女子だらけのレース『KYOJO CUP』に女子編集部員が潜入取材!

KYOJO CUP 最終戦
KYOJO CUP 最終戦全 32 枚

皆さんは、『KYOJO CUP』をご存知でしょうか?「KYOJO」とは競争女子略して「競女」とした造語です。漢字で書けば一目瞭然。文字が示すごとく女性同士が競うレースとして今注目を浴びているのです。

KYOJO CUPは、ルマン24時間レースで日本人初優勝を飾った元レーシングドライバーの関谷正徳さんが主催する「女子に限定」したレースイベント。2017年から始まり今年は5シーズン目となっています。

「モータースポーツはなかなか女性が活躍できる機会がなかった。社会的にジェンダー平等という目標がある中、女子プロゴルフが確立してきたように、モータースポーツにもジェンダー平等を実現していかなければならない。賞金や環境作りなど、KYOJOはその先駆け。もっと盛り上げていきたい」と関谷さんはKYOJOに対しての思いを語っています。

過去には、初代チャンピオンの小山美姫選手や三浦愛選手など有名レーサーを輩出しているKYOJOでは、レベルの高いレースが繰り広げられていますがそれもそのはず。毎年シーズンが始まる前に厳選なるオーディションが開催され、来シーズンのシート争いが行われるのです。KYOJO CUPに参加している=生え抜きの女子レーサーというわけですね。

予選ではただ一人2分切り!

2021シーズンのKYOJO最終戦は12月12日(日)に富士スピードウェイで開催されました。当日のタイムスケジュールは、朝7時50分~8時15分に予選が行われ、一番路面が冷えている難しい路面コンディションでのタイムアタック合戦が展開。早速、辻本、下野、翁長、荻原、猪爪選手といった表彰台を争うトップグループのタイムは2分0秒台!での超ハイレベルな戦いとなり、順位が激しく入れ替わります。残り約3分前、辻本選手が1分59秒922をマークし、ただ1人2分切りを果たし、予選が終了しました。

KYOJO CUP 最終戦KYOJO CUP 最終戦

決勝は当日のお昼。当日に予選と決勝を行う「1DAYレース」形式なので、どの選手もピリピリした緊張状態でスタート時刻を待ちながら、レースの戦略やイメージトレーニングに予念がありません。選手の表情はアスリートそのもの。まさにプロ・レーサーとしての自覚と責任、集中力を皆さん発揮されているのだなと、ただただ感心させられます。

ポールポジションを獲得した辻本選手は「決勝はスタートが大事!富士スピードウェイはストレートが長く、スリップを使われるとオーバーテイクされてしまうので、1周目になんとかギャップを築いて戻ってくることが重要」と話しており、スタートから目を離せないレースになることを予感させてくれます。

KYOJO CUP 最終戦KYOJO CUP 最終戦

そして、グリッドに並んだ色華やかな全16台のVITAマシンとKYOJOドライバーの皆さん。観ているこちらの方が足がすくむほど緊張してきました。1周のフォーメーションの後、スタートグリッドに並び、F1と同じようにスタートシグナルのブラックアウトでレーススタートです!

チャンピオンをかけた白熱の決勝

辻本選手はスタートを決め、1コーナーをトップでクリア!作戦通り1周目にギャップ(差を広げること)を築こうと速度をあげていきます。しかし、その後方ではシリーズチャンピオンを争う選手達も必死の走りで3台が横並びとなる激戦模様。その中からチャンピオンに向けては優勝が絶対条件となる下野選手がヘアピンコーナーで鋭いオーバーテイクを見せ、最終コーナーまでにトップ辻本選手の背後にピタリとつけてストレートに戻ってきました!少し間隔をあけて3番手以降は団子状態でスリップストリーム合戦!2周目の1コーナーでは下野選手が辻本選手を追い抜いてトップに立ち、既に混戦模様です。

