【青山尚暉のわんダフルカーライフ】新型ノア/ヴォクシーとステップワゴンのドッグフレンドリー度をプレ比較

新型トヨタ ノア/ヴォクシーとホンダ ステップワゴンのドッグフレンドリー度をプレ比較
新型トヨタ ノア/ヴォクシーとホンダ ステップワゴンのドッグフレンドリー度をプレ比較全 21 枚

2022年はドッグフレンドリーカーの当たり年と言ってもいい1年になるはずだ。というのも、ガソリン車やハイブリッド車(HV)に比べて圧倒的に静かに走り、聴覚に優れた犬の耳にも優しいトヨタ『bZ4X』、日産『アリア』といったクロスオーバーSUVタイプの電気自動車(BEV)が登場すると同時に、乗員と愛犬、荷物の乗車&積載フォーメーション自由自在の、愛犬家ファミリーにぴったりと言えるMクラスボックス型ミニバンのトヨタ『ノア/ヴォクシー』、ホンダ『ステップワゴン』の新型が揃う1年でもあるからだ。

トヨタ ヴォクシートヨタ ヴォクシー

今回は、後者のMクラスボックス型ミニバンのノア/ヴォクシーと新型ステップワゴンのドッグフレンドリー度を、わが家の自称自動車評論犬!? ジャックラッセルのララとともにプレ比較してみたい。ただし、ノア/ヴォクシーはすでに試乗済みだが(筆者本人)、ステップワゴンは5月中旬の発売ということもあって、実車確認のみで未試乗であることをお断りしておきたい。それでも、ドッグフレンドリーカーとしての違いを浮き彫りにすることはできそうなのである(あえて走行性能については触れない)。

ホンダ ステップワゴンホンダ ステップワゴン

◆乗降性や居心地は?

まずは犬の乗降性である。クルマの犬の特等席は後席。SUVやステーションワゴンの場合は後席に限られるが、ミニバンなら乗車人数によって、3列目席に乗せることができる自由度が魅力だ。いずれにしても、犬はスライドドアから乗り込み、降りることになる。大型犬なら自身で乗降するのが当たり前である一方、小型犬は抱っこしての乗降もあるはずだが、わが家のジャックラッセルのララのように、自身で乗り降りするのを好む犬もいるはずだ。そこで重要なのが、スライドドア部分のステップ部分の高さ。ノア/ヴォクシー、ステップワゴンともにステップとフロアに段差がないのが嬉しい特徴で、その高さはノア/ヴォクシーが地上高390mm、ステップワゴンも地上高385mmと大差なし。いずれもかなり低い部類で、健常であれば小型犬でも楽々乗り降りできる高さと言っていい。

トヨタ ノア ユニバーサルステップ装着車トヨタ ノア ユニバーサルステップ装着車ホンダ ステップワゴンホンダ ステップワゴン

2列目席の犬の居心地はどうだろう。実は、先代、および現行型ノア/ヴォクシーは2列目キャプテンシートを選んでも、前後だけでなく、左右のスライドも可能なため、簡単操作でセミベンチシート化でき、小型犬から大型犬までをフラットな座面で乗せることができたのだ。が、先代ステップワゴンの2列目キャプテンシートは左右のスライド機構がなく、そうした使い方、乗せ方をすることはできなかった。先代ステップワゴンの場合、2列目席をベンチシート的に使うのであればキャプテンシートを諦め、ベンチシート仕様を選ばざるを得なかったのである。ところが新型ステップワゴンはついに2列目目キャプテンシートの左右スライド機構を追加。その点では、両車の優劣はなくなっている。

トヨタ ノア/ヴォクシートヨタ ノア/ヴォクシーホンダ ステップワゴンホンダ ステップワゴン

では、2列目キャプテンシートの犬の乗車性で肝心な座面のサイズはどうか。ノア/ヴォクシーは座面長510mm、キャプテンシートを中寄せした時の座面幅990mm。一方、新型ステップワゴンは座面長520mm、キャプテンシートを中寄せしたときの座面幅1060mmと、特に幅方向のゆとりでステップワゴンがやや優位に立つと言っていい。ノア/ヴォクシーは745mmものストレート超ロングスライドを実現すべく、キャプテンシート一脚のシート幅を狭めに設定しているからである。

ホンダ ステップワゴンホンダ ステップワゴン

◆3列目の使い勝手

次に、2列目席にも人が乗るような場面で威力を発揮する3列目席の犬の乗車性を見てみよう。ノア/ヴォクシーのシートサイズは、座面長430mm、座面幅1190mm。ステップワゴンは座面長420mm、座面幅1145mmと、やや小ぶりになる。これは、ノア/ヴォクシーの3列目席が左右跳ね上げ格納式なのに対して、ステップワゴンは伝統の床下収納式という違いも、シートサイズに表れているからである。ただし、下の写真を見ても分かるように、座面の厚みというか、かけ心地、犬の寝心地!? の快適感では、ステップワゴンが優勢とも言える。床下収納の利を生かし、クッションにより厚みにこだわっているからだ(左右跳ね上げ式の場合、格納時のラゲッジスペースの幅を確保するため、シートを薄く作らざるを得ない)。

