「SUVでもロータスに見える」デザインの秘密…初の電動SUV『エレトレ』をデザイナーが語る

ロータス・エレトレのデザインスケッチ
ロータス・エレトレのデザインスケッチ全 26 枚

10月25日、ロータス初の電動SUVとなる『エレトレ』が正式発表された。スポーツカー・メーカーとして培ってきたロータスのデザインDNAは、SUVのエレトレにどう受け継がれているのか? デザインを統括するピーター・ホルバリーが発表イベントで語った内容をお伝えしよう。

原点はロータス30

ロータスのデザインを統括するピーター・ホルバリー氏(動画スクリーンショット)ロータスのデザインを統括するピーター・ホルバリー氏(動画スクリーンショット)

「ロータスの各車のフロントにはロータスのバッジがある。しかし率直なところ、それは必要ない。バッジがなくても、それがロータスだとわかるはずだからね」とホルバリー。「それが、我々がロータスDNAと呼ぶものだ」

92年から長らくボルボのデザインを率いたホルバリーは、米国フォードでの要職を経て、中国ジーリー(吉利汽車)グループのデザイン責任者に就任。ジーリーがロータスを買収した後、ジーリーでの職責を後任に譲ってグループ・ロータスのデザイン担当副社長に転身した。イギリス人である彼にとって、ロータスはそれほど思い入れのあるブランドなのだ。

ロータスに来て電動ハイパーカーのエヴァイア、同社最後のエンジン車であるエミーラ、そして今回のエレトレのデザインを指揮してきたホルバリー。彼が考えるロータス・デザインのルーツは、60年代半ばにレースで活躍したロータス30だという。

ロータスの変遷(動画スクリーンショット)ロータスの変遷(動画スクリーンショット)

「ロータス30はきわめてドラマティックなデザインだった。前後のフェンダーが大きく盛り上がり、コクピットはその間に沈み込んでいる。このフォルム言語が力強く、ナチュラルで、スポーティなルックスを生み出していた」

「それがスタートだった。過去30年余り、我々はロータス30のフォルム言語を使ってきたと思う。ただしレトロはやらない。過去を再現するのではなく、過去を想起させるデザインをやってきた。振り返るルーツがあるとしても、新しいロータスは(いつでも)とてもモダンで、とても新しい」

過去30年はちょっと言い過ぎかもしれないが、ロータスのターニングポイントになった96年の初代エリーゼには、なるほどロータス30の面影が色濃く宿る。そしてそのイメージが、『エヴァイア』や『エミーラ』にも受け継がれていることは明らかだ。

DNAの表現はひとつではない

ロータスの変遷(動画スクリーンショット)ロータスの変遷(動画スクリーンショット)

「ロータス30、エミーラ、エレトレには似たところがある」とホルバリー。大事にしたのはサイドビューだ。

「低いフロントから前輪の上へ盛り上がり、それがキャビン部分で沈み込んだ後、後輪の上へと再び盛り上がる。年配の方はおそらくロータス30を覚えているだろうから、そのデザインが(エミーラやエレトレに)どう進化してきたかに気付くはずだ。若い世代はそこにロータスのDNAを築いてきた力強いヘリテージがあることを認識してくれるだろう」

エレトレはSUVだから、ロータス30やエミーラほど前後フェンダーが盛り上げっているわけではない。実際、フロントフェンダーの稜線は、水平にベルトラインへと延びる。が、それをリアドアで跳ね上げることで、「キャビン部分で沈み込む」というイメージを醸し出している。これはエミーラでも使った手法だ。

「大事なのは、我々はひとつのデザインにこだわっていないことだ。家族や兄弟というのは、双子や三つ子や四つ子ばかりではない。同じ見かけのサイズ違いでもない。ファミリーを構成するメンバーはそれぞれ個性を持っているが、彼らを見れば、その親が誰かを言い当てることができる。私にとってはそれで充分だ」

ミッドエンジン・ルック

ロータス・エレトレロータス・エレトレ

ホルバリーは「エレトレは電気自動車だ。そのことが、よりロータスらしいデザインをやるチャンスを我々に与えてくれた」と語り、こう続けた。

「フロントに大きなエンジンがないのでウインドシールドを前輪のところまで前進させ、エリーゼやエミーラと同じようなミッドエンジン・ルックを再現することができたのだ。SUVでこれをやるのは、電気自動車でなければ不可能だ」

「電動化という革新がデザインの革新につながった。スペースの点でも同じだ。エレトレは5人分のシートを備え、その荷物を積むスペースも用意している」

ロータス・エレトレのデザインスケッチロータス・エレトレのデザインスケッチ

ミッドエンジン・ルックでありながら、リヤにもエンジンがないことを活かして乗員と荷物の充分なスペースを確保することができた。そして話題は空力へと進む。

「フロントの両サイドのエアインテーク、前輪の後ろのエアアウトレット、リヤのエアアウトレットは風圧の上昇を防いでいる。空力的なフォルムと気流を排出するスリットのコンビネーションで、航続距離を延ばすことができた」

期待を超えるデザインを

「ロータスの将来は素晴らしいものだよ。次のクルマのデザインはすでに終え、今はその次をデザインしている。どちらにもロータスのDNAを使っているが、エレトレと同じ方法ではない。我々は進化し続けているのだ」とホルバリー。

「それを皆さんが見るとき、『なぜかはわからないけど、ロータスだね』と言われたい。もちろん私は『なぜか』を知っているが、それで充分だ」

ロータス・エレトレロータス・エレトレ

そしてホルバリーは発表イベントでのコメントをこう締めくくった。

「ロータスのようなブランドに責任を持つというのは、王冠の世話をするようなもの。しばらくは自分の手元にある。注意深く手に取らなくてはいけない。そしてそれを次の人に注意深く手渡す。これは大きな責任だ。誰もが我々が次に何をするかに注目している。自信を持って言おう。皆さんの期待を超えるものを届けますよ」

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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