アイシンの冷却モジュール、EVのスペース効率向上…人とくるまのテクノロジー2022

アイシン(人とくるまのテクノロジー2022)
アイシン(人とくるまのテクノロジー2022)全 4 枚

パシフィコ横浜で開催された自動車技術会主催の展示会「人とくるまのテクノロジー展」のアイシンブース。人目を惹いていたのはトヨタ自動車とスバルの共同開発バッテリー式電気自動車(BEV)トヨタ『bZ4X』/スバル『ソルテラ』向けの電気モーター駆動モジュールだったが、それは現行技術。将来技術として出した試作品はそれではなく、冷却モジュールと銘打たれたユニットだ。

パネルの説明はシンプルで、冷却システムを構成する冷却モジュール、冷却水を回すポンプ、その流れを制御するバルブをひとつにまとめるというもの。BEVには電気モーター、パワー制御ユニット、エアコン、バッテリー等々、温度管理を要する重要パーツがいくつもあり、現状ではそれぞれ独立した配管を持ち、クーラントや冷媒が通っている。その配管をひとまとめにできればクルマに占める配管のスペースの割合を大幅に減らすことができ、コストダウンはもちろん大型車はスペース拡大、小型車も容易にBEV化できるようになるというのが主な狙いだ。

効能はそれだけではない。“冷却”モジュールと書かれているが、アイシンの担当者の説明によれば、モジュール内で熱交換を行うことが可能。つまり冷却が必要な部分から得られた熱を加熱が必要な部分に回したり、その逆をやったりということができるというのである。その能力がどの程度なのかという諸元は公表されていなかったが、かりに電気モーターやパワーコンディショナー部を冷やすことで得られた熱をヒーターや着氷防止システム(BEVは寒冷期に着氷しやすい)に使ったりといった融通をきかせられれば、BEVの課題である冬季の電力消費を抑えることにもつながるかもしれない。

「電動化は単にクルマの動力を内燃機関から電気に変えるというだけではダメ。競争力を上げていくためには電動化に最適な構造はどういうものかを根本から考える必要がある」(アイシンの説明員)

現在、BEVの性能向上やコスト低減のトップランナーはアメリカのテスラだが、BEVはそのテスラを含めて進化が始まったばかり。急速充電に何十分もかかるようでは充電器設置業者が利益を上げることができず、ビジネスモデルが成立しない。そういう観点では競争はこれからが本番だ。今後、この種の新機軸はアイシンのみならずさまざまなテクノロジーファームから提案されることだろう。そういう新しい時代の幕開けを感じさせられる展示だった。


《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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