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ノア/ヴォクシー、新型ステップワゴンともに、2-3列目席間の移動が可能だ。つまり、2列目キャプテンシートの間にスルー空間があることによる。その隙間はノア/ヴォクシーが実測140mm、ステップワゴンも実測140mm(どちらももっとも狭い部分)と、ぴったり同じである。大型犬、太った犬だと通過は難しいものの、小型犬のジャックラッセルであればスイスイだろう(筆者も通れる)。スライドドアから2列目席のウォークイン操作なしで、2列目席フロアから3列目席に移動できる便利さが両キャプテンシート車にはあるということだ。

◆空調管理や音も大切なポイント

愛犬を乗せてのドライブでは、とくに暑い時期の車内の空調環境も大きなドッグフレンドリーポイント要件になる。犬は1年中、毛皮を着ていて、足の裏からしか発汗できず、暑さによって熱中症になりやすい生き物でもある。犬の乗車場所に、しっかりとエアコンの冷風が届く必要があるのだが、その点では両車ともに2、3列目席の頭上にもエアコン吹き出し口があり、温度設定も可能だから、空調環境においては、2列目スライドドア部分の窓のロールサンシェードの装備とともに、互角と言っていいだろう。

トヨタ ノア/ヴォクシートヨタ ノア/ヴォクシー

ここでちょっと話の方向が逸れるものの、バックドアの開閉音について言及したい。というのは、ボックス型ミニバンのバックドアは大きく重く、閉める際、最後のところでガッシャンと大きな音と振動を伴いがちだ。これが、車内の空気圧にも影響し、聴覚に優れた犬にとって歓迎できるはずもない。先代ノア/ヴォクシー、ステップワゴンでは、最後のところまで静かにスーッと閉まってくれるパワーバックドアの設定はなかったのだが、新型は両車にパワーバックドアが用意され、最後のところでスッと静かに閉まるその装着車であれば、バックドアの開閉におけるドッグフレンドリーポイントになる。ゆえに、装着車同士の比較では、その点でどちらもパワーバックドア装着車なら合格。優劣はない。

大型犬、多頭の乗車、あるいは大型クレートの使用時には、3列目席を格納し拡大したラゲッジスペースに愛犬を乗せることもありうる。ボックス型ミニバンの場合、3列目席用のエアコン吹き出し口があることも、そこに乗せやすい理由になるわけだ。で、その際のバックドア側からの犬の乗車性では、ラゲッジスペースの開口部地上高と段差なさがポイントになる。3列目席格納時のノア/ヴォクシーのラゲッジフロア地上高は500mm。ステップワゴンも510mmと大差なく、どちらも極めて低い部類で、乗降性は文句なしと言うことができる。世界のステーションワゴンのラゲッジルームのフロア地上高平均値が約620mmであることからも乗り降りのしやすさが分かるはずである。

◆大きな差はないように見えるが…

というわけで、2列目キャプテンシートを中寄せしたときのシート幅こそステップワゴンがやや優位になるものの、それ以外の項目では両車に大きなドッグフレンドリーポイントの差はないように思える……のだが、実はそうとも言い切れない。というのは、両ハイブリッド車の装備のうち、車内外でコーヒーメーカーや簡易電子レンジなどの家電品が使え、ドライブ中、愛犬同伴可能なカフェやレストランが見つからなくても、好きな場所なクルマを止めて、広々とした車内を「どこでもドッグカフェ」にできるAC100V/1500Wコンセントを用意しているのはノア/ヴォクシーだけなのである(ちなみにセレナを含む日産車にもない)。

ステップワゴンの先代にはオプション設定されていたものの、新型にはその設定がないのである。新型の開発陣にその理由を聞いたところ、「先代のオプションとしてあまり需要がなかった…」ということらしい。たしかに、めったに使うものではないにしても、愛犬とのドライブシーン、および愛犬同伴で避難所に避難しにくい災害時には大いに威力を発揮してくれる機能だけに、残念である。

もっとも、その点を除けば、両車の高いドッグフレンドリー度に差はなく、ノア/ヴォクシー、新型ステップワゴンのどちらを選んでも、愛犬に喜んでもらえることは間違いないように思える。なお、走行性能、走行中の車内の静かさを含む愛犬にとっての快適性については、新型ステップワゴンの試乗が済み次第、改めて紹介させてほしい。

ジャックラッセルのララジャックラッセルのララ

《青山尚暉》

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