【ホンダ ステップワゴン 新型】素敵な“暮らし”を感じてもらう…CMFデザイナー [インタビュー]

【ホンダ ステップワゴン 新型】素敵な“暮らし”を感じてもらう…CMFデザイナー [インタビュー]
【ホンダ ステップワゴン 新型】素敵な“暮らし”を感じてもらう…CMFデザイナー [インタビュー]全 24 枚

ホンダはこの春発売予定の『ステップワゴン』のコンセプトとデザインを発表。ユーザーの志向性に合わせて「AIR」と「スパーダ」という2つの基本仕様を用意し、カラーやマテリアルにおいても差別化された。そこでCMFデザイナーに詳しく話を聞いた。CMFとはCOLOR(色)、MATERIAL(素材)、FINISH(表面加工)のこと。

◆シンプル&クリーンなAIR

本田技研オートモービルセンターデザイン室プロダクトデザインスタジオ研究員CMFデザイナーの唐見麻由香さんによると、AIRとスパーダは完全に世界観を分けているという。

AIRのコンセプトは、「シンプル&クリーンで、自宅のリビングにいるような、子供たちの笑い声が聞こえてくるような雰囲気を目指して色合いやコーディネート。汚れに対するタフネスも考慮した」。

ボディカラーは、「明るくて豊かな生活を想起させるもので、優しくてソリッドライクな色調のフィヨルドミストパールという色をコンセプトカラーとし、シーグラスブルーパールも専用色として用意。グリルモールやオーナメントはクロームで統一し、シンプルでも質の良さを際立たせるようなコーディネートだ」と説明。

インテリアカラーはグレーとブラックの2種類。「ソファのようにざっくりとした生地をシート、インパネ、ドア、サイドライニングにまで用い、リビングのようなリラックス出来るコーディネートになってる」と述べる。また、インパネやドアなど手の触れやすいところには撥水撥油加工が為され、「小さな子供たちは隠れ家のような3rdシートは大好き。そこで1列目と2列目のシート背面にはプライムスムースレザーを用い、後から足でけったり汚い手で触ったりしてもすぐに拭き取れるようにしている」と車内での利便性にも気を使っている。

ホンダ・ステップワゴンSPADA:CMFホンダ・ステップワゴンSPADA:CMF

◆スパーダはスタイリッシュ&クォリティ

スパーダのコンセプトは、「スタイリッシュ&クォリティ。時には自分の時間に浸ることも大切にしたい、成熟したファミリーをイメージ」。そこで、「力強さと上質さを表現するダークカラーを基調にしたコーディネートだ」と唐見さん。ボディカラーは、「スパーダの世界観を表現する暗めの色をラインナップ。トワイライトミストパールとミッドナイトブルービームがスパーダ専用色で、ボディの下回りを一周しているメッキモールはダーククロムを採用し、重厚感を演出している」とのこと。

内装色は、スパーダの世界観を表現するブラックのみとされ、「ルーフライニングまでブラックに統一することで、室内全体の上質感と迫力を演出。力強さと上質感を表現するダークカラーを基調とした内装に、緻密なソフトウィーブとプライムスムースのコンビシート、インパネやドアトリムにもプライムスムースをコーディネートした上質な空間となっている」と述べる。また、メイン材のソフトウィーブ部分にはファブテクト加工が為されている。

ホンダ・ステップワゴン:グランドコンセプト スケッチホンダ・ステップワゴン:グランドコンセプト スケッチ

◆素敵な暮らしとは何だろう

ここからはもう少し細かくお話を聞いてみよう。

----:ステップワゴンのグランドコンセプトの下、CMFとしてのコンセプトがあると思うのですがいかがですか。

唐見:グランドコンセプトの“素敵な暮らし”というのが、私たちの目指す非常に大きな姿です。そこから全ての形とか色、それからレイアウトも含めて開発していきますので、素敵な暮らしとは何だろうというところが、一番大きな上位概念だったんです。

そこからAIRとスパーダという2つの形になったんですけれど、それぞれのCMFのコンセプトとして、AIRはシンプル&クリーン、スパーダはスタイリッシュ&クォリティとなりました。

----:唐見さんが「素敵な暮らし」と聞いたとき、どういうイメージを持ちましたか。

唐見:私も仕事をしながら、プライベートも大切にしたいと思ってはいるんですけれど、やはりプライベートはなかなか仕事をしていると大切に出来ないところがありますね。本当は私も家をキレイにして、お洗濯ものとかもきれいに畳んで戻して、食べるものもちゃんと調理をして食べるような丁寧な暮らしをしたいと思っているんですけれど、どうしてもそのあたりは、忙しい毎日だとおろそかにしてしまうときもあります。やはり生活の丁寧さは自分の人生に向き合うみたいなことだと思うので、そこをすごく大切にしたいと思っているんです。

最近は携帯などがありますので、家族で過ごしている時ですらも、自然と携帯をいじっちゃうみたいなことがあります。それは家族に対しての丁寧さみたいなところも捨て去っちゃってるようにも感じていますので、自分に対しても、それから家族に対しても、丁寧でありたいというのが、このクルマの素敵な暮らしかなと思っています。

