ヤマハ発動機から2台の電動アシスト自転車(eバイク)が登場。グラベルロードの『WABASH RT(ワバッシュRT)』とクロスバイク『CROSSCORE RC(クロスコアRC)』の発表会が行われたが、いわゆる発表会というよりも、トークショー、ライブといった雰囲気の中行われた。

電動アシスト自転車ではなくeバイク。基本的には同じものをさしてはいるが、“eバイク”と言ったときにはそこに“スポーツ”の意味を込めて呼ばれてる場合が多いように思える。この意味で今回発表された2台は間違いなく、スポーツライドが楽しめるeバイクと呼べるものだろう。
コロナ禍によってこれまで以上に自転車に注目が集まっているが、各ジャンルの中でもより多くの人が乗るようになったのがeバイクだろう。5年前に比べると、販売台数が実に5割以上UPという急激伸びを見せている。

日本はおろか、世界的にもユーザーが激増しているeバイクだが、世界に先駆けて生み出したのがヤマハ発動機だ。いわゆるママチャリタイプではあるが、1993年、ヤマハ『PAS』として販売がスタート。
発売後、販売台数はじわじわと増え続けたが、当初は子乗せや高齢者に向けたモデルがメイン。しかし国内外でeバイクを“スポーツ”として使うカルチャーを浸透させるべく、2015年、ヤマハからはYPJシリーズが登場。今ではさまざまなユーザーが色々なシーンでeバイクを使うようになってきている。eバイクの販売台数が激増しているのは、このスポーツで使うという背景があることは見過ごせないところだ。
最新2モデルのポイントは汎用性の高さ

すでにYPJシリーズを発売し、スポーツするeバイクは登場させていたが、その流れを進化させ本格的グラベルライドが楽しめる「ワバッシュRT」がデビューした。
さてこの“グラベル”という言葉は砂利道を意味する。グラベルロードとはその砂利道を含むオフロードはもちろん、オンロードまでも軽快に走れる新しい自転車のジャンル。
使い方としては、通勤・通学、自転車に荷物を積んでの旅行、オン/オフ入り乱れたルートを走って速さを競うレースまで、楽しめる用途はかなり広い。アシスト機能がついていない人力のグラベルロードは、すでに各自転車ブランドから多数登場しているが、eバイクはまだ数が少ない。その未開発なマーケットにワバッシュRTをリリースしてくるあたりは、かなりシーンを先取した展開といえるだろう。「いろいろ使えそう。ONもOFFも。」というコンセプトも頷けるところだ。

もう1台のクロスバイクタイプ、クロスコアRCは「365days,1bike」という、普段使いに最適なeバイクの本流といったジャンル。通勤や買い物など近場のライドはもちろん、週末はロングライドにも出かけられるなど、まさに365日乗れるバイクとなっている。
会場に準備された短い試乗コースで乗っただけではあるが、今回のモデルに新搭載したモーター「PWseries ST」の自然なペダリングが体感できた。クルクルペダルを回す回転数が速めのケイデンスにも対応しているので、よりスポーツしている気にさせてくれる。ドン!と背中を押されるパワーではなくより自然なアシストで、軽く汗をかきながら乗ることができるだろう。

コンセプトモデルはより楽しくを表現

これに加えて今回の展示会では、セレクトショップ「FREAK'S STORE」によるコラボレーションも発表された。FREAK'S STOREプロデュースによるワバッシュRT、クロスコアRCのコンセプトモデルが開発され、一部店舗での展示も行うという。
前述したが、グラベルロードは“旅する自転車”ということで、キャンプをイメージしたワバッシュRTのコンセプトモデルが展示されていた。カスタムのポイントは荷物の積載。フロントやリアにキャリアをセットしソロキャンプなら十分に対応できる荷物が運べる。ワバッシュRTには、そもそもフロント、リアともにダボ穴があるため市販モデルでも同様の使用が可能だ。

これまであまりグラベルタイプのeバイクがなかったことから、その役割はマウンテンタイプのeバイク(以下eMTB)がそれを補完していた。しかし今後はオンロードでの走行性能が高く、eMTBよりも積載力が高いこのようなグラベルeバイクがそれを担っていくだろう。
またクロスコアRCのコンセプトモデルも展示・紹介されていた。こちらは架空のフードデリバリー会社「ピンポンダッシュ」に使われる自転車という設定で、そのユニフォームも開発。実際にこのアパレルはヤマハとのダブルネームでの販売も行われるという。
地に足がついた、真のeバイク元年

今回の展示会に参加して“電動アシスト自転車”ではない“eバイク”の時代がいよいよ来ていると感じた。4~5年ほど前に「eバイク元年が来た!」と騒いだ記憶があるが、そこで騒いでいたのは一部の自転車好き、自転車メディアだけだったかもしれない。そこから数年は街を見渡してもeバイクの姿を見かけることはほとんどなかった。
しかしコロナ禍を経て、街でeバイクを見かけることも増えてきたし、アクティビティとしてeMTBを楽しむツアーも増えている。
何よりも今回の発表会がそれを示している。職業柄ついつい「重量は?」「ホイール径は?」「バッテリーのもちは?」と自転車を見るときにスペックがと気になってしまうが、今回の発表会ではスペックよりも「どう楽しめるのか」が重視されていたと思う。
コンセプトモデルの発表も含めて感覚的に自転車を楽しむことをアピールしていた。自転車好き、マニアのためのものではなく、eバイクは乗ることを楽しむ人のために。
地に足がついた、真のeバイク元年が始まるかもしれない。