デジタル地図大手ジオテクノロジーズと位置情報基盤大手HERE Japan、協業の核心とは…MaaS、メタバース、地図の未来を語る

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HERE Japan 高橋明宏 代表取締役社長(左)とジオテクノロジーズ 杉原博茂 代表取締役社長 CEO(右)
HERE Japan 高橋明宏 代表取締役社長(左)とジオテクノロジーズ 杉原博茂 代表取締役社長 CEO(右)全 8 枚

2017年に両社は戦略的パートナーとして提携し、「OneMap Alliance」を結成。2019年にはジオテクノロジーズの地図データを取り込んだ「HERE Open Location Platform」日本地域版を、2021年にはジオテクノロジーズの地図データベースを「HERE Platform」に掲載しており、両社新社長をリーダーとして今までにない強力なパートナーシップを日本で展開している。

ジオテクノロジーズとHEREが、どのようなヴィジョンと展開を共有して未来を創造していくのか。今回、ジオテクノロジーズの杉原博茂 代表取締役社長 CEOと、HERE Japanの高橋明宏 代表取締役社長の対談を通じて明らかにしていく。

地図データとプラットフォームを掛け合わせる

ジオテクノロジーズ 杉原博茂 代表取締役社長 CEOジオテクノロジーズ 杉原博茂 代表取締役社長 CEO

ジオテクノロジーズ 杉原博茂 代表取締役社長 CEO(以下敬称略):IT業界に入って40年、長い間デジタルデータと付き合っていますが、2021年6月1日にジオテクノロジーズのCEOに就任して、地図・位置情報というデータの重みを再発見した想いです。地図データの特異性は点と線と面をおさえている事で、IT業界のデータベースとは異なる性質のものです。位置情報とは、あって当たり前、空気のようで、無ければ誰もが困る。今後10年、20年後に人間と自然が共存する上で、自然環境に負荷をかける社会活動はメタバースの世界で、リアルな世界では自然と人間の共存、そのような世界を作るための最後の未開拓地を開拓する大事なツールが地図データと考えています。

就任当初、OneMap Allianceの主軸であるHEREさん(オランダ本社)のCEOが、シスコ時代の私の上司だったことを知りました。しかもHERE Japanさんを率いるのは、私がオラクル在籍時に同じIT業界のマイクロソフトでご活躍されていた高橋さんだと知りました。同郷者が地図データを扱うパートナーとして協業してくれている、これは心強い限りでした。

HERE Japan 高橋明宏 代表取締役社長HERE Japan 高橋明宏 代表取締役社長

HERE Japan 高橋明宏 代表取締役社長(以下敬称略):ご存知の通りHEREの前身はナヴテックです。ジオテクノロジーズさんと同じくナビ用の地図データ作成からアメリカ西海岸でベンチャー企業としてスタートし、ノキアや自動車のジャーマン・スリーの買収を経て今日に至ります。グローバル同様、日本市場でも自前の地図データを作る選択肢もあったと思いますが、走行調査距離700万kmを超えるジオテクノロジーズさんの豊富なデータを見ると、ここに一から追いつくのは時間とリソースがかかるし、日本独自の複雑性、特殊性もあります。そこで我々は、地図はジオテクノロジーズさんにお任せし、もうひとつの強みであるロケーション・サービスと、ひとつ上のレイヤーにシフトしたのです。

従来はニッチに、各自動車メーカー、各車種向けにナビゲーション・サービスを独自開発していました。しかし、開発効率を考えるとモデル数や価格レンジの違いからいって、いずれ淘汰されると考えられます。一定の部分はプラットフォームとして共通化して、それ以外を各クルマの特性を活かしてカスタマイズする方向性に自動車業界も変わっていくのではないか?その局面でジオテクノロジーズさんの資産である地図、様々なところから集められたデータ、我々のプラットフォーム、これが一緒になることで新しい、強力な流れを2社で作っていけるという手応えを感じています。

