日産『ノート オーテック クロスオーバー』を氷上で試す…電動AWDの実力は?通常オーテック版との違いは?

日産 ノート オーテック クロスオーバー e-4WD を氷上で試す
日産 ノート オーテック クロスオーバー e-4WD を氷上で試す全 9 枚

日産自動車のサブコンパクト『ノート』にファクトリーチューンを手がける子会社オーテックジャパンが手を加えて作ったリフトアップモデル『ノート オーテック クロスオーバー』を長野・女神湖の氷上で短時間テストドライブする機会を得たので、ショートインプレをお届けする。

【画像全9枚】

車高が上がった電動AWDのノートを氷上で試す

試乗したのは前後アクスルに電気モーターを配置した電動AWD(e-4WD)の「X FOUR」。外観の変更点は若干の車高アップ、バンパーデザイン変更、フェンダーアーチ装着など変更規模は小さいのだが、実車を見たところなかなか効果的にデコレーションされていた。

試乗当日は絶好の快晴で、空はまさに蓼科ブルー。試乗車は『GT-R』や『スカイライン』などに用意される塗色でオーテックブランドのイメージリーダー色にもなっている「オーロラフレアブルーパール」だったが、空の青を映すととりわけ良い色合いに。そのカラーがクルマをよりドレッシーに見せる要因になっていた感もあった。

最低地上高は150mmと大して余裕があるわけではないが、最低地上高は欧州車ばりに125mmしかないノーマルのe-4WDに比べると雪上やラフロードでの余裕は増したと言える。関係者いわく、タイヤの半径で10mm、残りをサスペンションの変更で稼いだという。あと10mmプラスで160mmくらいになるとクロスオーバーSUVらしさがより高まりそうだが、全高を旧式の立体駐車場のリミットである1550mm以下に収めることを重視したのであろう。

アイスバーンでも生きる電動AWD

日産 ノート オーテック クロスオーバー e-4WD を氷上で試す日産 ノート オーテック クロスオーバー e-4WD を氷上で試す

いざ氷上に乗り出してみる。外気温はマイナス6度と十分に低かったものの氷の表面は太陽光を浴びて溶解気味。電動AWDの細かい出力制御はこのような超低ミュー路ではなかなかの威力で、直進においてはトラクションコントロールを切らないかぎりほとんどスリップを感知しないままに加速できた。

コーナーではその電動AWDも万能ではなくなる。当日、日産の名物テストドライバーだった加藤博義氏が姿を見せていたので、お願いして氷上ドライブのお手本を見せてもらったが、氏いわく「このコンディションでは前輪の転舵角が20度を超えるともうどんなことをやっても反応しません。ちょっとずるをして、イン側に積もっている雪を踏めばほら、こういう風に方向を変えられます」。それでも氷上で綺麗に1回転スピンを決めてみせたりと、自由自在ぶりを披露してくれた。

筆者が運転しても、転舵しても真っすぐ進んでしまう状況でなければ後輪に駆動力がかかってクルマを曲げる挙動を作ってくれた。筆者は昨年、ノーマルのノートe-4WDで東京~鹿児島ツーリングを敢行したが、長野~岐阜県境の奥飛騨のワインディングロードで通常のアクティブトルクスプリットAWDともまた異なる前後輪が完全に分離した駆動力制御の威力に感心させられた。その効力はアイスバーンでも生きているし、スタッドレスタイヤが効く雪上ではさらにメリットを実感できることだろう。

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ノーマルとも通常のオーテック版とも異なる足回り

パワートレインのスペックがノーマルと同一であるのに対し、足まわりはノーマルとも通常車高のオーテック版とも異なる。レートを高めたコイルスプリングの反発力で車高を上げ、ショックアブゾーバーもそれに合わせたチューニングを行っているとのこと。

一般路で言えば舗装の荒れた山岳路くらいの凹凸があるコースを走ってみると、たしかに当たりは固め。大きめのアンジュレーションの通過時に発生する揺動もゆるりとではなくヒョコッと止まる感じであった。一方、1cm以下の細かい段差やピッチの短いアンジュレーション通過するときの振動吸収はノンプレミアムBセグメントとしてはかなりハイレベルで、ノーマルに比べて断然滑らかだった。

今後の展開が楽しみな仕上がりだった

日産 ノート オーテック クロスオーバー日産 ノート オーテック クロスオーバー

今回のテストドライブでわかったのはこの程度だが、ファーストタッチの印象は大変ポジティブであった。このクルマを作ったオーテックジャパンは昭和末期、スカイラインに深く関わった旧プリンス自動車系のエンジニア、故・桜井眞一郎氏を処遇するためにできたチューニングファクトリー。

かつては『レパード』をベースにイタリアのカロッツェリア、ザガートと共同開発しての『ステルヴィオ』『ガビア』、純国産では『スカイライン』の4ドアボディに『スカイラインGT-R』の2.6リットル直列6気筒エンジンを自然吸気化したものを搭載したモデル等々、誤解を恐れずに言えば変態じみたクルマ作りを身上としていたが、2016年に片桐隆夫氏が社長に就任して以降、「プレミアムスポーティ」を目指すサブブランドとして、同じくオーテックが開発を手がけるニスモブランドのモデルとの棲み分けを図ってきた。

それ以降の他のオーテックモデルについては乗っていないので何とも言えないが、少なくともノート オーテック クロスオーバーはブランドアイデンティティに沿った仕上がりであるように感じられた。今年4月にはオーテックとニスモは合併し、日産モータースポーツ&カスタマイズという新会社になるが、オーテックとニスモの2サブブランド体制は維持されるという。今後の展開が楽しみなところだ。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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