三菱ふそう eキャンター 次世代型はラインナップ充実…2トン車や超ロングボディを追加?

手前から超ロングボディ・現行ロングボディ・スタンダード(ショートボディ)タイプ
手前から超ロングボディ・現行ロングボディ・スタンダード(ショートボディ)タイプ全 27 枚

三菱ふそうトラック・バス(MFTB)は15日、栃木県喜連川研究所敷地内にて、次世代型となる開発中の『eキャンター』のデモ走行を報道陣向けに行った。

手前から超ロングボディ・現行ロングボディ・スタンダード(ショートボディ)タイプ手前から超ロングボディ・現行ロングボディ・スタンダード(ショートボディ)タイプ

三菱ふそうが小型トラック「キャンター」をベースに『E-CELL』としてEVトラックを発表したのが2010年。その後「E-CELL」は2017年に国内初のEVトラック「eキャンター」として量産販売が開始された。販売といってもEVトラックは特装車のようなもので、ほぼ注文生産に近い形だ。だが、日本国内をはじめすでにEU各国、北米、オーストラリア、ニュージーランドと世界中で350台以上が稼働している。

eキャンターの系譜eキャンターの系譜

自治体の実証実験や物流事業者のカーボンニュートラルの取り組みから、着実に台数および総走行距離を伸ばしている。採用はEU(ポルトガル)からだったが、2020年に改良モデル(2代目)が発表され、国内でも採用が進んだ。今回発表された次世代型はeキャンターの3代目となるモデルだ。開発中モデルとあって、でも走行でもキャブ部分に偽装カバーがかけられた状態で、運転席やコンポーネントの寄りの撮影も禁止された。

だが、試走コースでまっさきに目に飛び込んできたのは、3種類の偽装eキャンターだ。2代目までのeキャンターはGVW(車両総重量)で7.5トンでワイドキャブ・セミロングボディ積載量で3~3.5トン(積載量は架装によって変わる)の1タイプのみの設定だった。今回、それと同じモデルの次世代型に加え、標準ボディとみられるショートボディ(積載量で1.5~2トン前後と思われる)とロング・ワイドボディ(中型免許に分類される積載量8トンクラスの可能性がある)がお披露目された。

次世代eキャンターはボディタイプが3種次世代eキャンターはボディタイプが3種

詳細は正式発表まで待たなければならないが、物流業界でもニーズの多い2トンクラスの小型EVトラックが追加されたことは大きい。2代目まではその大きさから採用や購入にいたらなかった例があると聞く。例えば街中の配送トラックやごみ収集車は小さいサイズが好まれる。三菱ふそうは当然そのセグメントを押さえるべく準備をしていたことになる。

次世代eキャンターはボディタイプが3種次世代eキャンターはボディタイプが3種

日本や先進国では、ラストマイルデリバリーや居住エリアの輸送、都市部への乗り入れに小型トラック、バンのEV(ゼロエミッション)のニーズが高まっている事情もある。大気汚染が深刻な新興国でも、じつは商用車のゼロエミッション化の動きがある。インドの3輪タクシーはEV化に補助金が出るので、乗り換える業者が増えている。タイ、インドネシア、カンボジアなど毎年のように洪水に悩まされる熱帯エリアでは、市民の環境意識も高まり、かつEVならば自国産業として育てられる可能性があるとして政府も後押ししている。

MFTBは、次世代型eキャンターを皮切りに、EVトラックの車種バリエーション、架装モデルの拡大、外部給電(V2L、V2H)など商品力のアップ、グローバルマーケットの拡大を図る戦略だ。詳細仕様はなかなか答えてくれないが(正式発表は近いうちにあるとのこと)、研究施設の見学では次世代型のパワートレインを見ることができた。インバーターとモーターは一体型で現行モデルよりかなりコンパクトになっている。

ダイムラーグループでは2039年までに全車種電動化(EV・FCV)を目指している。喜連川研究所でも、ディーゼルエンジンの研究開発棟の一部をバッテリー分解室やEV系システムテストベンチ、コンポーネントテストベンチに切り替えたり、EV試験棟の改修、急速充電器の拡充、その他開発投資を続けるという。

なお、研究所敷地内には50kWのDC急速充電器が8台設置されている。屋外では国内ではめずらしい5機のDCチャージャーが並んでいる場所がある。ABB製の175kWのDC急速充電器が2台新設されていた。この設備を応用すれば最大350kWの充電環境も用意できるという。

ABBの175kW急速充電器。国内にも普及が待たれるABBの175kW急速充電器。国内にも普及が待たれる

デモ走行は、テストコース内周路での周回と登坂路の上り下り。石畳式の悪路コース(基準凹凸路)で行われた。試乗はなく距離をとって走行を見るだけなので、細かい評価はできないが、あいかわらずeキャンターの走行は静かでなめらかだ。すべての車両は、それぞれのGVWいっぱいになるようにウェイトを搭載しているという。ロング・ワイドのいちばん大きい車両は、若干速度を抑えていたように見えたが、いちばん小さい2トンクラスのeキャンターは12%勾配はある登坂路を力強く登っていった。

悪路コースでは、もう少し近くで実車を見ることができた。近寄っていちばん驚いたのは、バッテリーの搭載位置がフレーム下に集約され外から見えなくなっていることだ。現行eキャンターは、フレームの両サイドに2個ずつ、中央に1個、計5個のバッテリーモジュールが搭載されている。フレーム両サイドの空間が空いているので、架装やユーティリティのバリエーションにも期待したい。また、左後方の巻き込み警報のためのレーダーも確認できた。ADAS機能やその他の機能も現行モデル準拠と見ていいだろう。

《中尾真二》

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