杉原:まさに私も、そこに強く共感しています。カリフォルニアで原体験として感じたことですが、私は自動車業界の成功はグローバルスタンダードがあってのものだと思います。HEREさんはグローバルに展開しています。我々は日本のデータを沢山もっています。グローバルで培ってきたデータの扱いや運用の成功事例をもとに日本の自動車産業に貢献していけることは素晴らしいことですし、強い絆をもってやっていきたいと考えております。

例えば物流システムの危機に解決策を

高橋:地図フォーマットには様々なものがあります。日本には独自のもの、欧州もアメリカも当然そうです。それらを共通化できれば、変更や変革、新たな価値を追加できるプラットフォームになりえます。今後、自律運転、自律走行がクルマの中でかなりのシェアを占めていく中で、一元的な開発管理ができて、そこから各地域用に味つけする作業ができるようになれば、地図フォーマットやそれを活用した自動運転技術などの開発工程数が劇的に減らせます。負担の減った部分をどう活用するかといえば、付加価値の高いサービスの実現に向けて、どうソフトウェアを作っていくか?ということです。

例えば、車内のナビゲーションとスマートフォンをどう連携するか、今はそれぞれ独自の考え方や規格があって一つの車の中でバラバラに存在しています。また地図(カーナビ)も、今は運転している人に対してガイドするのが大きな役目、目的です。でも今後、自動運転や自律走行の時代になると、クルマに対して命令を出していかなければなりません。プラットフォームとしてのロケーション・サービスという考え方によって、色々な凸凹を吸収してすべてがシームレスにつながり、そこに色々なビジネスができるようになっていきます。それこそが我々が、地図メーカーからロケーション・サービスへ、上のレイヤーにフォーカスを置く理由です。

杉原:まさに同じ意見、方向性です。なぜHEREさんと一緒にやっていくかというと、日本だけをガラパゴスにしたくないのです。今後は自動車業界にも走る事に対するコンテンツやサービスが求められるでしょうから、HEREさんがこれまで有してきて、経験なさったサービスを、我々ジオテクノロジーズは日本の顧客に紹介したいのです。そうすることで日本のお客様もグローバル最先端のサービスやコンテンツ、経験といったベネフィットを、日本ローカルの良さを加味しながら受けられます。ジオテクノロジーズのヴィジョンとして「どうやったら地球に喜んでもらえるか」に加え、「Love Our Customers」という理念を展開していく中で、HEREさんと共に、お客さまのニーズに応えられると考えています。

高橋:培った経験やアルゴリズム、データを自動車製造以外の各産業にも反映させていきたいと考えています。すでにジオテクノロジーズさんとは実証実験を開始していますが、とくに車両や運行管理にあたるフリートマネージメント、流通の最適化などにフォーカスしています。単に早く着くというETA(エスティメイテッド・タイム・オブ・アライバル Estimated Time of Arrival)の時間の短縮化は大切ですが、必ずしもビジネスではそうでないこともあります。

例えばワインを配送する場合ですが、壊れないように時間をかけてでも可能な限り振動の少ないルートを用いるとか、配送の仕方も目的によって大きく変わります。日本でそれを実現するにはジオテクノロジーズさんの地図が必要になります。車両の大きさに応じて高さ制限をあらかじめ考慮してルートを変更できる上、ジオテクノロジーズさんの地図を使えば、運転手さんに注意を促したり別の最適なルートを案内することもできます。ビジネスの質を上げる、痒いところに手が届く感覚を日本で実現するには、経験値のあるパートナーさんの地図がマストなのです。これは逆にグローバルにもフィードバックできます。また、さまざまな産業にも応用できるのではないかと期待しています。

杉原:創業から28年間お世話になってきた自動車業界は今まさに過渡期にきています。これは我々にとっても変革の時なのです。変革の中で、もっと情報をやり取りすることでドライバーさんに対するサービスのレベルを上げていきます。日本は巷でいわれる2024年の物流システム危機に直面しています。我々はこの夏、スマホ用の物流アプリケーション展開を検討しています。HEREさんのソリューションを活かして、いかに日本に落とし込んで展開していけるか、最適なカタチでスピード感をもって届けられたらと思います。

