パリ協定でCO2規制が厳格化される中、外部電源からの充電が可能なプラグインハイブリッドカー(PHEV)やバッテリー式電気自動車(BEV)などへの置き換えが今後加速度的に進むとみられている。
日本ではBEVは2009年に三菱自動車が『i-MiEV』、PHEVは2011年にトヨタ自動車が『プリウスPHV』で口火を切るなど、早い段階から取り組んでいたものの今日に至るまで需要が広がらず、ほとんどの自動車ユーザーにとって未体験の世界。
そこで自動車ニュースサイト『レスポンス』はBEV、PHEVのユーザーを対象とするアンケートを実施し、実際に購入、使用してみてどうだったかということについてのボイスを収集してみたので、寄せられた声の一端をご紹介しようと思う。今回は航続距離、インフラについて。
航続距離と出先充電の整備はとりわけBEVユーザーにとっては気になるポイント。購入前と購入後の印象を回答してもらったところ、次のようにパターンが分かれた。

◆購入前は心配だったが、使ってみたら問題はなかった。
「航続距離が心配だったが、二日おきに充電していれば何の心配もいらない。 外での充電にやや不安は残るが、それもよほど遠出しない限り心配なさそう」(2代目リーフe+ オーテック)
「航続距離の短さが心配であった。乗ってないときに充電しておけば実用上航続距離も問題ない」(BMW i3)
「航続距離、充電時間、充電インフラが不安材料でした 。航続距離は満足。充電時間は専用充電器により大変満足。充電インフラは気にならず、自宅充電のみで済んでいます」(テスラ・モデル3)
BEVは航続距離が短いというイメージが強いが、自宅に普通充電器を備える場合、ワントリップ300km程度であれば無充電で帰ってくることができるモデルが増えた。近所、あるいはワンデードライブが大半というユーザーにとってはBEVは価格以外、忌避する理由がなくなってきたと言える。また「セカンドカーとして近所の買い物や妻の通勤用に購入したので不安なし」(三菱 i-MiEV)など、最初から航続距離や出先充電が気になるような使い方をしない前提で購入したために、不満なしとする回答もあった。

◆購入前に懸念していた。購入後も懸念、不満は払拭されていない。
「充電インフラの利便性が懸念材料だった。マンションに充電設備がないため今も解消されていない」(日産リーフ、アウディ車種不明の2名が同様の回答)
「長距離走行時の充電インフラが懸念材料だった。今も改善されていない」(テスラ・モデル3。2名が同様の回答)
テスラは独自規格の超高速充電器「テスラスーパーチャージャー」の増設を進めているが、地域によって充電器の数に大差が出ており、ない地域では日本規格のCHAdeMO充電器を使う必要があることが不満につながったものとみられる。リーフにマンション居住者のオーナーがいるのは一時、充電を月額定額制のサブスクリプションで提供していた時代があり、マンションやアパート暮らしでも大丈夫と宣伝していたためであろう。急速充電器でも30分で充電できる電力量には限りがあるため、自宅充電に比べると利便性は格段に落ちる。不満が出るのもむべなるかなである。

◆PHEVの実航続距離が不満。
「EVモードの走行距離(カタログ値と実走行距離の乖離)が気になっていた 購入後、走行条件にもよるが概ねカタログ値の60~70%が 実走行可能距離なので ちょっと期待はずれというのが正直な感想」(ボルボXC90リチャージプラグイン)
「普通充電しかない車両な上に自宅は充電器が無いので、充電機会の少なさや、かけた充電時間の長さに対する充電量の少なさが不安だった。充電器については近所の道の駅を使えているものの、充電時間の長さと充電量の少なさの不満は解消されていない」(ボルボS60リチャージプラグイン)
PHEVユーザーで購入前に航続距離や充電性能に懸念を持っていたというユーザーは少なく、たまたまボルボに回答が集中することになった。自宅充電の場合は航続距離が公称値よりかなり短いことが、自宅に充電設備がない場合は出先での普通充電のパフォーマンスの遅さが気になったようだ。
日本では出力が3kWしかない普通充電器が主流で、たまに6kWがある程度。また充電スポットリストには載っているのに実際には休止中だったり使えなかったりというケースも非常に多い。バッテリー容量が大きくなりつつある今日のPHEVを出先で普通充電するというのは、いささか非現実的と言える。ちなみに欧州では7.2kWが標準で、現在は11kW~22kW機の普及が始まっている。日本もそのトレンドをキャッチアップしてほしいところだ。