【VW ゴルフTDI 新型試乗】ようやく出てきた「ゴルフのゴルフたる所以」…中村孝仁

VW ゴルフTDI アクティブ アドバンス
VW ゴルフTDI アクティブ アドバンス全 28 枚

「ベンチマーク」という言葉をこのところ聞かなくなった。VW『ゴルフ』は長い間Cセグメントのハッチバック市場をリードするベンチマークだったはずである。

そのゴルフがある意味でベンチマークの座から引きずり降ろされたのは、やはりディーゼルゲートに象徴されるVWの技術に対する世間の風向きが変わったからなのだろうか。確かに7世代目のゴルフは新たなMQBプラットフォームを使って一新されたものの、それは合理化のなせる業といった囁きもちらほら聞こえ、ライバルの追い上げに対して明確なアドバンテージを持っていなかったようにも感じ取れた。

そして8代目。プラットフォームは同じMQBながらevoの3文字が加えられた。実はこのevoの3文字こそ、8代目ゴルフの真骨頂を語る最大の要素ではないかと思っているのである。

「evo」がついたプラットフォームとエンジン

VW ゴルフTDI アクティブ アドバンスVW ゴルフTDI アクティブ アドバンス

ディーゼル用のプラットフォームはリアに4リンクのサスペンションを持つ方の仕様。とにかくフロントの軸重が重いせいもあって、ハンドリングはガソリンのきびきび感を感じないものの、乗り心地はすこぶる良い。その乗り心地の良さはちょうどゴルフ5からゴルフ6に変わった時のような大きな変化を感じた。とはいえ、基本的にはMQBというアーキテクチャに大きな変化はないのだから、熟成とファインチューニングの賜物なのであろう。

実はevoの付くものがもう一つある。それが「EA288evo」の名を持つ2リットルTDIエンジンである。ゴルフ7の末期になって「EA288」を搭載したディーゼルが日本市場にもお目見えした。しかしながらすでにEA288はある意味で過去のエンジンになった状況での参入。同じ2リットル前後のターボディーゼルを搭載するモデルはメルセデスにもBMWにも、ジャガーにも存在した。それらのモデルはいずれをとっても確実にVWのEA288を上回るポテンシャルを持ち、静粛性とスムーズネスも上だったから、残念ながらそれを手放しで喜べる状況にはなかったのである。また我が国にはマツダ製の素晴らしいディーゼルエンジンもあって、ディーゼルを取り巻く状況としてはEA288はかなり後塵を拝した状況での参入であったことは否めない。

圧倒的なスムーズネスと、圧倒的な静粛性

VW ゴルフTDI アクティブ アドバンスVW ゴルフTDI アクティブ アドバンス

で、今回そのEA288にevoの文字が付いた。まあ、このエンジンの特徴はツインドージングと呼ばれる尿素を2連装する排ガスのクリーン化に力点を置いて説明されているのだが、確かにその点はディーゼルゲートを引き起こしたVWとしては重要な要素に違いないのだが、それよりも重要なのは圧倒的なスムーズネスと圧倒的な静粛性(いずれもEA288比)を手に入れていることにある。

その差はもし新旧を乗り比べることのできる状況にあれば、どんな乗り手でも瞬時に理解できるほどの差といえばわかると思うが、とにかくこれでようやくライバルたちに追いつき、部分的には追い越したといえる立ち位置に付いたといえる。

最大のライバルになるであろうプジョー『308』がもしも現状投入している1.5リットルもしくは2リットルのディーゼルエンジンを引き続き採用しているとしたら、間違いなく勝てる。ヨーロッパのメーカーはどこもEV開発に躍起になっていて、内燃機の開発が疎かになっている(というかすでに止まっている印象すらある)から、この点ではゴルフが再び優位に立つことは間違いないと思う。パワーの絶対値は変わっていないが、最大トルクは引き上げられ、その発生回転数も引き下げられているから、乗りやすくなった印象も顕著だった。

再びCセグメントのベンチマークに復活した

VW ゴルフTDI アクティブ アドバンスVW ゴルフTDI アクティブ アドバンス

装備内容や安全装備の充実は基本的にガソリンモデルと何ら変わることはない。やはりディーゼルに力を入れている印象が強いのは、一気に4グレードを出してきたことにも表れている。今回試乗した「アクティブアドバンス」というグレードはある意味で最もお買い得感の高いグレードで、さらに上級の「スタイル」と比較してみても、あくまで個人的な意見としては、こちらの方がお得に感じられた。

とりあえず、このクルマの登場によってゴルフは再びCセグメントのベンチマークに復活した印象がある。

VW ゴルフTDI アクティブ アドバンスVW ゴルフTDI アクティブ アドバンス

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 世界初の「破壊不可能ホイール」って何だ!? テスラ向けパーツ手掛ける米メーカーが開発
  2. 「ミニGSX-R」をスズキがサプライズ発表!? 鈴鹿8耐マシン以上に「サステナブルかもしれない」理由とは
  3. 待望の新型スズキ『GSX-R1000R』が予告なしの初公開!「3色3様」往年のレーシングカラーで日本市場復活へ
  4. 【ダイハツ ムーヴ 新型】「ポッキー入れ」にイルミネーション、軽自動車でも質感を“あきらめさせない”インテリアとは
  5. リトラと決別した「ワイルド・キャット」、3代目ホンダ『プレリュード』【懐かしのカーカタログ】
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  3. スズキ初のBEVはなぜ「軽EV」じゃない?『eビターラ』開発者が語る「EVの悪循環」と「スズキの強み」
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. ブレンボが新ブレーキ開発、粒子状物質を削減…寿命も最大2倍に
ランキングをもっと見る