【ミシュラン パイロットスポーツ5】タイヤのデザイナーに聞いた「使い切るためのデザイン」ヒントはWRCにあった

スリップサインはミシュランマンが目印

タイヤの寿命を使い切るためのデザイン

ヒントはWRCにあった

3つの穴が、摩耗状況を可視化するトレッドウェアサイン
3つの穴が、摩耗状況を可視化するトレッドウェアサイン全 6 枚

タイヤに「スリップサイン」があるのは、皆さんご存じだろう。溝の深さが1.6mmまで減ると現れる目印。これが出たら整備不良車になってしまうのだが、実際のところ、日本の自動車ユーザーはスリップサインが出るずっと手前でタイヤを履き替える(もしくはクルマを買い換える)人が多いといわれる。

ミシュラン パイロットスポーツ5のスリップサイン

そこで日本ミシュランタイヤが新世代スポーツタイヤ『パイロットスポーツ5』に採用したのが、『Wear 2 Check』というコンセプトだ。デザインを担当した研究開発本部・PCタイヤ先行技術開発部の清井友広さんが、こう説明する。

「お客様がより長く安全にタイヤを使用していただけるように、磨耗状況を確認しやすいデザインを考えました。スリップサインの位置を見つけやすくすると同時に、摩耗状況を見てわかるようにすることで、タイヤを履き替えるタイミングをわかりやすくしています」

スリップサインはミシュランマンが目印

ミシュラン パイロットスポーツ5ミシュラン パイロットスポーツ5

ミシュランのタイヤではショルダー部のどこかに必ずミシュランマンがいる。そこからトレッド面を内側に辿っていくことで、トレッドパターンに潜むスリップサインを見つけやすくしているのだ。

パイロットスポーツ5の場合は、ミシュランマンにチェッカーフラッグ柄を組み合わせたスポーティなデザイン。「ショルダー部に周囲とは異なる形状を作ると、人は自然にそこに目を向けますよね」と清井さん。

そして、スリップサインまで行く手前に(トレッド面の最外側のブロックに)、3つの小さな丸い穴が並んでいる。これが摩耗状況を可視化するトレッドウェアサインだ。丸い穴はそれぞれ深さが異なり、タイヤが摩耗するにつれて外側の穴から順に消えていく。

スリップサインの位置をガイドし、さらに磨耗状況を可視化する。『Wear 2 Check』のコンセプトがこうして具現化された。

タイヤの寿命を使い切るためのデザイン

ミシュラン・パイロットスポーツ5ミシュラン・パイロットスポーツ5

「サステナブルということをタイヤデザインとして考えたとき、何ができるのか? まずは資源を大事にする。つまりタイヤを最後まで使い切ることが、ひとつのテーマになってくると考えました」と、清井さんは『Wear 2 Check』の発端を振り返る。

「スリップサインが付いているとはいえ、それを実際に確認する人はあまり多くないと思います。車両に装着されたタイヤのスリップサインを見ようとすると、なかなか楽な姿勢では見えないですしね。しかも、スリップサインに到達した瞬間にこのタイヤはもう使えませんというのでは、お知らせが急すぎる。お客様がタイヤを使うなかで経験することを考えて、今回のデザインを開発しました」

トレッドウェアサインで摩耗を可視化するのは、早めにタイヤを買い換えてほしいからではない。狙いは逆だ。

「急なお知らせではなく、段階的にシグナルを伝える。タイヤを寿命まで使っていただくためのアシストとして、あとどれだけ使えそうかが見てわかるようにしているんです」

ヒントはWRCにあった

3つの穴が、摩耗状況を可視化するトレッドウェアサイン3つの穴が、摩耗状況を可視化するトレッドウェアサイン

丸い穴を並べるデザインは、実はWRCからインスピレーションを得たものだという。「WRCのタイヤはトレッド面に3つの穴を設けている。次のSSも同じタイヤで行けるかどうか、摩耗の程度を穴を見て瞬時に判断するわけです。これを使えるかな、と考えました」。

もちろん他にもアイデアを検討したそうだが、「ユーザーサーベイを行ったところ、この3つの穴を並べる案がいちばんわかりやすいことを検証できた。そうやって、ようやく最終案に辿り着きました」

3つの穴がすべて消えたら、そろそろ履き替え時期。それまでは安心して走っていてよい。「使い切るためのデザイン」はユーザーにも地球にも優しいのだ。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは審査委員長を務めた。

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