首都高トンネル、深夜の点検作業に密着取材!

深夜に行われる首都高トンネル内の点検。年に一度のペースで実施される
深夜に行われる首都高トンネル内の点検。年に一度のペースで実施される全 14 枚

6月15日深夜、首都高速の埼玉新都心線(S2)上にある「新都心トンネル」において「トンネル防災設備点検」の見学会が一部メディア向けに実施された。トンネル内で発生する事故や災害対応に欠かせないこの作業は年に一度行われる。その点検の模様をレポートする。

【画像全14枚】

◆現場は首都高・埼玉新都心線内の「新都心トンネル」

見学会の現場となったのは首都高速・埼玉新都心線にある「新都心トンネル」。埼玉新都心線はさいたま市中央区にある与野ジャンクションから同市緑区のさいたま見沼出入口に至る全長5.8kmで、このうち新都心トンネルの長さはその約半分の約2.9kmにも及ぶ。今回はこのトンネル内にある防災設備の点検作業現場に同行した。

点検対象はスプリンクラーから消火栓、火炎検知器など多岐にわたる。それらを一つずつ点検していくには相応の時間もかかることから、この日はトンネル内上り線を一時通行止めにして実施された。それだけに見学のために指定された集合時刻は午後9時。そこから深夜にかけて作業の様子を見学することになった。

最初にトンネル内の設備点検の重要性が説明された。高速道路では車両が高速で走行するため、トンネル内で事故が発生すると火災に至ることも少なくない。火災が発生すればトンネル内は炎だけでなく大量の煙が発生し、それはドライバーの視界を失わせるだけでなく、一酸化炭素中毒すら招きかねない。そうした事態に素早く、確実に対応するためにも設備の点検は欠かせないというわけだ。

こうした状況に陥った際、重要なのが換気だ。事前説明を受けた場所は「新都心換気所」で、建屋内には巨大な円柱状の建造物が空へ向けてそそり立っていた。直径2m、高さは10m以上はあるだろうか。この設備はトンネル内の排気口から吸い込んだガスを外へ放出する「換気ファン」で、トンネル内の汚れた空気を何重もの特殊なフィルターを通して外気に放出するためのものだ。

また、トンネル内でよく目にするのが天井と並行して横にぶら下げられている2本の円柱状「ジェットファン」だ。ここで興味深い話を聞いた。このファンによってトンネル内の空気が送り出されるわけだが、その向きは必ず進行方向に向けて送られて排出されているという。つまり、万が一トンネル内が煙に発生した際も、煙が換気ファンによって強制的に排出されることになる。その方向は、事故現場手前で車を止め、引き返して避難する人がいる方向へは煙を流さないようになっているわけだ。

ただ、これには、トンネル内の異常をドライバーが認識できないままトンネル内に突っ込んでしまうという問題も孕む。だからこそ、トンネル手前にある表示板や信号の確認は大切で、これをしっかり確認の上、トンネル内には入ってもらいたいということなのだ。とはいえ、通行止めの表示が出ていたからといって、高速道路上で最初に停止するのは危険も伴う。首都高速によれば、こうした事態への対処方法も今後の大きな課題として捉えているそうだ。

スプリンクラーによる水噴霧の点検作業。50mごとに実施されていたスプリンクラーによる水噴霧の点検作業。50mごとに実施されていた

◆自動火災検知器から水噴霧、消火栓まで丁寧に点検

一通り説明と準備が整ったところで、いよいよ通行止めとなっているトンネル内の路上へと出ることとなった。これまで開通前のピカピカの路線で車道に出たことはあったが、提供中の路線を通行止めにしての体験は初めてだ。路線に近づくに従い、異次元の空間に出るようなワクワクとした気持ちになってくる。

そして、ついに首都高の車道に徒歩で出ると、そこはちょうどカーブになっている地点で、路面はかなりバンクが付いていた。走行中もカーブでバンクが付いているのは感じることができるが、自分の足で進行方向に向って立ってみると、その傾きは想像していた以上に大きい。まさに首都高速の路上に立っている自分を実感した。

最初に見学した点検は、災害発生時に自動的に天井から霧状に放水するスプリンクラーだ。トンネル内に鳴り響く合図ともに、天井から路面に向けて一斉に放水が始まった。放水時間はおよそ10秒間程度。停止後も周囲はしばらく霧が発生したようにもなり、周囲は何も見えなくなるほど。いかに大量の放水が行われたかがわかる。放水される区間は約50mの範囲で、点検はその区間ごとに行われていた。

