車の価値を高め続ける KINTO FACTORY…トヨタがアフター事業に注力[インタビュー]

KINTO FACTORYの担当者である、トヨタ自動車株式会社 利根優太氏(BR新モビリティビジネス準備室 主任 国内事業部 事業計画室)と、株式会社KINTO 板東輝人氏(総合企画部)に詳しい話を聞いた
KINTO FACTORYの担当者である、トヨタ自動車株式会社 利根優太氏(BR新モビリティビジネス準備室 主任 国内事業部 事業計画室)と、株式会社KINTO 板東輝人氏(総合企画部)に詳しい話を聞いた全 3 枚

1台のクルマに長く乗り続けるユーザーが増えている。

一般財団法人 自動車検査登録情報協会の統計データによれば、2021年3月末時点で乗用車の平均車齢は8.84年。前年比で0.12年延び、1993年から29年連続で保有車両の高齢化が進んでいる。

こういった背景がある中で、トヨタ自動車とKINTOの両社は、クルマのオーナーに向けた愛車カスタム・機能向上サービスとして「KINTO FACTORY」を2022年1月28日から開始した。

同サービスの大きな特徴は、トヨタ・レクサス既販車のソフトウェア・ハードウェアの機能やアイテムを最新の状態に“進化”させる点だ。

これまで新車を開発・製造し世に送り出すことを主業としてきたトヨタ自動車が、ビジネス領域を広げ、車両販売後のアフターサービスに注力する舵を切ったことが窺い知れる、革新的な取り組みといえるのではないだろうか。

当編集部は、KINTO FACTORYの担当者である、トヨタ自動車株式会社 利根優太氏(BR新モビリティビジネス準備室 主任 国内事業部 事業計画室)と、株式会社KINTO 板東輝人氏(総合企画部)に詳しい話を聞いた。

同サービスが立ち上がった背景について、トヨタ自動車の利根氏は「これまでトヨタ自動車は、新車を製造販売することでお客様に良い車を提供してきた歴史があります。一方で購入後のお客様に“嬉しさ”を提供できていませんでした。新車を購入しなければ、最新機能や安全装備を享受できない状況を、なんとかしたいという思いがありました。トヨタ・レクサス車にお乗り頂いているあらゆるお客様に、最新の機能や安全装備を提供するべくスタートしたのがKINTO FACTORYです」と話す。

購入後のカーオーナーの“困りごと”をサポート

トヨタ・レクサス既販車に乗り続けるユーザーにヒアリングし、ニーズが高かった“困りごと”をサポートするために「アップグレード(基本性能の向上、安全機能などの後付け)」「リフォーム(経年劣化で傷んだ内外装リフレッシュ、アイテム交換)」「パーソナライズ(ドライバー運転データを元に、個性や嗜好に合わせて設定の最適化)」の3カテゴリを設けたという。

対応エリアを拡大中

サービス開始から約半年。7月21日時点で、東京・静岡・大阪・千葉・愛知と限定的でありながらも対応エリアを徐々に拡大し、順調に申込が増えているという。

KINTOの板東氏は人気商品や反響について「特にニーズが高いものは『後付けブラインドスポットモニター』と『後付けアクセサリーコンセント』のほか、アルファード・ヴェルファイアのハイブリッド車専用アップグレードメニューとして、ソフトウェアの書き換えで反映される『なめらかブレーキ』が好評です。トヨタ自動車とKINTOの両社によるメーカー純正サービスで、アイテム交換や後付け商品にメーカー保証がある点が、申込の大きな決め手になったというお声を頂いています」と教えてくれた。

対象車種は、トヨタ・レクサスをあわせて8車種(アクア、プリウス、プリウスα、アルファード、ヴェルファイヤ、レクサスUX、NX、CT)。車種によって年式や対応商品が異なるが、新車と中古車どちらでも対応可能。ただし申込後に、改造車や保安基準不適合車、事故修復時に純正部品等以外での修理や、純正部品以外のパーツ追加、施工等(カー用品店でのスピーカー取付、社外品の安全装備取付など)を行っていることが判明した場合は施工不可とのこと。

申込は、KINTO FACTORYのECサイト(※車検証の画像アップロード必須)だけでなく、トヨタ・レスサス販売店でも受け付けている。申込ユーザーが指定した施工受付店の混雑状況や部品手配状況、ユーザーの施工車両の状態によって納期が前後する可能性があるほか、​作業中の代車は用意がないため注意が必要だ。​

施工作業は、トヨタ自動車のメンバーとKINTO FACTORY施工受付店スタッフの協力体制があり、事前にテスト車両で施工作業を行っているという。施工対象物の不具合は、アイテムごとに期間や距離が異なるものの、保証の条件に当てはまれば保証対象となる。また、施工作業が原因による不具合は、その都度相談となるが基本的に無償対応。万が一、施工作業中の不備で車両にキズや汚れなどがついてしまった場合、ユーザーの費用負担は発生しない。

レクサスNXへの「後付けアクセサリーコンセント」施工作業を見学

今回の取材では「後付けアクセサリーコンセント(AC100V・1500W)」をレクサスNXに施工される場面を見学することができた。トヨタ自動車株式会社の矢野佑一郎氏(元町工場機械部 技術員室 主幹 次世代中古車プロジェクトチーム)が作業内容が説明してくれた様子を動画でご覧頂きたい。

今後の展望として、車種・アイテム・対応エリア(施工受付店)を少しずつ拡大していきたい考えがあるという。最後にトヨタ自動車の利根氏は「KINTO FACTORYというアップグレードサービスで、車両購入後も付加価値を継続的にご提供することで “ 新車は購入後に価値が下がる ”という概念を変えたい」と話した言葉が印象的だった。自動車メーカーが取り組む新たなビジネス領域のサービスとして、今後のさらなる展開に期待したい。

トヨタが、アフターサービス領域に注力…クルマの価値を高め続ける「KINTO FACTORY」

《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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