日本にはないインドの超実践的な「産学連携」活用のススメ…日本企業が使う意味

日本にはないインドの超実践的な「産学連携」活用のススメ…日本企業が使う意味
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あらゆる可能性を秘めた今のインド。巨大な人口を抱える国であり、中でも若年者人口が多いことがこの国の成長力を支える源でもある。高等教育を受けられる者は比率でみればわずかだが、英語ネイティブで数字と論理思考に強く、CAD/CAMやいくつかのプログラミング言語を使いこなすエンジニア人材はその所在を問わず世界的に活躍できる素養がある。故にグローバル開発センターをインドに設ける欧米企業も少なくない。

「今のインド」モビリティの実態でモデレーターを務めるベンガルール在住のコンサルタントの筆者(大和合同会社 代表 大和倫之)が、セミナー開催前にゲストに聞いた話の一部を紹介する。このセミナーは、インドの今を伝えるセミナーシリーズの第二回目。ゲストには在ベンガルール私立 基督大学 工学・技術学部 学部長・教授 Dr.Iven Joseを迎える。これからの産業界のニーズに応えるべく、10年以上に渡って同校の学生のみならずキャンパス全体を導いている。日本にはない超実践的な「産学連携」の取り組みを事例を交えて聞く予定だ。

基督大学 工学・技術学部 (School of Engineering & Technology, CHRIST (Deemed to be University))について

1969年にChrist Collegeとして設立された在ベンガルールの私立総合大学。インド国内の私立大学ランキングでは2018年1位を獲得し、以降も3位以内を保持している。関連する行政規制等の歴史的な経緯により現在はCHIRST (Deemed to be University) を正式名称とするが、現在でも旧称のCHIST Universityは広く認知され、国際的にも総合大学として認識されている。人文科学系やMBA学部を有するベンガルール都心のメイン・キャンパスを含め市内4キャンパス、北インド・デリーと西インド・プネにもそれぞれ校舎を有する。
工学・技術学部は郊外の新興エリアに緑の豊かなゆったりとしたキャンパスを構える。トヨタを中心とした日系事業者が集積する工業団地に至る街道沿いの10分ほど手前に位置する。
筆者とは、経済産業省主催のアイディアソン実施に際した協力、海外技術インターンシップ・プログラム提供、定期的な講義やイベントでのゲストスピーチ機会等を通じた交流がある。

インドにおける「産学連携」 (Industrial – Academia Collaboration) にはどのような特徴があるか?

まず背景として、インドの一般的な就職事情を理解しておきたい。日本のような新卒一括採用を経て、新入社員研修を受けた上で配属される、といった環境はなく、むしろ一般的な企業は事業展開や離職状況に応じて求める「業務」に対し、それを遂行できるスキルがあるか否かが第一の判断基準となる。従って、学生の間においても具体的な経験やスキルを積むことが求められており、工科大学で機械・電気・コンピュータといった一定の専門技術を身に着けた上でMBAを学んで就職市場における競争力をつけようとする学生も少なくない。
逆に、基督大学を始めとした私立有力校や国立大学など、特に優秀な学生がいる大学には企業側が採用活動(キャンパス・リクルーティング)を申し入れる。採用実績や提示条件等に基づいて学校側が希望企業に優先順位をつけ、高い企業から学生との面談の機会が与えられる。企業はその場で、少なくそも数日内に内定を出す為、このキャンパス・リクルーティングを早く行う機会を得られた企業ほど、優秀な学生を採用し易い、というのが一般的な考え方。例えば特定のITスキルなどに秀でる学生に対しては企業側もそれを想定して年俸数千万円相当などの破格の条件を提示してニュースとなることもある。
左様に新卒学生の就職も「完全実力主義」が前提となるが、他方で、産業界の求めるスキルと大学生活を通じて学生が身に着けるスキルとの間のギャップが指摘されて久しい。つまるところ卒業生の採用・就職実績の悪い学校には学生が集まらず学校経営を危うくするため、幹部はいかにこのギャップを埋めて就職率を高めるかに執心することになる。そこで求められるのが「産学連携」のコンセプトとなる。すなわち、在学中に学生に企業に採用したいと思わせるだけのスキルを身につけさせて、卒業と同時に即戦力として採用してもらえれば、企業にとっても学校にとっても学生にとっても嬉しい、「一挙三得」な企画となる。もちろん、大学が提供するシラバスやカリキュラムは監督機関による厳しい審査・監査の対象となる為、単なる職業訓練校のような内容では認められないが、社会の実態を踏まえて近年、かなり自由なやり方も認められるようになってきている。

特に日本企業にとって、超実践的「産学連携」を使う意味はどのあたりにあるか?

まず端的に、一定の事業コンセプトや技術に対する実証実験を「産学連携」のプログラムとして行うことが考えられる。インドに事業基盤があるか否かを問わず、使い易い建付けではないか。
また、「優秀なインド人材」に関心はあっても、採用するにはどの組織でどのような条件で誰がどのように面倒みるのか等々、考えるべきことはあれども実態が分からず前に進めない、という企業は一定数あるものと認識している。近年はビザ条件等も含めて様々な形態でサービスを提供する人材系企業も登場しているが、つまるところ「採用」となると目の前の一人と向き合うことが求められる。何も知らない、分からない段階から、数回の面談でいきなり「異国の誰か」を採用するのは無理があると感じている。
加えて、インドに関心はあり何度も出張を重ねているが、結局、何からどうインドと付き合い始めるべきか分からない、という企業にとっては、インド進出の足掛かりとして「産学連携」プログラムを使うことが考えられる。調査会社を起用しようにも何を調査すべきか定まらない、代理店を選定しようにも現地の市場環境・商慣習が分からない、現地法人を登記しようにも活動が定まらなければ投資承認もおりない、という企業は少なくない。
やり方次第でいくつでも活用可能性は広がるが、最終的には、いかに学校・学生にメリットのあるプログラムにできるかに尽きる。まずは自社がやりたいこと・できることを書き出して相談してみるのも手だ。

【オンラインセミナー】「今のインド」モビリティの実態・セミナーシリーズ~第2回 スズキも積極活用する超実践的「産学連携」~は11月4日開催。詳細はこちら

《大和 倫之》

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