埼玉高速鉄道線(埼玉スタジアム線)の終着駅、浦和美園駅から歩いて10分のエリアに、シェア電気自動車(EV)と蓄電池を中心とするセントラル蓄配電システムによる住戸街区「V2G-site」が本格稼働し始めた。
その名も「浦和美園 E-フォレスト」。2012年に内閣総理大臣が さいたま市を次世代自動車・スマートエネルギー特区に認定。スマートホームコミュニティ先導的モデル街区に選ばれ、さいたま市、中央住宅(ポラスグループ)、高砂建設、アキュラホーム、Looopが連携して手がけてきた。
全3期の戸建分譲住宅販売数は、中央住宅が91棟、高砂建設が24棟、アキュラホームが14棟。いずれも販売されるやいなや予約が殺到し、抽選によって入居者が決まりすでに完売。オーナーたちが購入を決めた理由のひとつに「再エネ自家消費率60%超」「実質再エネ100%」「災害時自立運転15時間」がある。
一般的なスマートハウス単独の再エネ自家消費率は30%、蓄電池連携でも50%といわれるなか、60%超というのが目玉。なぜこうした高効率を実現できるのか。

◆EVが街の蓄電池になるV2G-site
浦和美園 E-フォレストの街区のなかには、EVが街の蓄電池になるV2G-siteがある。V2G(Vehicle to Grid)といわれるように、この街区の中央には、蓄電池(125kWh)+EVシェアリング(EV40kWh×2台)+受変電盤+PCS(制御系 Power Conditioning Subsystem)で組むチャージエリアを配置。このチャージエリアが電力系統の中心になり、V2G-site内の各住戸とつながっている。
V2G-site内の各住戸は、東京電力などの商用電力系統と電線などで直接つながらず、商用電力系統はチャージエリアだけにつながっている。こうした集約型レイアウトにより、各住戸への電線などがシンプル化でき、地中に電線や通信線を埋めることで、空中は電線のないすっきりした景観を生み出せた。

◆EV充電時・放電時の流れ、いったんチャージエリアに集約
チャージエリアに2台あるEVシェアリング(EV40kWh×2台)に充電される場合の電気の流れは、各住戸の屋根につく太陽光パネルで発電した電気がチャージエリアにいったん集まり、さらに街区内のオーナーが所有するEVなどにも分配されるというイメージ。
逆も同じ。チャージエリアに2台あるEVシェアリング(EV40kWh×2台)や各住戸のEVが放電する場合は、いったんチャージエリアにEVの電気が集まり、そこから街区内住戸の家庭利用電力へとシェアされる。
◆EV40kWh×2台と蓄電池で48時間以上自立運転
こうしたセントラル創蓄配電システム「エネプラザ」を手がけるLooopのシミュレーション結果が興味深い。たとえば、チャージエリアとつながる東京電力などの商用電力系統が停電し、EVシェアリング(EV40kWh×2台)が充電100%状態、蓄電池(125kWh)が充電90%で、自前の電力だけでV2G街区へどこまで供給できるか(自立運転)をシミュレート。
その結果、住戸の太陽光パネルが活きる晴天時で電力負荷が大きい場合は14時間51分、EV40kWh×2台と蓄電池125kWhで電力供給が継続。晴天+負荷が小さい場合は48時間以上自立運転が継続するという。
また、雨などで日射量がゼロ+負荷が大きい場合は6時間30分、日射量ゼロ+負荷が小さい場合は15時間15分継続。蓄電池125kWh残量が0%になってしまった場合も、翌日に晴れた場合は太陽光発電で得た電力を街区内へ供給できるともいう。
4月16日の「浦和美園 E-フォレスト」街開きセレモニーには、中央住宅の品川典久代表取締役社長、高砂建設の風間健代表取締役社長、アキュラホームの宮沢俊哉代表取締役社長、さいたま市の清水勇人市長、Looopの中村創一郎代表取締役社長、浦和美園E-フォレスト自治会の上島啓司副会長、内閣総理大臣補佐官で衆議院の村井英樹議員、埼玉高速鉄道の荻野洋代表取締役社長(順不同)らが登壇し、このモデルケースを全国へ拡大し、脱炭素・レジリエンスを推し進めていくとも伝えていた。
