なぜマニアはハイエンド・サブウーファーを使うのか[ハイエンド・カーオーディオへの誘い]

「ハイエンド・サブウーファー」を搭載したオーディオカーの一例(製作ショップ:AVカンサイ<大阪府>)。
「ハイエンド・サブウーファー」を搭載したオーディオカーの一例(製作ショップ:AVカンサイ<大阪府>)。全 11 枚

カーオーディオでは、「理想の音をとことん追求する」という楽しみ方も実践される。ハードルの高い方法論ではあるけれど、得られる満足度も高いからだ。当特集ではその満足度の中身について、詳細に解説している。

わざわざ「サブウーファー」を使うこと自体が、「ハイエンド」的アプローチ!?

今回は、「ハイエンド・サブウーファー」について考えていく。なお、前回スポットを当てた「外部パワーアンプ」は、これを用いること自体がすなわち「ハイエンド」的なアプローチだと説明したが、「サブウーファー」についても同じことが言える。

なぜなら、フロントスピーカーが付いていれば音は出せる。つまり「サブウーファー」は、必ずしも導入しなくても良いのだ。しかも設置場所も取るしコストもかかる。導入のハードルは低くない。しかしそこを敢えて乗り越えようとするわけで、つまりはその行為そのものがスペシャルだ。その意味ではこれも、導入することそのものが「ハイエンド」の第一歩と言って良い。

ところで、必ずしも導入しなければならないものではないのだが、「ハイエンド・カーオーディオ」愛好家にとっては「サブウーファー」はマストアイテムだ。なぜなら、「ドアに装着するスピーカーではローエンドまで鳴らしきるのが難しいから」だ。つまり、フロントスピーカーだけでは音源に含まれている情報のすべてを鳴らし切れていない場合が多いのだ。

というのも、スピーカーは振動板の大きさによって得意な再生帯域が変化する。で、ドアに装着できるスピーカーの大きさには限りがあり、大きくても17cmクラスまでしか付けられない。そしてこの大きさでは物理的に超低音までは再生し難いのだ。

また、装着場所がドアであることも超低音再生を難しくさせている。実をいうと17cmクラスのスピーカーでもものによっては、超低音まで鳴らせないこともない。しかしそうしようとするなら、しっかりとしたボックスに組み付ける必要がある。

ところがドアではそのような役目を負いきれない。完ぺきなスピーカーボックスには成りきれないからだ。そして強引に超低音までを鳴らそうとすると、鉄板が共振しやすくなる。別の弊害が発生してしまうのだ。であるなら超低音再生は、スペシャリストである「サブウーファー」に任せた方が良いのだ。

「ハイエンド・サブウーファー」は、各部に高級素材がおごられ作りも精密!

さて、「サブウーファー」にもさまざまある。その中の「ハイエンド」モデルは、スタンダードな製品と比べてどう違っているのだろうか。

「ハイエンド」たり得る主なポイントは、以前の記事で説明した「ハイエンド・スピーカー」と同様だ。「サブウーファー」もスピーカーであり、構造自体はシンプルで機種間での大きな違いはない。しかし、各部の素材の質や製造上の手間、そして組み上げの精度が異なる。「ハイエンド・サブウーファー」は各部に高級素材がおごられていたり、手間をかけて作られていたりする。

例えば、振動板の素材に高級品が使われることがあり、フレームがアルミを削り出して作られることもある。また磁気回路をより精密化させたり、振動板を多積層化させたりもする。そうすることで、音質性能がどんどん高められていく。そして価格的にも高級化が進む。

かくしてそのように作られる「ハイエンド・サブウーファー」は、スタンダードなモデルと比べて音がどう違うのかというと、主なポイントは以下の3点だ。レスポンスの素速さ、量感、再生帯域の広さ(ローエンドまでの伸び)、これらだ。

ところで「サブウーファー」に対しては、音色的な性能が求められることは少ない。なぜなら、「サブウーファー」が担当する音域の中には、音色を決定付ける「倍音」成分がほとんど含まれていないからだ。

というのも「サブウーファー」は60Hz以下の音を担当することが多いのだが、例えば4弦エレキベースの最低音は約41.25Hzで、その第2倍音は約82.5Hzだ。つまりこの音すらも担当範囲から外れている。ゆえに、音色性能はあまり重要ではないのだ。

注目の「ハイエンド・サブウーファー」を紹介! 各機の特長とは…。

さて、「ハイエンド・サブウーファー」にはどのようなものがあるのかを紹介していこう。まずは人気が高いモデルとして、国産ブランドの2モデルを取り上げてみたい。1つはこちら、カロッツェリアの『TS-W1000RS』(税抜価格:12万円)だ。なお、フロントスピーカーは基本的に左右がセットで売られているが、「サブウーファー」は1発単位で販売されるのが通例だ。

で、当機は、ローエンドまでの伸びとレスポンスの速さに特長がある。主な構造的な特長は以下のとおりだ。一体型3層構造クロスカーボン振動板、無共振化が徹底された亜鉛ダイキャストフレーム、振動板のリニアな駆動を実現する高性能磁気回路。さらには端子に金メッキ真鍮製削り出しブロック端子を採用するなど、細かな部分にもこだわりが注入されている。

もう1つ、三菱電機の『ダイヤトーン・SW-G50』(税抜価格:8万円)も「ハイエンド・カーオーディオ」愛好家からの支持が厚い。当機は、入力信号に対する素速いレスポンス、歪みのない正確な再現力、深く沈み込む低音でありながら明確に音階を表現すること等が性能的な主な特長だ。そしてそれらを実現するキモとなっているのは、振動板に採用されている三菱電機が独自開発したスペシャル素材、「NCV」が使われていることと、強力低歪電磁制動を実現する「マグネサーボ・テクノロジー(MST)」が採用されていること、この2つが特筆点だ。

ところで海外ブランドに目を向けると、高音質を追求した超高級モデルや、パワーにこだわったモンスターモデルまで「超ハイエンド・サブウーファー」がさまざまある。例えば実力アメリカンブランドのロックフォード・フォズゲートは、『T3S2/S1-19』(税抜価格:62万6000円)というド級モデルを擁している(受注生産品)。当機は振動板の口径が48cmもあり、定格入力はなんと3000Wを誇る。文字どおりにケタ違いのパワーを発揮する。このような超強力な「サブウーファー」も、世界には存在している。

今回は以上だ。次回以降も「ハイエンド・カーオーディオ」の魅力をお伝えしていく。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

なぜにマニアは「ハイエンド・サブウーファー」を使うのか…。 魅惑の「ハイエンド・カーオーディオ」への誘い 第5回

《太田祥三》

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