----:以前に聞いたことがあるのですが、小さな子供がいるご家庭だと、クルマで並んで座る、あるいは前後に座った時に色々お話が出来るというんですね。それは、小さくても自我が目覚めていて対面では話しにくい。そういう時に横や前後だと、何となく話すことが出来るので、クルマの中でテレビなどは見せないというのです。クルマの空間にはそういう世界観もあるのですね。このステップワゴンAIRを見た時にそうことが可能な空間だという印象を感じました。

唐見:そうですね。車内の雰囲気として、家のリビングみたいなものを目指しました。シートの生地も含めて、リラックしてくつろいだ感覚を打ち出せるようにしたいと思っています。クルマを運転しているときや乗っているときは、自分も携帯を使わないですし、家族に気を使う、気を配っていますので、話がしやすかったりするんですよね。家とか喫茶店だとつい雑誌を読んじゃったりしてしまいますが。いま、クルマはかなり特殊な空間になっていて、そこが子供たちと話す時の時間に繋がりやすかったり、昔でいうリビングがもうクルマの中になってるんじゃないかなとも思っています。

ホンダ・ステップワゴンAIRホンダ・ステップワゴンAIR

◆主張しない、主張する

----:今回の両方のグレードで、CMFとして一番こだわったことはなんですか。

唐見:AIRでいうと、柔らかさとか明るい雰囲気、子供たちの声が聞こえてくるような雰囲気を、見た瞬間に感じてもらうということにすごくこだわっています。なので、結構地味ですけどシート表皮も、いわゆる柄物とか、そういうものではなくて、ちょっとざっくりした織物っぽいものを表現しているんです。見た時にはなんとも思わないので、人の心に入ってこないんですよね。でもよく見たらリラックス出来る素材感で、あまり主張しないようにしているのです。主役は家族ですからね。そのように主張はしないんですが、なんとなくふんわりみんなの幸せが感じられるようなところを表現しようとしているところがポイントです。

----:確かに例えば『NSX』や『S660』のようにCMFが主張しては来ませんね。

唐見:そうなんです。なのでこだわりポイントを説明するのがすごく難しいんですけれど、そのこだわりが見えないようにするのがこだわり。空間のやわらかさとかを感じさせるのがこだわりです。

----:一方でスパーダは主張を感じますね。

唐見:スパーダの方は従来のクルマ価値みたいなところをちゃんと取り込んでいるんです。AIRが日常や部屋の空間の無意識の延長だとすれば、スパーダはちゃんと意識させるということを作り分けています。つまり、自分はこのクルマに乗っていることを楽しむとか、このクルマを持っていることに喜びを感じたいみたいなところを、クルマを通して意識してもらいたいと思って開発しています。

----:因みに内装色はなぜ黒なのでしょう。確かに定番として黒はあると思いますが、グランドコンセプトを考えると、黒以外もあったと考えられますが。

唐見:実はダークブラウンとか、ダークブルーのような色も当然検討はしてたんですけれど、やはりここは分かりやすさ、一番わかりやすい見せ方に今回はこだわりました。そこで色数も絞り、わかりやすさにもこだわることを最初の立ち上がり時点では意識しています。

ホンダ・ステップワゴンSPADAホンダ・ステップワゴンSPADA

◆二転三転

----:AIRのフィヨルドミスとバールはシンプルなボディをとても強調しているカラーだと思いました。この色調を出すのが苦労したんだろうと想像します。

唐見:これは色を決めるまでに二転三転して、やはりシンプルですから、同じくシンプルな、例えばベージュ系とかそういう色が良いのかなと思って、2代目ステップワゴンを買って何度も塗りなおしました。クルマを半分ずつ右と左で違う色を塗って、若干明度を変えて塗ってみたりしたのですが、どうしてもしっくりこなくて。でも最後の最後は、そうじゃないのかもな、シンプルだからベージュとかじゃないのかもと考え直したのです。インテリアは、リビングになじむような色で、人の心が明るくなるようなもの。そしてちょっと樽型の四角いボディの形に似合うものというところで考えなおして出たのがこの色です。

ちょっとソリッドっぽく見えるんですけど、実はちゃんとパールを入れていてます。面が立っているクルマなので、完全にソリッドにしてしまうと、痩せて見えてしまうので、少しふっくらした見え方になるような処理はしています。

----:一方でスパーダは結構濃いですよね。

唐見:そうなんです。こちらの特徴はちょっと白く濁るみたいな、白っぽく縦面が出てくるというちょっと変わったニュアンスを出しています。そこがこのクルマが持っている柔らかさみたいなところを表現しているのです。

ただスパーダは、皆さん力強さとか、重厚な感じをお求めになりますし、いままででしたらノーマルに対してのスパーダという性格の特徴がありましたので、そのあたりも意識して、新型では少し重厚な色味のものを持ってきています。

----:最後にCMFのデザイナーとしてのこだわりを教えてください。

唐見:パッと見ですと、あまりわからないと思うのですが、AIRの方にも実はシートにステッチを入れたりしています。それはお客様にわからないようなステッチなんですけど、それをやることで、シートがかっちりと綺麗な形に見えるような処理をしているのです。今回は本当にお客様に見せるためのデザインというよりも、お客様に感じてもらうためのデザインとを結構取り入れていますので、“主張しなげ”な様子を是非感じていただければと思います。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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