中国ウーリン、『Air EV』をインドネシアモーターショー2022で世界初公開

GIIAS2022でワールドプレミアされたウーリンAir EV
GIIAS2022でワールドプレミアされたウーリンAir EV全 15 枚

中国の上汽通用五菱は、8月11日、ガイキンドインドネシア国際モーターショー2022(GIIAS 2022)において、インドネシア国内で展開するWuling(ウーリン)ブランドの小型バッテリーEV(BEV)『Air EV』をワールドプレミアした。

◆航続は上級のロングレンジで最大300km以上

ウーリンAir EVの上位グレード「ロングレンジ」ウーリンAir EVの上位グレード「ロングレンジ」

発表会場となったのはGIIAS 2022が開催されているICE(Indonesia Convention Exhibition)のホール6。2015年にインドネシア国内で工場を新設した同社だが、徐々にその存在感は高めており、その勢いを反映するかのようにかつてない広さのスペースでGIIAS 2022に臨んだ。その理由は、中国国内で大ヒットした小型EV『宏光miniEV』のハイグレード版Air EVのワールドプレミアを控えていたからだ。

宏光miniEVと言えば、中国国内のEV市場でテスラを超える大ヒットとなったことで知られる。EVながら街乗りに必要十分なスペックと、庶民にも手が届きやすい価格設定だったことがその理由。なにせベースモデルは当初2万8800元(当時レート:約45万円)だった。一方で一部の上級グレードを除き、エアバッグ等の安全装備は一切搭載せず、こうした割り切りでも通用する中国の販売事情も背景にあったと言えるだろう。

ただ、こうした仕様の宏光miniEVは、一定の安全基準が求められる中国国外では販売できない。この安全基準を満たし、バッテリー容量を大幅に増やして装備も豪華にすることで海外初進出としたのが、今回、GIIAS 2022でワールドプレミアとなったAir EVなのだ。

ワールドプレミアされたAir EVは、スタンダードレンジとロングレンジの2グレードを用意した。両者の最も大きな違いはバッテリーの容量で、スタンダードが17.3kWhであるのに対してロングは26.7kWh。いずれもリン酸鉄リチウム電池を採用する。これは宏光miniEVの大きく上回る容量だ。これにより、スタンダードの航続は200km以上、ロングの方は300km以上とした。一方で電動モーターは30kWで、最高速度は100km/hとしている。

◆価格は 宏光miniEV を大幅に超える215万円から

11月開催の「G20」で活躍することになったAir EV11月開催の「G20」で活躍することになったAir EV

外装デザインは宏光miniEVより明らかに洗練されていて、シティコミューターとしての存在感を高めるのに十分だ。ボディサイズはいずれのグレードも全長2974mm×全幅1505mm×全高1631mmと、宏光miniEVよりも少しサイズアップ。リヤ上部には小型スポイラーを装備し、スポーティな印象を高めている。ボディカラーはホワイト/グリーン/イエローの3色を用意した。一方で、室内スペースは前席はそこそこ余裕を感じるが、後席は大人が2人乗車するのは難しく子供用と考えるべき。これは宏光miniEVと同じだ。

リアバンパーにはパーキングセンサーとカメラが両グレードに装備。イモビライザーや防犯用アラームも標準で装備される。ブレーキについては前輪にディスクブレーキを採用するが、後輪はスタンダードがドラム式、ロングはディスク式となる。また、ABSは両グレード共に装備されるが、ESCはロングだけの装備としている。エアバッグは前席左右に標準装備とした。

内装関連では当然ながら上級グレードのロングに充実した装備が伴う。メーターに使う液晶パネルのサイズはスタンダードが7インチなのに対し、ロングは10.25インチと大型化。ロングには電子ミラーや、キーレスエントリー、リモート式エアコン、電動パーキングブレーキも備わる。また、ロングでは、オンラインによるナビゲーションや音楽、メッセージなども利用できるようだ。

気になる価格は、スタンダードレンジで IDR 2億3800万(約215万円)、ロングレンジで IDR 2億9500万(約266万円)となった。この価格はすでにアナウンスされていたようだが、いざ発表価格が発表されると「あー、やっぱり……」と、ため息混じりの声が会見場で漏れていた。インドネシア政府からはBEV普及の観点から150万円以下の設定を要望されていた経緯もあり、あるいはもう少し安い価格帯が提示されるのではないかとの淡い期待もあったのかもしれない。

◆少ないバッテリー容量でこまめに充電する使い方を提案

バッテリーは水没にも防水構造とし、発火率が低いリン酸鉄リチウム電池を採用するバッテリーは水没にも防水構造とし、発火率が低いリン酸鉄リチウム電池を採用する

とはいえ、ウーリンによれば2022 年 7 月 11 日から8 月 10 日までに、数千人もの消費者が ウーリンのディーラーやWebサイトを介して事前予約したことを発表している。インドネシア国内における2021年の電動車(HEVを含む)はわずか3000台強で、中でもBEVはほとんど数字に出てこないほどの実績しかなかった。それを踏まえると、手応えを感じるに充分だったのかもしれない。

ウーリンのアリフ・プラマダナ副社長は、「インドネシアの人々のニーズに合った製品を提示することがウーリンの主な柱となっており、そのために自信を持って将来の技術設計を備えたコンパクトなサイズのAir EVを開発した。さらにAir EVはインドネシアから世界に向けてBEVを提供する。これはインドネシア政府へのコミットメントを強化することになり、環境に優しい生活を提供することにもつながるための真の証拠となる」と述べた。

価格帯からすればAir EVは、市場こそ違うにせよ、日産『サクラ』や三菱『eKクロスEV』と真っ向からぶつかる。これまでは航続距離を重視するあまり、大容量バッテリーを搭載することがBEVの常識となる向きがあったが、これらの登場により少ないバッテリー容量で小まめに充電するBEVの新たな使い方が生まれたとも言える。特に充電インフラの整備が遅れているインドネシア国情を踏まえれば、BEV普及のきっかけはこんなところから始まるのかもしれない。


《会田肇》

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