【フォーミュラE】 今回も鍵を握ったバッテリーの使い方…第3戦レビュー

【フォーミュラE】 今回も鍵を握ったバッテリーの使い方…第3戦レビュー
【フォーミュラE】 今回も鍵を握ったバッテリーの使い方…第3戦レビュー全 8 枚

電気自動車のF1とも言える「フォーミュラE世界選手権(FE)」の第3戦が先週末、メキシコで行われた。

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「電気自動車のF1」第3戦はメキシコで開催「電気自動車のF1」第3戦はメキシコで開催

FEのレーシングカーにはエンジンが搭載されていない。マシンは、バッテリーから供給される電気で回るモーターで走る。市販車でも増えているバッテリーEV(BEV)と同様、二酸化炭素を排出しない。この次世代のレースには、伝統的なモータースポーツとは違う見どころがある。このレポートでは、そうした角度からFEを毎戦検証していく。

今回は、ちょうど3年前にここで無くした「落とし物」を見事に取り戻した、パスカル・ウェーライン(ドイツ)がトップでチェッカーフラッグを受けた。

優勝はポルシェのパスカル・ウェーライン優勝はポルシェのパスカル・ウェーライン

◆これまでの振り返り:エネルギーの使い方が鍵

既に紹介したように、先月サウジアラビアで行われた開幕戦ではバッテリー(充電量)の使い方が勝敗を分けた。「メルセデス- EQフォーミュラEチーム」が1-2フィニッシュを果たす一方、中盤までは3位を走行していた「TAGホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチーム」のアンドレ・ロッテラー(ドイツ)が、終盤にペースダウン。ずるずると順位を下げ13位でレースを終えたのは、チームによる計算ミスで充電量が足りなくなったためと言われている。

前戦では「電費」に苦しんだアンドレ・ロッテラー前戦では「電費」に苦しんだアンドレ・ロッテラー

第2戦でも、バッテリーマネージメントに注意を払い、冷静なレース運びを見せたエドアルド・モルタラ(ロキット・ベンチュリ・レーシング)が優勝した。モルタラ(スイス)は、「リフト・アンド・コースト(アクセルペダルから足を上げて惰性で走行)」や減速時の回生をうまく使った、エネルギー効率の良い走りで光ることがあるドライバーだ。

第2戦の勝者エドアルド・モルタラは戦略的な走りが光る第2戦の勝者エドアルド・モルタラは戦略的な走りが光る

◆マシンとドライバーに多くを要求するコース

「第8シーズン」の第3戦は、メキシコの首都メキシコシティで開催された。バトルが行われたのは、かつてフォーミュラ1(F1)グランプリも開催された「エルマノス・ロドリゲス・サーキット」と、その内側にある野球場の一部を繋いだコース。全開で走行する高速コーナーや長いストレートと、ヘアピンカーブなどのテクニカルコーナーが混在する。複合的なレイアウトで、ドライバーにもマシンにも幅広い対応力が求められる。

このサーキットは一部がスタジアム内に設けられているこのサーキットは一部がスタジアム内に設けられている

◆「電費」に厳しいサーキット

今シーズンのFEは、世界10か所を巡り16レースを行う。その中でも、1周約2.6kmのこのサーキットはラップタイムが最も速いコースで、全開区間が長いこともあり「電費」に厳しい。ちょうど3年前の2月に行われたレースでは、トップを快走していたウェーラインがチェッカーフラッグ直前で「電欠」によりスローダウン。目の前の初勝利を失った。

◆メルセデスとポルシェの違い

今回の見どころの1つは、開幕戦と第2戦で圧倒的な強さを見せたメルセデス勢が流れを維持するかどうかだった。同じマシンを使うヴェンチュリのモルタラが予選2番手に着けたが、そのほかはサウジアラビアで見られたようなキレがなく精彩を欠いた。ストレートではタイムを稼ぐものの、コーナーでは特にポルシェ勢に及ばなかった。

FEでは費用の高騰やマシンの性能差を抑えるため、多くの部品がワンメイクとされている。しかしながら、パワートレイン(モーター、インバーター、トランスミッション)とリヤサスペンションの独自設計は許されている。マシンとしては、パワーに優位性があるメルセデスと、サスペンション設計やセットアップに強みがあるポルシェということが言えるかも知れない。

◆「電費」電略でポルシェが勝利

サウジアラビアで開催された2レースでは苦戦していたポルシェ勢が、ここでは速さを見せた。ウェーラインがポールポジションを獲得し、ロッテラーも3番手からのスタートとなった。

ポルシェのウェーラインがポールポジションポルシェのウェーラインがポールポジション

ただ、レースが始まると、今一つ速さが見られない。序盤にモルタラがトップに上がると、速いペースで後続を引き離しにかかった。一方ポルシェ勢は、「DSテチータ」のジャン=エリック・ベルニュ(フランス)にも抜かれて3位と4位に下がりしばらく膠着状態が続いた。

レースが動いたのは終盤。残り15分辺りからポルシェの2台が少しずつペースアップ。それまで飛ばしていたモルタラとベルニュよりも1%から2%ほどバッテリー残量が多いポルシェ勢は、ゴールまで12分となったところで1-2体制を築いた。開幕戦の失敗から学んだチームは、前半にエネルギーをセーブし、後半に勝負をかける戦略で勝利を掴んだ。

結局、ウェーラインがトップでフィニッシュラインを越え、3年前の雪辱を晴らした。昨シーズンからFEに参戦しているポルシェにとっても、初勝利を1-2で飾る素晴らしいレースになった。

ロッテラーも2位に入りポルシェが1-2ロッテラーも2位に入りポルシェが1-2

◆やはりモノを言った電気の使い方

第4シーズンからFEに参戦しているベテランのモルタラは、エネルギー効率の良い戦略的な走りに定評がある。前戦の優勝とランキングトップの気負いがあったかどうかは分からない。また、ポルシェ勢と渡り合うために、賭けに出る必要があったのかも知れない。このレースでは、珍しくライバルたちよりも電気を使う走りだった。いずれにしても、序盤に飛ばし過ぎ、終盤に失速したのが今回の敗因だろう。

今回は、レース終盤まである程度の順位をキープしながらエネルギーを節約し、終盤に一気に勝負に出たポルシェ勢の戦略が当たったようだ。次の戦いは、どのチーム、どのドライバーが電気を味方につけるのか? イタリアのローマで、4月9日に第4戦が行われる。

《石川徹》

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