KYOJO CUP 最終戦KYOJO CUP 最終戦

最終戦の今回は優勝ポイント、最速タイムポイント、入賞ポイントなどでシリーズの順位が決まるため、各選手とも順位、ポイントを計算しながら、最高の結果を求め走ります。ピットクルーもサインボードで順位を表示し、選手に情報を応援を送っています。チームがひとつとなる雰囲気はモータースポーツの醍醐味を全て現していると感じさせられました。KYOJO CUPの各選手に対して「レース好き女子仲間」という親しみが感じられるからこそ余計に、感情移入の度合いも強くなります。観戦しているファンの方々も「推しメン」ならぬ「推しJO」がいるようで、追い抜きシーンではレースの熱に負けないほどの声援が飛んでいました。

KYOJO CUP最終戦 1位 翁長実希、2位 下野璃央、3位 辻本始温KYOJO CUP最終戦 1位 翁長実希、2位 下野璃央、3位 辻本始温

レースは、8番手グリッドからスタートして驚異の追い上げを見せた翁長選手が優勝!沖縄出身女子レーサーという翁長選手は、前日におこなわれた男性も混走するVITAレースでも優勝したほどの実力の持ち主。2位は序盤にトップを快走した下野選手、3位は予選トップの辻本選手の順でした。

この結果、シリーズ優勝は辻本選手が獲得。新チャンピオンに輝きました。

シリーズチャンピオン 辻本始温シリーズチャンピオン 辻本始温

辻本選手「今年チャンピオンになれた理由の一つに、メンタル面の強化が挙げられます。色々と学んだことによりシーズンを通してどんな状況になってもあせらずにレースすることができました。もっとKYOJOというレースを一般の方々にも知ってもらえたら嬉しいし、来年は今シーズンのKYOJOで学んだことを活かして、またどのカテゴリーに行ったとしてもチャンピオンを獲れるように頑張りたいです!」

とにかく女子のレベルは凄く上がっている

関谷正徳氏関谷正徳氏

関谷さん「世界的にみても女子だけのKYOJO CUPは珍しい取り組みで注目されているよ。ここでチャンピオンになった小山美姫選手はワールド・ウーマンシリーズで日本代表として頑張ってくれているし、ジェントルマンレーサーと組んで競争する「インタープロトシリーズ」では今橋彩佳選手がデビューイヤーで優勝したりね。今シーズンは、技術的なレベルもアップしてきて、さらに質の高いレースを繰り広げてくれるようになったのが一番の嬉しい出来事かな。とにかく女子のレベルは凄く上がっている。伊緒菜さんも取材だけでなく参加してごらん」

…ということでオーディションに参加することになりました(笑)編集長の許可が下りたら、参加レポートをお伝えしたいと思います。

レース車に使用される『VITA』とは?

VITA-01VITA-01

日本のレースカーメーカー(コンストラクター)としては老舗となる「ウエスト・レーシングカーズ」が開発して販売しているレースカーの完成車です。セミモノコックフレームにトヨタ・ヤリス/ヴィッツの1.5リットル自然吸気エンジンと5速マニュアルトランスミッションをミドシップに搭載する本格的なレースマシン。車両本体価格は355万円から(エンジン、トランスミッションは別)で、入門カテゴリーとしても人気があり、国内だけでなく東南アジア各地でシリーズ戦が組まれています。

VITA-01VITA-01

私もシートに座ってみたのですが、ステアリングは小さめで、シフトは右側にあり重め、スリーペダルでペダルの間隔はかなり狭い作りとなっていました。市販車しか乗ったことないので運転が難しそうだと驚きましたが、ドライバーの皆さんに話を聞いてみると、「最初は乗れるか心配だったけど、入門カテゴリーだけあってすぐ乗りこなすことができて楽しい車だよ!」と話していました。

VITA-01 エンジン 1NZ-FCVITA-01 エンジン 1NZ-FC

今回取材したKYOJO CUPでは、同じ女子とは思えないレベルの高いレースにただただ圧倒されるばかりでした。男子とは骨格も体力も「差がある」と捉えず「違い」と捉え、女子がプロレーサーとして何ができるか、どんな強みを引き出すことができるか、そしてモータースポーツにどのような形で貢献できるかを模索しながら一つのカテゴリーとして確立していく過程に今あるのだということを考えさせられたのでした。

KYOJO CUP 最終戦KYOJO CUP 最終戦

《渡邊伊緒菜》

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