【BMW 4シリーズグランクーペ 新型試乗】「パーソナルチョイス」こそBMWの真骨頂…中村孝仁

BMWの中でもパーソナルユース感が強いモデル

シルキー6も時代とともに変わった

とにかくロングツーリングはお手の物

BMW M440i xDriveグランクーペ
BMW M440i xDriveグランクーペ全 29 枚

BMWの中でもパーソナルユース感が強いモデル

1970年代。まだようやくBMWというブランドが日本市場に定着し始めた頃、お堅い大企業の社長さんが乗るのがメルセデス。BMWは個人企業の社長が自らドライブする車、などといわれた。

つまり、バイエルンの空気はそれだけ自由奔放でパーソナルチョイスというか、パーソナルユースのイメージが強いブランドであった。近年メルセデスと肩を並べるハイエンドのブランドに上り詰めたBMWではあるが、依然としてそんな空気感をブランド自体が醸し出している印象が強い。

BMW M440i xDriveグランクーペBMW M440i xDriveグランクーペ

とはいえ、BMWも人の子。グリルをデカくして威厳をつけようとした感があるが、個人的には見事に失敗したと思っている。結果次なる一手として打ち出したグリルが縦に伸ばしたこの『4シリーズグランクーペ』の顔つきである。実は戦後になってもBMWのキドニーグリルは縦に長いものが使われていた。(戦前はすべて縦長)そんなわけだから縦長グリルはある意味では原点回帰である。

まあ、顔の話はこれくらいにして、4シリーズグランクーペは数あるBMWモデルレンジの中でも実にパーソナルユース感の強いモデルだと感じた。非常に整ったサイドビューを持つテールゲート付きの4ドアクーペ風モデル。ある時はゴルフに、またある時は顧客を乗せてディナーにと、八面六臂の活躍が期待できる使い勝手の良さを持っている。それに美しい(個人的には)。

シルキー6も時代とともに変わった

BMW M440i xDriveグランクーペBMW M440i xDriveグランクーペ

さらに言えば、今回借り出した『M440i xDrive』は、かつてシルキー6と呼ばれ、スムーズさの極致ともいわれた直列6気筒エンジンを搭載する。さすがに70年代に味わった極上の直6エンジンと比べると、今の6気筒は力強さが前面に押し出されていて、シルクのような滑らかさとは一味違うものに仕上がっているが、それでも依然としてシルクライクなことに変わりはない。

ただ、最近の自動車メーカー(特にヨーロッパ)は、エンジン始動時に何故か必ずひと吠えする。このM440iも始動時はバォ~!とひと吠えして周囲を驚かす。昔のシルキー6は、ヒュィーン!とそれこそモーターのような感触で回ったものだが、今はかかり始めがそれだから、どうしても荒々しいイメージが先行してしまうのだ。

ただ、荒々しく回り始めたエンジンも落ち着けば往時を偲ばせるスムーズで静かな回転を取り戻す。だから、市街地を流す程度のエンジン回転領域ではこの上なく快適だ。一方で飛ばし始めると、軽快で快適…から野性味と力強さを見せ始める。そんなわけだから、このクルマには明確な性格の違いを場面場面で感じ取ることができるのだ。

とにかくロングツーリングはお手の物

BMW M440i xDriveグランクーペBMW M440i xDriveグランクーペ

今回はおおよそ800kmほどを共にした。最長は我が家からツインリンクもてぎまで往復300kmほどのロングドライブ。時々ACCのお世話にもなったが、とにかくロングツーリングはお手の物で、まったく疲れ知らずだった。

さすがに後席はなだらかにスロープするルーフのおかげで決してゆったり寛げる空間とは言い難いが、まあ必要十分なスペースは確保されていると言っておこう。視界は特に後方は良いとは言えない。そしてもう一つ、サイドミラーは独特な形状にして死界を最小限にする工夫は凝らされているが、やはりAピラー付け根に装備される限り、邪魔な位置であることに変わりはない。どうもこの辺りはデザインの犠牲になっているような気がする。

というわけでおよそ2週間このクルマと共にしたが、やはりパーソナルを絵に描いたようなBMWの真骨頂を感じさせてもらった。

BMW M440i xDriveグランクーペBMW M440i xDriveグランクーペ

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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