ホンダ、「交通事故死者ゼロ」と「カーボンニュートラル」に向けた取り組み…ITS世界会議2022

第28回ITS世界会議ロサンゼルス大会に出展したホンダ
第28回ITS世界会議ロサンゼルス大会に出展したホンダ全 20 枚

ホンダは、9月18~22日に米国ロサンゼルスで開催された「第28回ITS世界会議ロサンゼルス2022」に出展。「交通事故死者ゼロ」に向けた取り組みに加え、「カーボンニュートラル」の実現に向けた取り組みも併せて紹介した。

◆2050年、すべてのホンダ車で「交通事故死者ゼロ」を目指す

ホンダは2022年4月、ホンダが関与する2輪/4輪すべてが関わるすべてのクルマにおいて、「交通事故死者ゼロ」、いわゆる“コリジョンフリー”のモビリティ社会を2050年に実現する目標をを発表した。

この目標で注目すべきは「新車だけではなく現存するホンダ車すべてを対象としている」こと。これだけでも目標のハードルはかなり高いが、「ホンダはさらにこの対象を、クルマに乗っている人だけにとどまらず、道路上にいる人やインフラも含む、すべての社会システム全体を変えることで安全を実現していこうとしている」と本田技術研究所エグゼクティブチーフエンジニアの高石秀明氏(高ははしごだか)は話す。

その実現に向けた大きな考え方が、「より人に寄り添うことに持っていき、共に進化する知能化されたモビリティ社会を作っていく」ことなのだという。

背景には日本の内閣府が掲げる“Society5.0”と、国連が提唱する“Safety System Approach”があるわけだが、そうした考え方にホンダが提唱する“Safety for Everyone”を掛け合わせることで、すべての参加者を通信で結びつけ、これによって互いに共存できる仕組みを作っていく。「これがホンダが目指す“Honda Safety Concept”の基本的な考え方」なのだと高石氏は述べた。

そのロードマップとして、2030年にホンダはまず交通死亡事故を半減させる構想を描く。そのためのブツからないクルマを実現するため、ADAS機能であるHonda SENSINGを“360”へと着々と進化させていく。

その方法とする具体例が、1カメラに加えて4レーダーをクルマの四隅に配置した全方位センシングだ。車両周辺の死角をカバーし、他の車両や歩行者との衝突回避してドライバーの負荷軽減をサポートして事故の発生を未然に防止するのだ。オートレーンチェンジやコーナリングで速度を制御するなど、自動運転レベル3の研究開発で培われた知見やノウハウも活用されるという。

◆「交通事故死者ゼロ」にはヒューマンエラーゼロの実現が欠かせない

そして、そこから先の2050年にはすべての交通参加者を対象に共存という安全を作り出し、交通事故死者ゼロを確実に実行していく。その実現にはヒューマンエラーをゼロにすることが求められ、ホンダはその実現のためにすべての交通参加者を対象にネットワーク技術で結ぶ構想を目指している。

そのトライアルとして示した技術が「人を理解する技術」「運転能力拡張HMI」「歩行者飛び出し抑制システム」「安全・安心ネットワーク技術」の4つだ。

「人を理解する技術」では、運転中の脳活動とリスク行動の因果関係を解析し、真のエラー要因を明らかにすることで、事故を引き起こすヒューマンエラーゼロを目指す。これは将来の自動運転につながる技術とも考えて研究を開始しているという。「運転能力拡張HMI」では、各ドライバーの状態と交通シーンに応じた適切な運転支援を提供する。運転時のヒューマンエラー発生を抑制し、一人ひとりに合わせた安心を提供するのが目的だ。

また、クルマと歩行者がスマホなどを介して協調し、危険を歩行者に伝えて飛び出しを抑制する「歩行者飛び出し抑制システム」や、「安全・安心ネットワーク技術」を活用することで相互での状況把握を進め、交通シーンに応じた適切な情報を提供することで誰もがぶつからない交通社会を目指す。

さらに交通インフラ改善することで交通事故のリスク低減することも安全安心につながる重要な要素だ。その一つが「Honda Drive Data Service」である。これはプローブ情報で得た車両の走行/挙動データ・位置情報を活用し、ブレーキ多発地点など交通環境を分析・評価して事故発生に繋がる危険箇所を特定するというもの。これまでは急ブレーキが中心だったが、新技術ではそのブレーキを細分化してより細かくデータを取れるようにした。

ホンダでは、ここで得られたデータを自治体に提供しており、すでに通学路や住宅街など、より低速域での道路環境においても安全な環境の構築につながる取り組みを進めているところだいう。

また、ADAS用カメラで検出された路面の陥没や道路工事など走路上の危険な状態を、二輪車を含む周辺車両で共有するのが「Road Hazard Condition Monitoring System」だ。該当箇所を通過する前に注意喚起し、交通社会全体の安全性向上を目指すもので、総務省との連携で進めている実証実験でもある。会場ではホンダの大型二輪車「ゴールドウイング」にヘッドアップディスプレイと通信ユニットを組み合わせた試作車を展示し、共有した情報をヘッドアップディスプレイ上に示して警告するデモを展開していた。

◆カーボンニュートラル実現に向けた水素エネルギーの活用を提案

ホンダがもう一つの大きな命題としているのが、「カーボンニュートラル」実現に向けた取り組みだ。ホンダはここで再生可能なエネルギーを利用した電気のサイクルに加え、水素や炭素を使ったエネルギーの循環を描く。その上でいろいろな地域、アプリケーションに対して最適な方法でエネルギーを供給していくことを目指しているという。ホンダはここに電池パックの活用と、GMと共同開発で臨んでいる水素エネルギーの活用を提案した。

電池パックは着脱可能とした「Honda Mobile Power Pack e:」を活用するもので、定格1500Wの電源供給が可能とし様々な製品間での共用できるのがポイントだ。特に電池パックを交換することで連続的に電気を供給できるだけでなく、具体的な用途としてはキャンプなどのアウトドアや業務用途のキッチンカーのほか、災害時のバックアップ電源にも活用できる。また、それを充電できる家庭用バッテリーシステムも用意した。

具体的には、太陽光発電で余った電力を電池パックに貯めておき、朝と夜にシフトすることで電力の低減を図ることができる。また、電動バイクやポータブル電源、家庭用電源として二次利用すれば、結果としてCO2削減に貢献することが可能になるわけだ。

水素エネルギーの活用では「Honda Fuel Cell Systems」として、クリーンなモビリティ、安心なエネルギーを提供する水素エネルギー社会の実現するのが目的。モビリティや発電機など様々な用途への適用を目指し、EVでは賄えないエネルギー密度や出力が高い領域に向けて貢献するのがこのシステムの基本的なビジョンだ。

その具体的な活用方法として提案するのが、コマーシャルトラックやバックアップ電源、さらには海運や宇宙、可搬型電源としての活用も考えているという。会場にはこれに活用されるFCパワーユニットとしてGMと共同開発したプロトタイプを展示していた。


《会田肇》

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