この放水は「自動火災検知器」によって自動通報され、管制センターのコントロールで作動する仕掛けだ。検知器はトンネル内にほぼ25m間隔で設置されており、トンネル内が煙で覆われていても熱センサーによって検知できるようになっている。また、放水に使われるスプリンクラーの点検も行われており、トラックのカゴに乗り込んだ作業員が一つひとつ丁寧にチェックしていた。

次は消火栓の点検だ。この設備はおよそ50m間隔で設置されており、消防用の消火栓が備えられる他、消火器や泡消火栓が用意されている。消火器や泡消火栓は一般人も扉を開けて使うことができる。そこで、見学会では参加者も消火栓を使った放水を体験することができた。

ただ、この日はあくまで点検作業の一環で行われる体験。泡を使うと片付けが大変になってしまうので、この時は普通の水による放水だ。放水口は太めのガングリップ形状となっており、さぞや強い放水の反動があるかと身構えたが、放水が始まってもそれほど大きな反動はなく、感覚としては家庭用とそれほど変わらない。その意味では、いざという時に男女を問わず、誰でも消火作業に入ることができると言っていいだろう。

避難通路へ続く非常口。ここはスライド式ドアとなっていた。地上出口の住所も表記されている避難通路へ続く非常口。ここはスライド式ドアとなっていた。地上出口の住所も表記されている

◆非常口にある避難通路から地上へ“脱出”を初体験

一通りの設備の見学を終えた後は、非常時の避難通路の体験だ。首都高速によれば、非常時には地上へ出られるよう。350m以内には必ず設置されているそうだ。周囲には最寄りの避難通路までの距離が表示されており、それに従って最寄りの通路から非難する。ドアの開閉は管制センターで管理されており、ドアが開けられたこともすべて把握されるそうだ。

避難通路は地上出口へつながっており、トンネルの設置場所によって出口までの距離は様々だ。今回の新都心トンネルは地上までの距離が比較的短い方だというが、それでも階段を上って出口付近までたどり着くと息が切れる。普段の運動不足を実感する。

そして、いよいよ地上出口だ。が、そこは鉄製の扉で塞がれていた。そこで壁面にあるレバーを押し下げると、「危険です。扉が開きます。離れて下さい」とのアナウンスと共に扉が開き始めた。その間、およそ20秒ほど。扉は完全に開き、そのまま地上へと出られるようになった。首都高速の話では、新都心トンネルでは階段で上がる仕組みだが、横浜北勢線トンネルのように、すべり台で降りる方法もあるそうだ。

ただ、出てみて感じたのは、その場所がどのなのかわからないということ。そこで首都高では、QRコードを読み取ると地図が表示できる方法なども検討しているところだという。

地上へやっと出られても、夜間だと周囲の状況がわかりにくいのは確かだ地上へやっと出られても、夜間だと周囲の状況がわかりにくいのは確かだ

そして、最後はトンネル入口側の警報版と信号機の見学だ。冒頭にも述べたように、トンネル内で異常があった際には、この表示によって速やかに状況把握ができるようになっている。高速道路には信号がないと信じ込んでいる人は結構多く、ここで赤信号を表示してもなかなか停止してくれないのが現実なんだそうだ。

過去にはこの表示があったにもかかわらず、トンネル内に入り込んで痛ましい事故につながった例もあった。この表示の重要性を改めて認識しておきたい。

この位置では拡声スピーカーの体験も行った。この設備は非常時に音声を使ってトンネル内の異常を知らせるもので、スピーカーはおよそ200m間隔で設置されているという。かなりの音圧レベルで流されるため、我々はこのトンネルから出た位置での見学となった。スピーカーから発生される音はかなり明瞭で、トンネル外でもしっかりと聞き取れる。

ただ、この音は周囲の住宅にとっては“迷惑”にもなる。個人的には、非常時ならそれは仕方がないのではないかと思ったが、首都高速では非常時以外の運用も考えているところで、そのためにもこの音がトンネル内で確実に伝わりながら、外へ漏れない方法を試行錯誤している最中なのだという。

この日もそのための実験が行われたが、結果は今ひとつ。とはいえ、こうした積み上げがより安心安全な首都高速の提供につながっていっていることを改めて実感した次第だ。

トンネル内の信号。赤になっているときはトンネル内には入らないよう、周囲を確認しつつ停止するのが大切だトンネル内の信号。赤になっているときはトンネル内には入らないよう、周囲を確認しつつ停止するのが大切だ
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《会田肇》

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