【フォーミュラE】来シーズンはリヤブレーキのない600kWマシンが登場

【フォーミュラE】来シーズンはリヤブレーキのない600kWマシンが登場
【フォーミュラE】来シーズンはリヤブレーキのない600kWマシンが登場全 8 枚

電気自動車(EV)のF1とも言えるフォーミュラE世界選手権(FE)のシーズン8が終了した。8月14日(日)に韓国・ソウルで行われた最終戦で、メルセデスEQフォーミュラEチームのストフェル・バンドーン(ベルギー)が世界チャンピオンに輝いた。

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◆独特のコースが魅力のFE

初の韓国ラウンドは、土曜日に第15戦、日曜日に第16戦というダブルヘッダー開催となった。FEのレースは、大都市の街中で一般道を一時的に閉鎖して造るストリートサーキットで行われる。今回は、ソウル五輪で使われたオリンピックスタジアム内の陸上トラックに、コースの一部が設けられていたのがユニークだ。

隣接する野球場などの周辺道路を含め、1周約2.6kmのコースを22台のマシンが走行する。合計22か所のコーナーが設けられ、45分+1周で行われる決勝レースでは接触も辞さない激しいバトルが展開される。エンジン音や排気音のないEV独特の雰囲気と、伝統的なモータースポーツの醍醐味の両方を味わえるのもFEの魅力の1つだろう。

◆メルセデスが2年連続のダブルタイトル

最終戦で逆転チャンピオンの可能性を残していたジャガーレーシングのミッチ・エバンス(ニュージーランド)は予選でタイムが出せず、13番手スタートとなった。優勝が絶対条件だったため、実質的にこの段階でタイトルへの望みは消えた。結局、4番グリッドからスタートしたバンドーンが2位、エバンスは7位でゴール。FEのシーズン8は、バンドーンが初の王座に就いて幕を閉じた。

昨シーズンはバンドーンのチームメイト、ニック・デ・フリーズ(オランダ)がタイトルを獲得しており、メルセデスは2年連続のドライバーズチャンピオン獲得となった。また、チームタイトルも2連覇を達成。今シーズン限りで撤退が決まっているチームが有終の美を飾った。

◆さらに世界選手権にふさわしいシリーズへ

来シーズンはメキシコで開幕し、サウジアラビア、インド、ブラジルを転戦する。そのほか、ドイツ、モナコ、インドネシア、イタリア、イギリスや韓国など世界を転戦して18戦が予定されている。現在は3レースの開催地が未定とされているが、今シーズンよりも2レース増えた「シーズン9」で、FEはさらに世界選手権の名にふさわしいシリーズになりそうだ。

◆高性能・高効率の第3世代マシンが登場

来年の開幕戦、メキシコシティでのスターティンググリッドには、「Gen3(第3世代)」と呼ばれる全く新しいマシンが並ぶ。フロントとリアにそれぞれモーターが搭載され、最高出力は合計で600kWと現在の250kWから大幅にアップする。これは、ルマン24時間を含む、「世界耐久選手権(WEC)」シリーズの最高峰、「ハイパーカー」の500kWを大きく上回る。

後輪にメカニカルブレーキは装備されず、回生ブレーキのみとなるのも興味深い。最高速度は320km/hを超えるとされており、さらに見ごたえのあるレース展開が予想される。そのほか、超高速充電システムが使用されるとも言われている。

FEでは、バッテリーの充電残量やオーバーヒートを考えた効率の良いレース戦略が大切なことを紹介してきた。モーター、インバーター、トランスミッションから構成されるパワートレインはチームの独自開発が許されており、そのためのデータ収集や技術開発も盛んに行われている。

Gen3の充電システムも含め、FEで培ったこうした分野における知見は、市販EVの利便性向上にも役立つことが期待される。エキサイティングなだけでなく、モビリティの将来に重要な役割を担っているFEは、まさに次世代のモータースポーツと言えるだろう。

メキシコシティでの開幕戦は、2023年1月14日に行われる。マセラティを筆頭に、新しいチームの参戦も発表されるなど、盛り上がりを見せるEVの世界選手権シリーズ。9シーズン目を迎えて、さらに進化したFEのマシンによるバトルに期待したい。


《石川徹》

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