冬に増える救助依頼はガス欠・立ち往生・追突事故:ドライバーにできること

雪道(イメージ)
雪道(イメージ)全 5 枚

年末年始の休暇にあたって、損保ジャパンが冬場の事故や雪によるトラブルについて注意喚起のリリースを出している。損害保険会社は、車両保険について事故や故障のロードサービスを提供しているところも多い。JAFだけでなく保険会社のロードサービスでも冬場は救援依頼が増えるそうだ。

オミクロン株の猛威によって再び予断を許さない状況だが、今年は年末年始の帰省を考えているのではないだろうか。冬場の長距離ドライブではどんなトラブルがあり、どんな注意が必要なのだろうか考えてみたい。

◆今年も発生必至? 大雪立ち往生

冬ならではのトラブルはやはり積雪や路面凍結などだろう。都市部の急な着雪は夏タイヤによる立ち往生や放置車両による渋滞・交通麻痺のほか、通行止めやスリップ等による事故も多発する。年末年始の帰省のように慣れないドライバーが長距離を運転することもこれらのリスクを高めている。しかも、今年はラニーニャの影響で断続的な寒波の到来が予想されているといい、コロナ禍で2年ぶりの帰省となる人もいるだろう。

昨今、話題になるのは大雪による立ち往生だ。大雪で動けなくなった車両が高速道路や幹線道路を塞ぎ、後続車も身動きがとれなくなってしまう。タイヤが埋まるような積雪量の場合、冬タイヤでも方向転換が困難となり、来た道に戻ることさえできなくなる。

立ち往生した車の最大のリスクはガス欠および電欠だ。立ち往生が長時間に及ぶ場合、暖房手段がなくなり最悪生死にかかわる。また、ガス欠・電欠すると、道路が開通しても給油や充電を受けなければ移動できない。ここでよく誤解されるのは、「ガソリン車なら立ち往生でも安心。電気自動車は立ち往生で凍死」という言説だ。感覚として正しいように見えるが、暖房が使えなければ寒さに難儀するのは、ガソリン車も電気自動車も同じだ。

ガス欠(イメージ)ガス欠(イメージ)

◆電欠より怖いリスクとは?

エアコンを効かせるとバッテリーがすぐになくなるというの間違ってはいないが、ガソリン車もエアコンで燃料を消費する。長時間の立ち往生に対応できるかどうかは、そのときの残量しだい。ようは、燃料やバッテリーの消費の仕方の問題。ガソリン車でも状況が見えないならエアコンの稼働を調整するように、電気自動車もシートヒーターやヒートポンプ式エアコンなど調整できる要素は多い。なにより有効なのは毛布や防寒具だ。

むしろ危険なのは、「うちは電気自動車じゃないから立ち往生も怖くない」という間違った認識だ。大雪の立ち往生や冬場の車内泊でもっとも注意しなければならないのは、一酸化炭素中毒による死亡だ。餅が老人の正月凶器であるのと同様、エンジンかけっぱなしの雪中車中泊は自殺行為と言っていい。ガソリンが満タンでも定期的に換気やマフラーの除雪をしなければならないなら、ヒーターやエアコン、電気毛布を調整しながら一晩過ごすほうが快適かもしれない。

スタッドレスタイヤ(イメージ)スタッドレスタイヤ(イメージ)

◆スタッドレス交換が面倒ならオールシーズンタイヤ

立ち往生の先頭は、おそらく急な降雪・着雪によってスリップしたりスタックしたり、あるいは事故によって道を塞いだ車両だろう。夏タイヤ、チェーン非装着であることも立ち往生の原因となる。そうならないためには、雪や低温を甘くみないことがもっとも重要だ。そもそも、雪道や凍結路でタイヤやチェーンなどを準備していない時点で、冬の道を甘く見ている証拠だ。

