鉄道ネットワークのあり方、国が方向性を…中国地方の知事が要望 JR西日本の不採算線区問題

広島県内の芸備線を走る列車。JR西日本の発表によると同線の東城~備後落合間は2018~2020年度の営業係数(100円を稼ぐために要する費用)が2万6906、2020年度の輸送密度が9人/日と、JR西日本の輸送密度2000人/日未満の線区では最悪の数字を示している。
広島県内の芸備線を走る列車。JR西日本の発表によると同線の東城~備後落合間は2018~2020年度の営業係数(100円を稼ぐために要する費用)が2万6906、2020年度の輸送密度が9人/日と、JR西日本の輸送密度2000人/日未満の線区では最悪の数字を示している。全 2 枚

5月18日に鳥取、島根、岡山、広島、山口の各県知事が一堂に会して開かれた中国地方知事会で、JR西日本の不採算線区問題に関して特別要望が表明された。

JR西日本が「鉄道の上下分離等を含めた地域旅客運送サービスの確保に関する議論や検討を幅広く行いたい」として、4月11日に公表した輸送密度2000人/日未満線区の収支状況では、山陰本線をはじめ、芸備線や木次線、山口線、美祢(みね)線など、中国山地を抜けるいわゆる「陰陽連絡線」の大半が含まれており、沿線に波紋を広げている。

これを受けた過去の記者会見では、島根県の丸山達也知事が国鉄分割民営化の経緯まで踏み込み、地域に負担を押し付けることは筋違いだと主張。鳥取県の平井伸治知事は乗って残す運動を繰り広げる必要があると述べているが、広島県の湯崎英彦知事は5月17日の定例会見で、JR西日本との芸備線利用促進検討会について「あくまで利用促進のための会議である」と述べ、存廃についての議論を行なわないと態度を硬化させている。

こうした流れを経て開かれた今回の知事会で特別要望として出された「鉄道ネットワークの維持・存続について」では、鉄道の廃止により地域が衰退し、地方創生が困難になるほか、災害時のリダンダンシー(冗長性)が失なわれ、国土の強靭化や均衡ある発展に逆行するとして「JRの広域的な鉄道ネットワークは、国鉄改革の経緯に鑑み、その実施者である国の責任において、適切に堅持されるべきである」とした。

その上で、今後の鉄道ネットワークの方向性を国が示すこと、鉄道事業者の届出のみで事業廃止や運行計画の変更ができる鉄道事業法を見直すこと、地域の鉄道を経済効率性だけで語り安易に他の交通モードへの転換を促さないこと、廃止された場合でも地方へ負担を転嫁しない仕組を構築することなどを、今後、国へ要望するとしている。

芸備線と並び収支が深刻な木次(きすき)線。名物の3段スイッチバックを含む出雲横田~備後落合間は観光客に人気があるものの、2018~2020年度の営業係数が8119、2020年度の輸送密度が18人/日と、芸備線東城~備後落合間に次いで深刻な状況だ。芸備線と並び収支が深刻な木次(きすき)線。名物の3段スイッチバックを含む出雲横田~備後落合間は観光客に人気があるものの、2018~2020年度の営業係数が8119、2020年度の輸送密度が18人/日と、芸備線東城~備後落合間に次いで深刻な状況だ。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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