「完成した!…のか?」排気量7ccの超小型エンジンを組み立ててみたら「学び」が多すぎた[後編]

超小型エンジン組み立てキット『Toyan X-Power』(中央)を本物のエンジンと比較
超小型エンジン組み立てキット『Toyan X-Power』(中央)を本物のエンジンと比較全 32 枚

レスポンス編集部が入手した、実際に動く小型エンジン製作キット、『Toyan X-Power』。エンジニアリングにはど素人の編集部員がこのキットを組み立て、実動エンジンを目指す企画の後編をお届けする。

前編では妙に綺麗な重箱に詰め込まれた部品を確認し、中国語とイラストで表現された説明書に悪戦苦闘しながら、カムシャフトを組み立てるところまで進めた。普通のプラモデルでは得られない、「自分で作ったものが動く」快感にニヤケが止まらない筆者だが、今回はいよいよ点火を目指していく。

超小型エンジン組み立てキット「X-Power」、キャブレターの制作風景超小型エンジン組み立てキット「X-Power」、キャブレターの制作風景

モノづくりはコミュニケーションのネタになる

さて、筆者はレスポンス編集部にアルバイトとして所属しながらも、本業は大学生であり、しかも自動車部に所属している。この日も部室で黙々とエンジン製作をしていたところ、何名かの後輩たちが製作を手伝ってくれると言う。

作業を任せてみると、瞬く間にエンジンの本体を組み上げていった。優秀な後輩を持てて幸せである。しかし、よく見るとガスケットを上下反対に装着しようとしていた。自動車部らしいなぁとしみじみ思う。

彼らは多少のミスにもめげず、次の工程であるキャブレター作りを始めた。入部したての1年生も興味津々で、説明書や解説動画を見ながら試行錯誤している。1人で作っていても楽しいが、機械好きな友人や、家族で作れば会話も増えて、楽しさが倍増すること請け合いである。モノづくりはコミュニケーションにも役立つということを実感した。

超小型エンジン組み立てキット『Toyan X-Power』、参考動画を見ながら悪戦苦闘超小型エンジン組み立てキット『Toyan X-Power』、参考動画を見ながら悪戦苦闘

エンジン製作を通じて社会の構図を学ぶ

かわいい後輩たちがせっせとキャブレター作業に勤しむ間、1人でもできる部分を進めていく。セルモーターを取り付け、排気管を取り付ける。この排気管は柿ピー程度のサイズ。本当にこれで適切な排気ができるのか気になるところだ。

このあたりから、だんだんビスのサイズが合わなくなってきたり、部品が足りないんじゃないかという会話が増え始めた。皆疲れてきて、投げやりになってきたものと見える。また、複数人で分業を進めた上、適切な情報共有を全員が怠ったため、自分の担当以外の場所で一体何が起こっているかも分からない。意図せずして「社会」を学んでしまった気分になる。このエンジンキット、得られる学びが多すぎるのではないか。

個人の作業は迷走しているが、見た目はかなりエンジンっぽくなってきた。配線やホースを張り巡らせれば、外見はほとんど完成と言って差し支えないだろう。試しにフライホイールをくるくると回してみれば、組み付けられたベルト類がきちんと回転し、最終的には反対側のラジエーターファンが動く。内部構造もとりあえずは問題が無いようだ。ファンとラジエーター本体がガッツリ干渉しているが、力技でごまかす。これで、名実ともに、夢のミニエンジンが完成だ。

超小型エンジン組み立てキット「X-Power」、完成(?)超小型エンジン組み立てキット「X-Power」、完成(?)

いよいよ始動!しかし…

完成したとはいえ、実際に動かすためにはもう一手間かかる。バッテリーを組み合わせ、さらに燃料を入れねばならない。そこで、ラジコン用のLi-Poバッテリーと、燃料を手配した。ちなみに燃料はガソリンではなく、メタノールをベースに着火促進のためのニトロメタンが加えられた、エンジンラジコンなどで利用されるものだ。

まずはバッテリーを接続し、始動のテストを行う。燃料は入れず、とりあえず機構がしっかり働くかどうかという確認である。ここまでの苦労が、いよいよ形になる時が来たのだ。万感の思いを込めながら、スタートボタンをポチッと押す。すると、「ウィーン!」という音と共に、元気よくフライホイールが回り始めた。

…と、思ったのも束の間、すぐに「ガガガッ」という音が混ざり始めた。よく見ると何らかの抵抗を受けてベルトが滑っており、正常に回転しているとは言えない状況だ。手回しする分には何も問題がなかったのだが、これでは実際に始動することはできないように思われた。

超小型エンジン組み立てキット『Toyan X-Power』超小型エンジン組み立てキット『Toyan X-Power』

改めて調べ直してみると、バルブタイミング合わせを失念していたことが発覚。エンジンの吸気と排気に重要な役割を果たすのがバルブであるが、これの開閉タイミングがバルブタイミングだ。これがしっかり取れていないと、大小様々な不具合を起こす可能性があるのだ。せっかく組み上げたエンジンを、また分解して組み直し…目の前が暗くなったことは言うまでも無い。

しかしながら、このエンジンを製作している時間は非常に充実したものだった。部員間の会話のネタにもなり、純粋に手先を動かしてモノを作ることを楽しめた。バルタイ合わせも面倒な作業にはなりそうだが、授業と部活の合間を縫って、コツコツと進めていければと思う。果たしてこのエンジンに火が灯される日は来るのか。その暁には、改めてレポートしたい。

超小型エンジン組み立てキット『Toyan X-Power』を本物のエンジンと比較超小型エンジン組み立てキット『Toyan X-Power』を本物のエンジンと比較

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