茨城・栃木・群馬の3県からなる北関東地方は、日本の中でも自動車の普及率が高い地域として知られている。自動車検査登録情報協会が発表した、都道府県別の自家用乗用車の普及状況(軽自動車を含む、平成29年3月現在)によると、自家用自動車の一人あたり台数で1位は群馬県、2位は栃木県、3位は茨城県と、表彰台を独占しているような状況だ。
そんな中、この3県でスマートシティの話題が出てくるのは、自動車に過度に依存した社会がさまざまな課題を生んでおり、そこからの脱却を図りたいという想いゆえではないかと想像している。
この連載の1回目で、スマートシティの項目の中にMaaSがあり、スマートシティにMaaSは不可欠だと書いた。MaaSに含まれるのは個人所有の自動車や自転車以外のすべての交通手段であり、マイカーより便利で持続可能な交通手段を安価に提供することで交通渋滞を緩和し、環境負荷を抑えることにも触れた。MaaSがスマートシティの一部である以上、上で書いたことはスマートシティにも当てはまる。そう考えれば、北関東でスマートシティに注目が集まるのは、むしろ当然ではないかと思っている。
今回はその中から、栃木県と群馬県それぞれの県庁所在地である、宇都宮市と前橋市にスポットを当てる。
◆「地域共生型スマートシティ」を目指す
宇都宮市のスマートシティは、頭文字を取って「Uスマート」と呼ばれており、2019年7月に宇都宮市、大学、民間企業で構成する官民連携コンソーシアムの推進協議会が設立された。推進協議会では、ICT等の先進技術を利活用し、社会課題の解決や新たな事業の創出などに官民協働で取り組み、宇都宮市が将来にわたって持続的に発展することができるスマートシティを実現することを目指しているとしている。
多くの地方都市同様、宇都宮市も人口は減少傾向にある。人口のピークは2018年11月1日の52万503人であり、今年9月1日現在では51万5058人となっている。これに対応すべく、宇都宮市が全国に先駆けて2008年から取り組んでいるのが、「ネットワーク型コンパクトシティ」だ。具体的には、市街化調整区域を含めた地域拠点の形成と、これらの拠点を結び、輸送量やサービスに応じてさまざまな交通手段を機能的に配置する、階層性のある公共交通ネットワークの構築に取り組んできた。