「人とくるまのテクノロジー展」の主役は国内外のサプライヤーだろう。欧米サプライヤーはCASE革命、カーボンニュートラルによって業態・コア事業を変革するところも増えているが、米国ボルグワーナーもそのひとつだ。
ドラスティックな転換は、パワートレインやアクスルの事業を切り離して、それら制御の上位レイヤとしてECUやビークルプラットフォーム事業に注力すると発表したコンチネンタルが業界を湧かしたが、ボルグワーナーもソフトウェアシフトと電動化シフトを進めるサプライヤーだ。2021年に同社のグローバルセールスのうち、電動化プロダクツはわずか3%だったが、2025年には25%、2030年には45%以上を目指すという。
4月には電動車のモーター事業を展開する中国のサントロール・オートモーティブ・コンポーネンツを買収し、eAxleなど電動車パワートレインのポートフォリオを強化している。動力モーターとギアボックス、インバーターを一体化したiDMは、今後同社の主力製品のひとつとなると思われる。すでに、800V SiCインバーターを搭載したiDMを製品化し中国プレミアムEVブランドに供給することを発表している。社名は伏せられているが、中国EVメーカーで800Vクラスのバッテリー・モーターの搭載車両をアナウンスしているのはBYDだ。BYDは世界のEV市場でテスラと販売シェアを競っている。
その中、国内市場で注目したいのは小型のiDM(Integrated Drive Module)だ。主に電気バスなどの大型車に搭載されているバッテリーの隣に展示されていたそれは、高さで60センチほどだろうか(資料がなく目測誤差含む)、かなりコンパクトだ。おそらく軽自動車のボンネットにも収まりそうなサイズ感だ。出力は75kW。入力電圧は250~450Vまで対応する。すでに量産体制に入っており、2023年には製品採用として完成車メーカーに出荷されるという。

BEVというと、これまでCセグメント、Dセグメントなどミドルサイズ以上のものが多いが、欧州や中国ではBセグメントのBEV市場が立ち上がろうとしている。バッテリーコストがネックとなるBEVはBセグ・Cセグ展開は利益がでないとされているが、グローバルでもボリュームマーケットであることは間違いない。とくに中国は国内の旺盛な市場ニーズを背景にコストダウンした小型BEVの世界展開を狙っている。
ボルグワーナーの小型iDMはこのニーズに応えるものだが、日本も例外ではない。BEVの波はいずれコンパクトカーや軽自動車にも広がってくるだろう。そのとき小型のiDMは車両開発の要になる。高効率モーターは、銅線の素材、コイルの巻き方、インバーターの小型化は、部品の配置、積層構造、回路設計、熱対策、ノイズ対策などチャレンジングな要素が多い。やりがいがある領域だが、従来モデルではOEMはサプライヤーに任せていた領域のため、設計・製造の蓄積に時間がかかる。

ティア1、ティア2が持つこれら技術をどう採り入れるかが、今後の車両開発の鍵を握る。先行するメーカーはすでに手を打っているし、動きが早いサプライヤーが、事業転換や業界再編に動いているわけだ。ボルグワーナーの動きはまさにこれを実践したものといえる。