人間のサポートも保険として必要になる

新海氏は、自動運転車は無人で運転しているが、実際には人間が遠隔で走行の監視をしている、と指摘する。「そしてもし事故があった時、トラブルがあったとき、自動運転車だと乗っている人はどうすればいいのかわからない。また遠隔の監視者にトラブルが発生した場合、他の自動運転車両が安全に運行できないという問題がある」。こういった問題を対応する事業者が必要になるので、損保ジャパンが手を挙げているところだ。

「我々の手動運転でも対応しているコールセンターが自動運転車にも対応するように発展させていきたいと考えている。さらに自動運転車においては、車載車両から送られてくる通信データを元に、お客様に必要とされるサポートを能動的に提供していくようなサービスが提供出来ないかと、日々取り組んでいる」

「自動運転専用保険」について新海氏は、法整備・社会制度整備によって、自動運転車は誰が責任を持つことになるのかを見守っている段階だ、という。「どういう検討をされているのかも注力しながら、勉強しているところだ。今の状況ではまだまだ運転手が存在する状態なので、レベル0~4の自動車が混在する当面の間は、自賠法に基づき、損害賠償責任を運行供用者に負わせるといった従来通りの自賠責保険から支払いが行われる」。こういったこともあり、保険の部分については最後のソリューション開発になると考えている。

現在は、現行の自動車保険で対応可能だが、未来のために自動運転専用保険の開発なども視野に入れているとのこと。現在は、現行の自動車保険で対応可能だが、未来のために自動運転専用保険の開発なども視野に入れているとのこと。

◆自動運転車が走り回る時代はすぐそこに来ている

最後に新海氏は、自動運転がいつ始まっていくのか、そして自動運転に投資する意味についても触れた。

「自動運転車はいつ頃実現するのか。そんなに先の話ではない。ヤマハ発動機とティアフォーの合弁会社であるeve autonomyは、来年の7月には工場内の搬送ソリューションを提供するとリリースしている。このように、工場などの敷地内では自動運転車が当たり前のように走るという時代が来ている。公道とは違うとはいえ、こういった新しいものが世に出たとき、保険はどうあるべきかということは、我々が今、開発会社の皆様とともに研究しているところだ」

「弊社社長の西沢も話しているが、自動運転は完璧でなく事故はゼロにはならない。そして新しいものが登場した場合、責任の所在というのが曖昧になるので、保険を提供する仕組みをしっかりと作っていきたい。新しい技術が世に出てから対応するのではなく、開発段階から関わって、開発にも貢献し、サービスが開始されたときに、インフラ会社のひとつとして保険サービスをいち早く提供できるように自動運転には投資している」。そう締めくくった。

(イメージ)(イメージ)

《関口敬文》

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