【プジョー 308 新型試乗】ガソリンの「アリュール」はコスパ最高の韋駄天グルマ…中村孝仁

プジョー 308アリュール
プジョー 308アリュール全 28 枚

6月17日にステランティスはプジョー、シトロエン、DSの価格改定を発表した。改定と言っても下がったものはなく、要は値上げである。そのリストの中に『308』は含まれていなかった。つまり、発売開始時点ですでに新価格を織り込み済みだったということだろう。

今回は『308アリュール』のガソリン仕様に試乗してみた。ご存じの通り308はベーシックレンジの「アリュール」と上級モデルの「GT」という2グレードの設定なのだが、何故かガソリンモデルにGTの設定がない。というわけで308アリュールのガソリン仕様は最もベーシックで価格コンシャスな308である。

プジョー 308アリュールプジョー 308アリュール

あまり喜べない話だが、プジョーの値上げはこの1年で3度目。今年に入ってこれが2度目である。それでも308アリュールのガソリン仕様は305万3000円。試乗車はETC、フロアマット、パールペイントを含み314万6170円だから、正直今どきのクルマとしては相当にバーゲンプライスのクルマと言って差支えないと思う。

因みにライバルのVW『ゴルフ』は一番ベーシックな「eTSIアクティブベーシック」で301万7000円~となっている。以前にこのグレードの豪華版eTSIアクティブに試乗した時は車両価格が312万5000円だったものが、今では323万8000円となっている。それに当時の試乗車は47万円以上のオプションが載っていたので、仮にベーシックグレードを選んだとしても価格的にはプジョーと大きな差はないと思う。

ステアリングの微妙な感覚を楽しめるのはゴルフより308

プジョー 308アリュールプジョー 308アリュール

それはともかくとして、ガソリンの1.2リットルピュアテックである。ディーゼルと比べると22万4000円安い。年数と距離を乗る人ならこれは数年で吸収できてしまうかもしれないが、日頃あまり走らない人だとこちらを選んだほうが良いかもしれないし、とにかく走り出した習慣からノーズの軽さを実感できる(ディーゼルと比較して)。

古式ゆかしいとは言わないけれど、リアにはいまだにトーションビームを使っている足回りを持ちながら、快適さと高い運動性能を両立させている点もゴルフと同じ。でも走っていてやはりステアリングの微妙な感覚を楽しめるのはプジョーの方である。

プライスコンシャスという美点のみならず、運動性能的にもガソリンモデルの方が身軽で軽快なことはディーゼルと比較すると明白で、車両重量はガソリン仕様が70kg軽くそのほとんどはフロントの軸重の違いのはずだから、ノーズが軽く軽快な動きは至極当然なのである。

コスパ最高の韋駄天グルマ

プジョー 308アリュールプジョー 308アリュール

最近のメータークラスターから読み取れる情報は、昔のクルマと比べると格段に少なくなった。最低限スピードメーターと燃料計は読み取ることができる。昔ならスピードメーターの隣に大型のタコメーターが鎮座して、マニュアル操作の場合にギアシフトのタイミングを測ったりしたものだが、今回の308は確かにタコメーターこそついているものの、それはほとんど飾りというか単なるグラフィックディスプレイに過ぎず、その中にデジタルの回転計がエンジン回転を表示してはくれるものの、読み取って何かアクションを起こそうという気にはならない。それだけ自動車が機械的イメージから電気的イメージに近づいている良い例なのかもしれないが、こうした傾向はあまり喜ばしいものではない。

かつては輸入車が国産車よりはるかに高いという構図が当たり前であったが、近年同じセグメントなら国産車も輸入車も大きくは変わらない価格設定となっている。例えばほぼ同じセグメントのホンダ『シビック』などは最低価格が319万円だから、価格的にはプジョーの方が安い。まあ、ナビを標準装備するなど装備的にはホンダの方が上だが、いずれにせよかつてのような構図は今はないということだ。

というわけで308アリュールのガソリン仕様はコスパ最高で、軽快な身のこなしを身上とする韋駄天グルマである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  2. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  3. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  4. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
  5. 【BYD シーライオン7 新型試乗】全幅1925mmの堂々サイズも「心配無用」、快適性はまさに至れり尽くせり…島崎七生人
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
ランキングをもっと見る