【ロータス・デザインの新展開】旧ジーリーのスタジオがSUVデザイン拠点に進化

左からベン・ペイン、ピーター・ホルバリー、ラッセル・カール
左からベン・ペイン、ピーター・ホルバリー、ラッセル・カール全 6 枚

ロータスは1月12日、親会社である中国ジーリー(吉利汽車)が英国中部のコベントリー市に持つデザインスタジオを「ロータス・テック・クリエイティブセンター=LTCC」に改組改称した、と発表した。

このスタジオはジーリーが2019年に、「ジーリー・デザインUK」として開設したもの。当時はジーリーおよび傘下のLynk & Co、プロトン、ロータスなどのデザイン活動をサポートする組織と説明されていた。しかし“やはり”本命はロータスだったのだ。

ピーター・ホルバリーの存在

Lynk & Co 02Lynk & Co 02

ジーリーは2009年にボルボを買収し、元ボルボのデザインディレクターでフォードのデザイン幹部だったピーター・ホルバリーをデザイン統括役員として招聘。ホルバリーはスウェーデンのイエテボリ(ボルボ本社のある街)に新設したデザインスタジオを本拠に、月に一度のペースで中国に出張しながら、ジーリーのグローバルなデザイン組織を築き上げていく。この間にジーリーは新ブランドのLynk & Coを立ち上げ、さらにタイのプロトンとその傘下にあった英国ロータスを買収し、ホルバリーはそれらのデザインも統括するようになった。

ジーリーがロータスを買収したのは2017年のこと。そして昨年4月、すでに71歳になっていたホルバリーは外紙のインタビューに答えて、「今後は現在のジーリーでの立場を縮小し、アドバイザー的な仕事に重きを置いていく。しかし我々が始めたロータスのプロジェクトは、難しいこともあるだろうが、とてもエキサイティングだ。新しいロータスをデザインできるチャンスがあるなら、もう少し現役でいたいね」と語っていた。

ホルバリーは英国北部の出身。イギリス人のカーデザイナーにとって、ロータスをデザインするということが特別な意味を持つのは想像に難くない。92年からボルボのデザインディレクターとして名声を高めたとはいえ、祖国のスポーツカーブランドへの想いは熱かったのだろう。

新スタジオはSUVを担当

昨年9月、ホルバリーはジーリーのデザイン統括の座を、ベントレーのデザインディレクターだったシュテファン・ジーラフに譲り、自らはロータスのデザイン担当副社長に転じた。

これまでロータスのデザイン本拠地は英国東部のノリッジにあった。その責任者は2014年からラッセル・カールが務めており、それは今も変わりない。カールは90年にロータスに入社したベテランデザイナーであり、最新スポーツカーのエヴィージャも彼のデザインだ。

改組改称でコベントリーに新発足したLTCCでは、前身のジーリー・デザインUKから引き続きでベン・ペインがスタジオ責任者を務める。ブガッティやアストンマーティンなどを経て、2018年にジーリーに移籍してきたデザイナーである。

ロータスが予告する「Type 132」のティザー画像ロータスが予告する「Type 132」のティザー画像

このカールとペインを、ホルバリーが副社長として統括する。ノリッジのスタジオはこれまで通り、スポーツカーのデザインを担当。コベントリーのLTCCは彼らが「ライフスタイルヴィークル」と呼ぶSUVをデザインする。

ロータスの発表によれば、LTCCが送り出す第一弾は今春に発表予定の「Type132」というSUV。さらに「Type133」の4ドアクーペ、「Type134」のコンパクトSUVと続く。その一方、ノリッジのスタジオからは「Type135」のEVスポーツカーが生まれるという。

ジーリーの子会社になって、にわかに活気づいてきた感のあるロータス。その背景には新たなデザイン体制がある。ホルバリー率いるロータス・デザインの今後に期待したい。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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