欧州におけるLCA制度化の動向と新しいデータ活用時代の到来【LCAが変える自動車の未来 第3回

欧州におけるLCA制度化の動向と新しいデータ活用時代の到来【LCAが変える自動車の未来 第3回
欧州におけるLCA制度化の動向と新しいデータ活用時代の到来【LCAが変える自動車の未来 第3回全 3 枚

ガソリン車などの従来の内燃機関(ICE)におけるCO2排出量削減の規制分野は、部品製造、車両製造、燃料製造、利用・走行、回収・リサイクルというサプライチェーンの中で、主に利用・走行時の排出量規制が中心であった。いわゆるTank to Wheel(自動車の燃料タンクから実際に走行させる車輪までの範囲)という、テールパイプ(排気システム)から直接排出されるCO2を減らすことに、自動車産業はこれまで注力してきた。

ところが欧州を中心に自動車のBEV(バッテリー式電気自動車)化が進むと、状況が変わる。BEVでは、利用・走行におけるCO2排出量はゼロである。規制をかけるならば、部品製造から回収・リサイクルまでのサプライチェーン全体のCO2排出量で評価しなければ意味がない。つまりICEからBEVに製品が変化したことで、CO2排出量削減の視点は、利用・走行からLCA(Life Cycle Assessment)へと変化する。

注目される「製品LCA」に基づく環境評価

 LCAは大きく二つに大別でき、企業または事業所全体を評価する「組織LCA」と、車種ごとに製品を評価する「製品LCA」がある。「組織LCA」は、組織(企業)や事業所単位のサプライチェーン全体の環境評価であり、企業価値向上や株価向上等の観点でこれまでにOEMやTier1サプライヤーで導入が進んでいる。GHG(温室効果ガス)排出量の算定方法は、投資家による企業ごとの環境施策の横比較ができるよう、GHGプロトコル(Scope3)に従ってグローバルでスタンダード化されている。一方の「製品LCA」は、組織LCAと同様に原料調達から廃棄までのサプライチェーン全体の環境評価ではあるが、製品個々の環境性能を評価するため、評価が製品売上に直結しうる。算定方法は、国際標準規格ISO14040/40が用いられるが、詳細な基準が明確ではないという課題も存在する。

2つのLCA概要について述べたが、自動車のBEV化加速と共にLCAの着眼点が「組織LCA」から「製品LCA」へシフトしつつある。企業単位のGHG排出量では、製品ポートフォリオや生産台数などに依存するため、環境性能を単純に比較できず、良し悪しを判断することが難しく、また上限値などの規制もかけにくい。製品改善に目を向ければ、製品単位でLCAを評価することが必要となる。「製品LCA」は「組織LCA」に比べて計算の難易度は高くなるが、環境性能を向上させるために何を改善すべきか、一歩踏み込んだ議論が可能になる。


《PwC Japan合同会社》

アクセスランキング

  1. 伝説のACコブラが復活、「GTロードスター」量産開始
  2. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  3. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  4. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
  5. 【BYD シーライオン7 新型試乗】全幅1925mmの堂々サイズも「心配無用」、快適性はまさに至れり尽くせり…島崎七生人
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  2. 独自工会、EV減速でPHEVに着目、CNモビリティ実現へ10項目計画発表
  3. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
ランキングをもっと見る