北海道新幹線延伸、2030年度末開業に「黄信号」か?…追加事業費6000億円超、重い資材価格高騰

10月13日に貫通した長万部町内の国縫トンネル。これで北海道新幹線札幌延伸工事では全17本のうち5本のトンネルが掘削を完了した。
10月13日に貫通した長万部町内の国縫トンネル。これで北海道新幹線札幌延伸工事では全17本のうち5本のトンネルが掘削を完了した。全 4 枚

国土交通省は12月7日、北海道新幹線札幌延伸に関する4回目の有識者会議の内容を公表した。

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2012年6月に始まった北海道新幹線新函館北斗~札幌間の延伸工事は、当初、2035年度の完成を目指し、総事業費約1兆6700億円が見込まれていた。

その後の2015年1月には政府・与党の申合せにより、開業時期を2030年度末を目指すこととされたが、着工から10年が経過した2022年9月には、2021年に行なわれた北陸新幹線敦賀延伸工事の事業費見直しを受け、「予期せぬ自然条件への対応」「着工後に生じた関係法令改正等への対応」「着工後の関係者との協議等への対応」「着工後の経済情勢の変化への対応」が生じたとして、事業費を精査する最初の有識者会議が開催された。

12月2日に開かれた4回目となる今回の会議では、現時点で見通せる範囲で一定の仮定をおいて試算したという事業費の追加額が約6450億円となる見込みであることが明らかにされているが、このうちトンネル掘削にまつわる発生土や重金属など有害物質の処理に対応する「予期せぬ自然条件への対応」と、資材価格の高騰や消費税の引上げなどを受けた「着工後の経済情勢の変化への対応」が追加額の半分以上を占める約4750億円に上っている。

発生土を工事用の道路整備や他の事業に活用することや、トンネル工事による湧水を清濁分離処理して濁水処理量を低減することなどを含む、約310億円の削減額も試算されているものの、焼け石に水という状況だ。

現状では、トンネル工事における発生土の受入れ難や地表部の陥没、予期せぬ堅固な岩盤との遭遇などにより、一部の工区が計画より3~4年工事が遅れていることもあり、2030年度末の開業は「非常に厳しい状況」としており、工期短縮を図るべく、トンネル掘削を1方向ではなく2方向同時に行なうなど工程を工夫。合わせて建設主体となる独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)に対しては、事業費や工程の適正な管理を求めており、「国土交通省鉄道局、北海道等の関係自治体、JR北海道等の関係者がそれぞれ重要な役割を担う当事者であるとの共通認識を持って一丸となって取り組むことが必要」と結んでいる。

巨額の追加事業費をどのように穴埋めするのかは気になるところだが、整備新幹線のスキームでは、JRへの貸付料や沿線自治体の負担金なども建設財源に充てられることから、これらへ一部が転嫁されることが考えられる。

仮に、開業時期が数年伸びることになれば、廃止が事実上決定している並行在来線の長万部~小樽間や鉄道貨物の問題で揺れている函館~長万部間、新幹線札幌駅周辺の再開発事業などに影響を与えることも考えられ、今後、大きな波紋を呼びそうだ。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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