変革期にある自動車産業の魅力とは…メーカー役員とジャーナリストによる学生向けセミナー[インタビュー]

変革期にある自動車産業の魅力とは…メーカー役員とジャーナリストによる学生向けセミナー[インタビュー]
変革期にある自動車産業の魅力とは…メーカー役員とジャーナリストによる学生向けセミナー[インタビュー]全 1 枚

自動車業界は100年に一度といわれる大変革期にある。学生の人気も商社や公務員に集まる中、自動車業界への就職はどうなのか? 企業人事やキャリアサイトとは違った視点で考えてみよう。そんなセミナーが開催される。

そのため、就活のための面接テクニックやエントリーシートの書き方の参考にはならないかもしれない。だが、企業説明会や就活サイト、サロンでは語られない現場の情報が得られるはずだ。

時代の要請が商用車業界を熱くする

【学生向けオンラインセミナー】自動車業界で働くってどういうこと?~業界の外と内~(10月31日・11月25日)では、三菱ふそうトラック・バス株式会社 副社長 兼 開発本部本部長 安藤寛信氏とジャーナリスト 中尾真二氏が、それぞれの立場でいまの自動車業界を俯瞰する。セミナーに先立ち、発表者2名に話を聞いた。

自動車業界のトレンドセミナーなのに、なぜ乗用車メーカーではなくトラックやバスなどの商用車メーカーなのか。その疑問はもっともだ。だが、CASE革命においてじつは重要なプレイヤーを演じるのは商用車である。

「要因は複数あるが、まずアマゾンに代表されるEC需要の増大がひとつ。コロナ禍以前でもその傾向は確認されたが、2020年のパンデミックによる巣ごもり需要によって、EC、ラストマイル輸送市場をさらに押し上げた。パンデミック後もこの傾向は続いている。国内では物流倉庫の需要が高まり、郊外の高速道路インター周辺は倉庫建設ラッシュが起きている。またドライバー不足やカーボンニュートラルへの対応で、今以上に効率化が求められている。課題の多さが新市場や新技術を呼び込む力になっている。(中尾氏)」

CASEが自動車を再定義する

物流業界は課題山積といえるのだが、その課題解決に「CASE」が注目されている。CASEとはダイムラーグループが2016年に提唱した次世代車両の重要要素技術を指す。自動車産業の新しい4つの成長分野をコネクテッド(C)、自動運転(A)、シェアリングエコノミー(S)、電動化(E)と定義し、その頭文字をつなげた用語だ。

CASEは単に、カーナビに通信機能を追加したり、EVやFCVを開発したり、自動運転機能を組み込んだりすることではない。これらの技術を活用することで、自動車に移動ツールや趣味の対象以外の付加価値を与えること、ビジネスモデルやサプライチェーンを変革することも含まれる。

たとえば、自動車のリース販売やサブスクリプションが広がれば、車両を個人所有する意味が変わってくる可能性がある。レンタカーやリース、サブスクリプションの車両はメーカー視点では販売先が法人であるという点で商用車とみなすことができる。極端な見方をするなら、メーカーおよびディーラーの戦略が変わってくる。コネクテッドカーは車をIoTデバイスとしても機能させるので、移動や趣味・レジャーのツールだけでなく、メディア、コミュニケーション、マーケティングのツールにもなる。

課題が多いからこそ、ビジネスチャンスも多い。

求められる人材は柔軟性と幅広い視野

100年に一度の変革期に、メーカーはどのような人材を求めているのだろうか。三菱ふそう安藤氏は次のように語る。

「自動車やエンジンに関する知識はある程度必要だが、変革期においてそれは最重要事項ではない。自動運転やコネクテッドカーなどの技術的な変革だけでなく、カーボンニュートラルのような外部変数も考えなければならない。ビジネスの形態が変わろうとしているので、それに対応する柔軟性や想像力と広い視野を持っていることが、今後の業界で必要となるスキルと思っている。(安藤氏)」

CASE革命で、自動車はスマートフォン化するとも言われている。これは電話がスマートフォンになったとき、通話以外の機能やエコシステムを構築したように、自動車を製造業ビジネスからモビリティビジネスに拡張する。したがって、これからの自動車業界は、仮に開発部門だとしても文系・理系や性別も本質的な問題にはならない。それよりも新しい視点、提案をいっしょに考えられることが重要だという。

柔軟性や広い視野は、これまでも重要な要素だった。だが、CASE革命やモビリティ革命、環境・エネルギー問題への対応は、高性能なハードウェア(新型車)を市場に提供するだけでは不十分と言われている。ソフトウェアやサービスSDGsといった領域での付加価値の提供が求められている。必要なのはリベラルアーツに代表される現代人にとって必要な教養である。

必要なのはロジカルシンキング

自動車メーカーでは、ソフトウェアの内製化の動きが進んでいる。そのためソフトウェアエンジニアが不足している。いまは、設計・開発の段階でコネクテッドや自動運転(安全運転支援)、電動化などソフトウェア、エレクトロニクス、半導体の技術が欠かせない。しかし自動車業界は長年エレクトロニクスやソフトウェアはサプライヤーから調達する部品と同じ扱いで、外部委託や購買することで済ませていた。

今後はソフトウェアが自動車の機能や付加価値を決める要素として、外注まかせにはできなくなってくる。ソフトウェアの内製化によって、一般的には理系人材が求められるところだが、「必要なのはロジカルシンキング」(安藤氏)だという。

そもそも理系・文系にこだわるのは日本の特徴でもある。グローバル企業では、リスキリングや学びなおしは珍しいことではなく、高等教育を受けており一定のリテラシーやスキルがあれば、キャリアはどの方向にも開放されている。三菱ふそうはドイツのダイムラーグループ(現ダイムラー・トラック)としての歴史も長く、国内で最初に小型EVトラックを量産・市販を行った会社だ。グローバル文化が根付いており、チャンスは平等だ。

たとえば、同社にはグーグルの20%ルールに通ずる教育プログラムがある。新卒採用の最初の1年は、通常の導入教育のほか、チームを作ってプロジェクトを動かす訓練も行う。任意のテーマでプロジェクトを計画し実際に動かす。それを役員会で発表する。だが、テーマは業務との関連は不問だ。プロジェクトマネジメントやプレゼン能力を高めることが狙いだからだ。

セミナーでは、ジャーナリスト視点での自動車業界全体の現状と、グローバルな商用車メーカーの取り組みなどが紹介され、質疑応答の時間も設けられている。業界動向と今後の展望を知る貴重な機会となるだろう。

学生向けセミナーのお申込はこちらから。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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