甘くは見ていないが、スタッドレスタイヤへの交換が面倒くさい、タイミングを逸したというのが現実かもしれないが、そういう人には「オールシーズンタイヤ」がおすすめだ。オールシーズンタイヤは、スタッドレスタイヤの機能を持ちながら、雪以外のドライ路面、ウェット路面でも通常のタイヤ並みの性能を発揮できる。冬季、着雪が数日くらいしかないような地域は、スタッドレスを持たずとも普段のタイヤをオールシーズンタイヤにすれば、タイヤ交換時期になやむことはなくなる。移動中の急激な天候悪化にも余裕が生まれる。

スタッドレスタイヤやチェーン以前の問題として、雪道でドライバーが注意すべき点もある。雪の降り始めにまだいけると思っていると、信号やすれ違いで一度停止するとスリップでそれ以上登れなくなることがある。走れるからまだ大丈夫は素人判断だ。グリップが落ちた、怖いと思ったら早めの判断(引き返す、チェーン装着)がベテランの証だ。

◆スタッドレスもチェーンが必要

よくある誤解はまだある。スタッドレスタイヤならチェーンは必要ないと思っている人がいる。豪雪地域の国道や高速道路の一部は、天候によって「チェーン規制」がかかることがある。この場合、スタッドレスタイヤでも金属、ゴム等のチェーン装着が義務付けられる。装着していなクルマは通行できなくなる。

法的な問題がなくても、スタッドレスでは動けなくなる状況もある。日本のスタッドレスは氷雪性能に優れているが、半面新雪や深い雪に弱い傾向がある。やわらかく水気の少ない雪が深く積もった道だと、スタッドレスでは十分なグリップを発揮できず、チェーンを必要とする場合がある。

タイヤチェーンタイヤチェーン

◆サイズ確認と装着練習

チェーンを購入する場合、タイヤサイズとチェーンの適合サイズをよく確認すること。わからない場合はディーラーや量販店によく聞いて正しいものを購入する。スタッドレスタイヤやスノータイヤは、ノーマルサイズより幅を狭いものを装着することがある。

これは、チェーン装着と摩擦抵抗が少ない路面で接地圧をかせぐためだ。タイヤサイズとチェーンサイズによっては、夏タイヤと冬タイヤで別々のチェーンが必要な場合もあるので注意する。夏タイヤをスポーツタイヤやインチアップしている場合も同様だ。

またチェーンを購入したら、装着練習を必ずしておきたい。いざ装着となる場合、多くは雪の中など悪条件のことが多い。一度でも装着した経験があれば作業効率はかなり違う。また、サイズ表示だけではわかなり問題の発見にもつながる。たとえばタイヤをインチアップしていたり、ダンパーやサスペンションを交換している場合、チェーンがサス、ダンパー、タイヤハウスなどと干渉することがある。

スキー用手袋スキー用手袋

◆冬季ドライブの御供:電気毛布と段ボールとスキー用手袋

最後に冬季ドライブならではの便利グッズや携行品について考えてみよう。冒頭の立ち往生に関しては、ガソリン車、電気自動車とわず、毛布などの追加防寒具は大いに役立つ。大雪が予想されるドライブなら迷わず積んでおきたい。ACアウトレットのあるクルマなら家庭用の電気毛布も使える。車載用としてDC12VやUSB給電タイプの製品も存在する。

大雪立ち往生ではガソリンの携行缶があればガス欠の心配は減らせるが、現在、ポリタンクはもちろん金属製の携行缶でもガソリンを販売してくれないスタンドが増えている。自治体やNEXCO各社は、給油車や給電車の配備を進めているので、災害級の立ち往生ではこちらを期待したい。

窓は冷暖房の大敵なのは家もクルマも同じである。車中泊では、ホームセンターで手に入る断熱シートも使える。お風呂用の保温シートやエアパッキン(ぷちぷち)なども応用できるし、応急措置としては段ボールなども有効だ。

筆者は使わなくなったスキー用の手袋をチェーンといっしょに積んでいる。スキー用の手袋は防寒に優れ頑丈でもある。手首をすっぽり覆うタイプなら、チェーン装着や雪での作業に便利だ。積もった雪を落とすのにもスキー用手袋は重宝する。

《中尾真二》

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