グローバルで通じる一気通貫の地図

HERE Japan 高橋明宏 代表取締役社長(左)とジオテクノロジーズ 杉原博茂 代表取締役社長 CEO(右)HERE Japan 高橋明宏 代表取締役社長(左)とジオテクノロジーズ 杉原博茂 代表取締役社長 CEO(右)

高橋:HEREは欧州である程度プレゼンスを確立していて、得意とするのはインバウンド。海外では「HERE WEGo」というフリーのモバイル地図アプリを提供していますが、それに馴じんだ方が日本に来た際に、いつものように場所検索を実行したり、ちょっといいレストランに行きたいなどの検索をする際に、使えないと困ってしまう訳です。だからジオテクノロジーズさんの地図をベースに、その上にトラベル支援アプリ各種を載せていきます。まずはインバウンドの方の来日時の経験を豊かにしていくということです。逆に日本のスマホ文化で培われたジオテクノロジーズさんのキメ細かなサービスに慣れているユーザーさんには、海外の違うインフラとのギャップを、我々のプラットフォームやサービスを採り入れることでシームレスな経験にしていただきたいのです。ですからジオテクノロジーズさんと我々は、まったくもって相互補完的で、長期的に続いていく協業だと、証明されていくと思います。

杉原:我々が手がけているのはメタバースだといい続けていますが、様々な業界が参入する中で、地図やプラットフォーム作りは縁の下の力持ちなのです。メタバースの基礎として、その先行きに、我々の存在があると思います。

高橋:「位置情報サービス」というものにはまだ皆さん、ピンと来ないかもしれません。日本でもそれぞれのソリューションは出来上がっているけれども、エンド・トゥ・エンドで繋ぐソリューションがじつは無いのです。物流でいえば、船便か空輸か、それから倉庫へ、トラックが着いて拠点へ、最後は地域に行って配達…というプロセスのどれかひとつが滞っても問題が起きます。点の部分をひとつのラインにつなげていくのは1社で実現することはできません。

さらにそれぞれの荷主がばらばらに情報をもっていますから、データの安全性を担保する仕組みが必要です。絶対に漏洩しないといった基準、個人情報の扱いや守秘についても、様々な定義がきっちりなされている必要があります。積んだ船がどこにいるのか?潮流や波、風などの条件を鑑みていつ到着するのか?どのぐらい量の荷物で、実際にどう配達するか?これらが手に取るように分かれば、準備ができます。それらを吸収するプラットフォーム、異なるサービスを相互に結びつける何かが必要です。

杉原:まさに、高橋さんのおっしゃるのはIT業界でいうERP(エンタープライズ・リソース・プランニング Enterprise Resource Planning)と、SCM(サプライチェーン・マネジメント Supply Chain Management)ですよね。企業のお客様に対してブツ切りのサービスを提案するのはもう古い。一気通貫のサービス提供が求められています。

ジオテクノロジーズのビジネス顧客の中には、自動車産業のお得意様、位置情報スタートアップ企業の顧客、あるいはMapFan(マップファン)やトリマのようなエンドユーザーは合計で1000万人を超えています。HEREさんのもつソリューションは、我々の地図と親和性が高いと考えています。ありとあらゆる建物の内部の地図ができたら、これはもうメタバースといっていいのではないでしょうか。我々からするとお客様の知財、投資を極力陳腐化させない、グローバルで通じる一気通貫の地図が作れること自体が、他社さんとの差別化になるのです。

「メタバース」はビジネスユースで活躍する

ジオテクノロジーズ 杉原博茂 代表取締役社長 CEOジオテクノロジーズ 杉原博茂 代表取締役社長 CEO

杉原:eコマースでは、置き配やラスト・ワンマイルの局面で我々には「住所クレンジング」という住所をビタっと合わせるクラウドのサブスクアプリがあり、好評です。そこにHEREさんの技術を組み合わせ、その先の物流ネットワークサービスに繋げていくビジネスがあります。

