カーボンニュートラル実現に向けた日本の水素技術と戦略…マッキンゼー 住川武人氏[インタビュー]

マッキンゼー・アンド・カンパニー シニアパートナー マッキンゼー・センター・フォー・フューチャーモビリティ、アジア代表の住川武人氏
マッキンゼー・アンド・カンパニー シニアパートナー マッキンゼー・センター・フォー・フューチャーモビリティ、アジア代表の住川武人氏全 4 枚

マッキンゼー・アンド・カンパニーが2012年以来、世界各地で開催しているグローバル・インフラストラクチャ・イニシアティブ(GII)・サミットが、10月19日から21日にかけて、初めて東京で開催された。

GIIは、持続可能でインクルーシブな成長に向けたインフラ構築のためにステークホルダーをつなぎ、イノベーションを促進し、変化を起こしていくことをミッションとしている。具体的にはカーボンニュートラルに向けた脱炭素化の加速、建設業の生産性向上とデジタル化、ESG視点を踏まえたインフラ投資の再検討、優れたリーダーと人材の育成という4分野で議論を進めている。

参加者は世界中から東京に集まった企業幹部なので、日本開催のこの種の集まりとしては異例に外国人の比率が高い。しかもプログラムは終始英語。グローバルで行われているサミットが、たまたま今年日本で開かれたという経緯を教えられる。

会場のレイアウトも一般的なセミナーやフォーラムとは異なり、ラウンドテーブルを囲み、和やかな雰囲気。登壇者は国務大臣や大企業CEOなど、錚々たる面々なのだが、壇上でパネルディスカッションを行いつつ、会場と頻繁に意見交換を行っており、日本流のセミナーとの違いを感じさせた。世界のエグゼクティブはこのような場を数多く体験しているから、スピーディに時代を動かしていけるのかもしれないと痛感した。

グローバル・インフラストラクチャ・イニシアティブ(GII)・サミット

EVに対する水素の有益性は

ではこの舞台を運営するマッキンゼーは、これからの時代をどう考えているのだろうか。ここでは自動車・テクノロジー・通信・交通運輸業界等を担当する、マッキンゼー・アンド・カンパニーのシニアパートナーであり、モビリティの未来を研究するマッキンゼー・センター・フォー・フューチャーモビリティのアジア代表も務める住川武人氏に、カーボンニュートラルへの貢献における日本の水素技術が最大限活かされることへの期待や日本の戦略について聞いた。

---:世界的なカーボンニュートラルの流れの中で、日本はどのようなエネルギーミックスが理想でしょうか。

住川武人シニアパートナー(以下敬称略)::原子力をどう考えるかという難しい問題はありますが、ひとまずそれを除外すると、可能な限り風力と太陽光を使い、残りを水素で補完することになるでしょう。目標では約9%が水素やアンモニアによるネットゼロの火力発電となっています。日本で特筆すべきは、石油や天然ガスがほとんど採掘できず、国土が狭いので太陽光も難しく、人口が多いので電力需要がひっ迫気味という日本で、省エネ技術が発達したことです。この技術も活かし、水素発電で先行することもあり得るでしょう。

---:カーボンニュートラルな社会をつくるうえで、やはり水素は不可欠なピースなのでしょうか。

住川:カーボンニュートラルは発電、工場、モビリティなど、セグメントごとに異なるアプローチが必要です。それぞれが排出源を持ち、それぞれに減らす手段があるからです。私たちは減らすのが難しい領域こそ、水素が適していると思っています。

---:自動車メーカーはカーボンニュートラルというとEV(電気自動車)を持ち出すところが多くなっていますが、水素の出番はあるのでしょうか。

住川:乗用車はEVのほうが経済的になるでしょう。バッテリー価格が下がったことが大きな要因です。テスラは黒字化しているし、BYDも伸びてきました。水素は大きなクルマに適しています。EVは満充電にするには急速でも1時間近くかかるのに対して、水素は3分でフル充填でき、1000km走れます。なので長距離を走る大型トラック、長時間稼働を必要とする掘削機などと相性がいいと考えています。

---:燃料電池以外に、水素そのものを燃焼に使う水素エンジンもありますが、モビリティにおいてはどちらが良いでしょうか。


《森口将之》

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