雨の日の自転車「カッパは傘より本当に安全?」意外な実験結果に【岩貞るみこの人道車医】

雨の日の自転車、カッパは傘より本当に安全なのか?意外な実験結果が明らかに(写真はイメージ)
雨の日の自転車、カッパは傘より本当に安全なのか?意外な実験結果が明らかに(写真はイメージ)全 1 枚

夕方、あっという間に暗くなるこの時期、運転していると、特にヒヤリとさせられるのは、自転車の動きだ。しかも雨など降っていたら最悪である。

ITARDA(交通事故総合分析センター)の2011年~2019年の数字を見ると、一番多い事故形態はクルマと自転車の出会い頭によるもので。この間の死傷者数は49万5197人。

ただ、この場合の致死率は0.4%であり、出会い頭事故の場合は軽傷が多いことがわかる。では、致死率の高い事故形態はなにかというと、追突事故だ。自転車の後方からクルマが追突するもので、件数こそ少ないものの致死率は5.35%と、ダントツの高さである(ほかのものは、すべて1%に満たない)。

夜はもっと目立つよう道路工事の人が見につけるような反射材付きジャケットを着てほしいとか、片手運転はやめてほしいなど自転車に対して思うことは多々あるが、そんな折、ちょっとびっくりするような実験の結果を見つけてしまった。

タイトルは「レインコートの着用が自転車運転時における確認行動に及ぼす影響」。現在、東北公益文科大学の学長である神田直弥氏が、2017年に発表したものである。

◆雨の日の自転車「カッパは傘より本当に安全なのか?」

現在、道路交通法では自転車は傘の使用が禁じられている。片手運転になってハンドルやブレーキ操作ができなくなるし、傘が風にあおられて不安定になるといったことが理由だ。もちろん、前方に傘をかかげて視界が悪くなることも挙げられる。それゆえ、雨天時は、雨ガッパを着ることになるのだが、今回の実験は「カッパは傘より本当に安全なのか?」という神田氏のシンプルな疑問からきている。

これだけ傘の弱点があるのだから、傘がダメだというのは明らかだ。雨ガッパのほうが安全だよねと、私も盲目的に信じていたけれど、どうやら、そんなに簡単な話ではいようだ。実験の結果によると、後方視界の確認は、傘よりカッパの方が悪くなるのである。

後方確認。自転車がどういうときに後方確認をするかといえば、車道走行中に駐車車両を追い抜くときや、歩道から車道へ出るときなどだ(子どもや高齢者以外は車道走行が基本だが、交通量の多い道では歩道走行が許されている)。つまり、後方確認がおろそかになれば、クルマの追突事故に遭う確率も高くなるということである。

実験は、以下の条件の比較で行われた。

(1)雨具なし
(2)傘を手持ち
(3)雨ガッパ(フード付き)着用
(4)ヘルメット着用

実験参加者は大学生で、後方に置かれている確認対象物への確認時間を見ていくものである。結果、(1)雨具なし が、一番すばやく確認でき、次いで、(2)傘、(4)ヘルメット、(3)雨ガッパという結果だった。なんと、雨ガッパは最下位なのである。

フードつきの雨ガッパは首をまわして振り返っても、フードの中で顔だけまわり、フードが視界を遮って後方確認がしにくいという事実が明らかになったのである。

◆見えないなら振り返っても仕方ない、という心理

では、どうせ振り返っても後方がよく見えないのなら、振り返っても仕方ないじゃんとなり、後方確認自体をしなくなる傾向があるのではないかという疑問も出てくる。ゆえに、こちらの実験も行われている。それぞれフード部分に違いがあり、以下の通りである。

(1)フードなし
(2)フードの周りに入っている紐をきゅっとひっぱって顔に密着させる
(3)紐をつかわず、フードをただ頭にかぶせる
(4)フード前方に透明なビニールがあしらわれ視界を確保するタイプ

同じコースを走らせたときの確認回数(頻度)は、(1)フードなし、(2)フードを顔に密着、(3)フードをかぶっただけ、(4)透明ビニールつきフードの順だった。

やはり、フードがなかったり、顔まわりに密着しているほうが「確認しやすい」らしく、後方確認頻度が高い。一方、ただかぶっているだけのタイプは、振り返っても見えないらしく、振り返らないあきらめ状態になっている。また、透明ビニールの後方確認頻度が意外と低かったのだが、これは、「透明だけど見えない」からではなかろうか。いくら透明であっても、雨滴がついたら視界は悪くなるだろうし。

今回の実験は、あくまでもひとつの条件下で行われたものだが、それでも「雨の日、雨ガッパを着用しているチャリダーは後方確認しづらいし、したがらない」という気持ちが伝わってくる。雨ガッパ着用の自転車は、後方確認をおろそかにしがち。その事実を知ることで、特に雨の日は、自転車を追い越すときに注意していきたいと思う。みなさんも、ぜひ。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「ハチ公物語」「しっぽをなくしたイルカ」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ようやくですか! 新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』日本仕様初公開へ…土曜ニュースランキング
  2. トヨタ『ランドクルーザー300』初のハイブリッド登場!実現した「新時代のオフロード性能」とは
  3. 【マツダ CX-60 XD SP 新型試乗】やっぱり素のディーゼルが一番…中村孝仁
  4. セリカに次ぐ「リフトバック」採用のカローラは、50年経ってもスタイリッシュ【懐かしのカーカタログ】
  5. シートに座ると自動で送風開始、取り付け簡単「クールカーシート」2モデルが発売
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
  2. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
ランキングをもっと見る