新連載[ハイエンド・カーオーディオへの誘い]スピーカー…なぜ高価格? どんな音?

フォーカル・Utopia Be ULTIMA
フォーカル・Utopia Be ULTIMA全 7 枚

カーオーディオ市場には、高級な製品があまたある。それらは入門機とは何が違い、そしてどのような魅力があるのかを考察している当特集。第2回目となる当回では、「ハイエンド・スピーカー」に焦点を当て、それらがハイエンドたり得ている理由と実力について考える。

コストをかければかけるほど、スピーカーの性能は上がっていく!?

前回は「ハイエンド・メインユニット」にスポットを当てたが、「ハイエンド・メインユニット」とスタンダードなメインユニットとの価格差は、他のユニットと比べると実はそれほど大きくはない。ざっくり10万円から20万円ほどだ。対して今回テーマに挙げるスピーカーは、エントリー機から超高級モデルまでの価格差が相当に開く。入門機は1万円前後からあるが、超高級品ともなると100万円を超えてくる。

さて、なぜにここまでの価格差が生まれるのだろうか。その理由は、「コストをかければかけるほど性能を上げられるから」だ。スピーカーは仕組みは案外シンプルだ。発明された約100年前から基本原理は変わっていない。そういうものはえてして、材質や精度にとことんこだわると、どこまでも高性能化していく場合が多い。

違いが出やすい部分はどこなのかを具体的に説明していこう。まず挙げるべきは振動板素材だ。これには、軽さ、硬さ、そして適度な内部損失(響きにくさ)が求められるのだが、これらは実は相反する要素だ。あちらを立てればこちらが立たなくなるという“トレードオフ”の関係にある。そしてそのようなわがままな要求を高次元で満たすものを探していくと、希少な素材へと行き着く。どこにでもあるような素材には、このような性質を持つものがほとんどないのだ。

ちなみに振動板素材として理想的な素材の代表格と言えば、ダイヤモンドが挙げられる。しかし、ご存知のとおりダイヤモンドは高価でしかも加工が難しい。なおこれが用いられているホーム用のスピーカーは存在し、当然ながら超高級機だ。

かけたコストは確実に音に反映される。どのような音になるのかと言うと…。

その他の部分もしかりだ。フレームにも高額な素材が潤沢に使われることは多く、磁気回路の磁石や導線にも高級素材が使われたり、難しい加工法により作り上げられたりする。そしてさらには、組み上げる工程においてたっぷりと手間がかけられることもある。手間を(時間を)かければかけるほど精度が上がりそれが音にも効くのだが、これも価格を引き上げる要因の1つとなる。

さて、このように多くのコストがかけられた高級スピーカーからは、どんな音が聴けるのだろうか…。

良さのポイントはさまざまあるが、まず挙げるべきは「情報量」の多さだ。情報量が多いというのはつまり、録音の現場に存在していた音を余すことなく再現できるということを意味する。かくして響きの成分も十二分に再現されるので音が豊潤になる。そしてリアリティも増す。欠如する要素がほぼなくなるからだ。実際の演奏を聴いているかのように生々しい音になる。

また「解像度」が高まる。なので、サウンドがきめ細やかで滑らかになる。さらには「ダイナミックレンジ」も上がる。これはつまり、小さな音と大きな音の差を大きく再現できるという意味だ。結果、抑揚がつくので演奏の表現力や説得力も上がる。

そしてさらには、「感動力」も上がる」。楽曲の世界に引き込む力が強まり、楽しい曲では楽しさを切ない曲では切なさを目一杯感じさせてくれる。あるいは癒しの力も増してくる。

ところで、高級機になればなるほど各部が大型化する傾向が強まる。物量が投じられることになるからだ。なので取り付けコストも上がってしまうが、それは宿命だと割り切られることが多い。なぜならば、そこにもしっかり予算を投じないと製品の良さを引き出し切れないからだ。そうしないと宝の持ち腐れになりかねない。実際、手をかければかけるほど得られるサウンドの質は確実に上昇する。

超高級の代表格を紹介! フランスの名門“フォーカル”は…。

では、高級スピーカーにはどのようなものがあるのか、その代表格を紹介しよう。まずはこちら、フランスの名門“フォーカル”は、フラッグシップモデルとして『Utopia Be ULTIMA(ユートピア ビー ウルティマ)』を擁している。当コンポーネントキットの価格はなんと、200万円(税抜)。サブウーファーまでもがペアでセットされていることも高額化している要因の1つだが、それにしても200万円は破格だ。

なお当機は、スペシャルな技術も多々投入されている。特にミッドウーファーの磁気回路部分は写真を見ていただければ分かるとおり、他のスピーカーとは一線を画す独特な構造が採用されている。そしてツイーターの振動板には、高級素材である「ベリリウム」がおごられている。結果当機の音は、あくまで繊細で豊潤で力強い。

また、イスラエル発の実力スピーカーブランド“モレル”は、旗艦ラインとして『SUPREMO(スプリーモ)』シリーズを持つ。価格は、パッシブクロスオーバーネットワークを付属する2ウェイコンポーネントキットで80万円(税抜)だ。2ウェイキットとしては最上級の価格と言える。

当機にも、さまざまな先進テクノロジーが注入されている。例えば、磁気回路に用いられている導線には六角形のヘキサゴンハニカム構造が採用されていて、これにより線と線の間に発生し得るすき間が構造的になくされ、迅速で精密な前後運動を行える。また、ミッドウーファーの振動板には、独特な複合構造を持つカーボンファイバーが使われていて、軽量かつ高強度。ゆえに、音源に含まれた情報を余すことなく再現できる。

当機が奏でるサウンドまた、独特のコクと豊かさに満ちている。これでしか得られないリッチな音を満喫できる。

ここまでの超高級品には簡単には手を伸ばし難いが、そのサウンドを体験する価値はすこぶる大きい。試聴の機会に恵まれたら、お聴き逃しのなきように。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

超高級スピーカーはなぜ高い? どんな音? 魅惑の「ハイエンド・カーオーディオ」への誘い 第2回

《太田祥三》

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