高橋:先ほどメタバースの話が挙がりましたが、実際にその世界が出来上がってきています。例えばゲームの世界でいえば、舞台がニューヨークのマンハッタンの精巧に再現されたビルの中でバトルをする臨場感と、仮想でできた街でプレイするのとは違いますよね。ゲームやシミュレーターの中でリアルに、自分が演じているようになった世界が存在している。だからこのマーケットは我々2社で攻略しましょう、ということです。もうひとつは、オンラインショッピングをする際、クリックするのではなく自分のアバターが何かを手に取る動作をすると課金されていく世界です。そこではゲーム感覚でショッピングそのものが実行されるのです。海外ではすでに現実になり初めています。すべてがそうなるとは思いませんが、地域、場所に関係なく、誰もが同じ経験ができることにも、価値があります。

杉原:メタバースの世界はビジネスユースで活躍すると考えています。CO2削減、ゼロエミッションに向けてという動きは、労働生産性を上げることだと思います。一人がひとつの仕事を遂行するのに、10日間かかったら10日分のCO2が排出されます。単純計算で、それを3日でできたら7日分は削減可能だということです。いちいち移動せずとも、ものすごく精細な物流倉庫やショッピングモールの地図があれば、リモートで入ってアバターで商品を手に取ることができたり、様々な状況の管理もできます。労働生産性がどう上がるか考えることと、ゼロエミッションに向かうことは、軌を同じくするものと私は考えます。

もうひとつは地図の中で、どこのエリアでCO2が多く出ていて、どこで逆に酸素が出ているかをプロットできるようになると、排出権やオフセット分の売買が可能になるでしょう。このようにすれば、世界の趨勢(すうせい)に日本も追いつく事ができるのではないか?ちょっと壮大な考えですけど、技術的には可能で、あとはやるだけだと考えています。ですのでHEREさんと今後も強くタイアップしながら、そういったソリューションを展開し、ひいては地球に喜んでもらえるようなサービスにしたいと思っています。

顧客、パートナー、データ所有者が同じ目線で改題を解決する

高橋:パンデミック下でもどこにどういった人が密集しているか、人流はモニターされていますよね。さらに進化すると、どんな種類の災害があって、頻繁に起こるエリアがどのように存在しているか、そういったデータを各地方自治体がもつということにもなるでしょう。これらを活用していくには、課題を抱えている皆さんと共に同じ目線でソリューションを作っていくことが大事です。これまではベンダーが仕事をして対価をいただくビジネスモデルでしたが、メタバースの時代には、よりフラットな関係になっていくでしょう。お金を稼ぐための活動そのものが、アイデアとなり価値になっていくということです。

我々の色々な知見を具現化できればメタバースの世界が来た時にも、必然的に価値のあるビジネスを提供できるのではないかと思います。市場、社会にどういう貢献ができるのかは、我々がずっと考えチャレンジをし続けていかなければいけません。また、それが楽しみでもありますね。

杉原:我々ジオテクノロジーズとHEREさんの連合が、これからの日本で次々にサービスを展開していくわけですが、多分この対談を読まれている方々の中にも、「こんなデータがあるけれど、どう役立てられるか?」と課題をお持ちの方は多くいらっしゃるでしょう。そのお悩みごとは、是非我々にご相談いただければと思います。長年ITの世界でデータを扱っていた我々が、課題/問題の解決のお役に立てると考えています。

HERE Japan 高橋明宏 代表取締役社長(左)とジオテクノロジーズ 杉原博茂 代表取締役社長 CEO(右)HERE Japan 高橋明宏 代表取締役社長(左)とジオテクノロジーズ 杉原博茂 代表取締役社長 CEO(右)ジオテクノロジーズ株式会社 企業サイトはこちら

《南陽一浩》

南陽一浩

南陽一浩|モータージャーナリスト 1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

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